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弁護士コラム

遺言書の貸金庫開扉権限~記載方法と注意点をわかりやすく解説~

家族信託・遺言書作成
投稿日:2025年05月07日 | 
最終更新日:2025年05月07日

Q
88歳の父親の認知機能が低下してきており、将来の相続に備えて準備を始めたいと考えています。特に、父名義の貸金庫の開扉手続きが複雑そうで不安を感じています。父の判断能力が低下する前に、貸金庫の管理について適切な対策を取りたいと考えています。

父親の相続発生後の貸金庫の開扉方法、遺言書への貸金庫関連の記載方法、遺言執行者の権限と制限について具体的に知りたいです。また、金融機関での手続きをスムーズに進めるために、遺言書にどのような記載が必要なのかも詳しく知りたいです。
Answer
貸金庫の名義人が亡くなると、金融機関は相続手続きが完了するまで貸金庫の開扉を制限します。

被相続人名義の貸金庫の開扉には、原則として相続人全員の立ち合いを求められます。遺言書があり、貸金庫の開扉権限を有する遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が単独で貸金庫を開扉することができます。

この記事では、被相続人名義の貸金庫の開扉方法について、遺言書がある場合、ない場合のそれぞれの状況について詳しく解説します。また、遺言書への貸金庫関連の記載方法、遺言執行者の指定方法についても詳しく解説します。

貸金庫の名義人が亡くなると、金融機関は貸金庫の開扉を制限します。

貸金庫に「遺言書が入っている」「内容物を知りたい」と思ってもすぐには確認できません。金融機関所定の手続きと、相続人全員の立ち合いが必要になります。しかし、適切な遺言書があれば、相続人全員の立ち合いがなくても貸金庫の開扉が可能になります。

この記事では、適切な遺言書を作成し、金融機関でのスムーズな相続手続きの方法について紹介します。

遺言書における貸金庫開扉権限の重要性

貸金庫の名義人が亡くなると、金融機関は相続手続きが完了するまで貸金庫の開扉を制限します
相続人が貸金庫を開けるためには、金融機関所定の手続き(戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の同意など)が必要になります。

しかし、遺言書があり、貸金庫の開扉権限を付与された遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者は相続人の同意を得ずに貸金庫の開扉手続きを進めることができます。

特に遺産の分配に関して争いが予想される場合には、遺言執行者が中立的な立場で対応することで、トラブルを回避しやすくなります。

【遺言書の有無による貸金庫の開扉手続きの違い】

項目遺言書なし遺言書あり
執行者の開扉権限の記載あり
開扉に必要な同意相続人全員の同意が必要遺言執行者単独で可能
手続きの所要時間相続人全員の予定調整が必要で長期化遺言執行者の都合のみで迅速に対応可能
開扉立会いの必要性原則として相続人全員の立会いが必要遺言執行者のみの立会いで可能
内容物の持ち出し金融機関により、確認のみで持ち出し不可の場合あり遺言執行者による持ち出しが可能
トラブルリスク相続人間の意見の相違により開扉が滞る可能性大遺言執行者の権限が明確で紛争リスクが低い
相続人の負担・同意書の取得
・日程調整
・立会いの時間確保が必要
各種手続きの負担なし
金融機関の対応慎重な確認と手続きにより時間を要する遺言書の記載が明確であれば円滑に対応

貸金庫開扉の基本ルール

相続発生後に貸金庫を開扉する際、金融機関では通常、相続人全員の立ち合いを求めます。もし、金融機関が相続人の一部の依頼で貸金庫を開け、その後他の相続人からクレームが入った場合、金融機関は責任を問われる可能性があります。
そのため、金融機関はトラブル回避のために相続人の立ち合い」及び「全員の同意書の提出」を求めます。(金融機関によっては、いずれか一方で足る場合もあります。)

遠方に住んでいる、または仕事などの都合でどうしても立ち会えない相続人がいる場合、以下の方法で対応できます。

  • 立ち会えない相続人が委任状を作成し、代理人(他の相続人または弁護士等)を指定します。指定された代理人が代わりに立ち会います。ただし、その場合でも相続人全員の同意書が必要です。

金融機関によっては、相続人全員の同意を得るための専用の書類を用意しています。金融機関の窓口や公式ウェブサイトで取得し、必要事項を記入します。

なお、貸金庫の名義人である被相続人が貸金庫を開けるための代理人を定めている場合もあります。しかし、この代理人の権限は、貸金庫の名義人の死亡により消滅します(民法第653条)。そのため、この代理人は貸金庫の名義人の死亡により貸金庫を開けることができなくなります。

遺言執行者の権限と限界

遺言執行者の法的権限と実務上の制限については以下のとおりです。

【遺言執行者の権限範囲と制限事項】

区分権限の内容制限事項・留意点
法定権限
(民法第1012条に基づく)
・相続財産の管理
・遺言の執行に必要な行為
・相続財産の保存行為
・相続財産の処分権
・遺言の内容に拘束される
・権限を逸脱した行為は無効
貸金庫に関する権限法的に以下の権限の有無について争いがある(
・開扉請求権
・内容物の確認権
・解約権
実際は遺言の内容や金融機関によって対応が異なる
・金融機関の内規による制限
・貸金庫契約上の制限
・内容物が不明な場合の制限
金融機関取引に関する権限・預貯金の払戻し
・名義変更手続き
・解約手続き
・金融機関ごとの取扱いの違い
・追加書類の要求の可能性
・手続き方法の制限
全財産を包括遺贈する内容の遺言があり、預金通帳や印鑑が銀行の貸金庫に入っている事例で、遺言執行者による貸金庫の開閉権を認めた裁判例があります(神戸地決平成11年6月9日)。ただし、この裁判例でも特定物を対象とする遺言について言及はありません。なお、銀行の貸金庫契約における利用者の権利を貸金庫の「内容物の引渡を求める権利」があるとする判例(最判平成11年11月29日)を理由に、特定物を対象とする遺言の遺言執行者も貸金庫の開閉権があるとする考えもあります。

遺言執行者が指定されていても、遺言で遺言執行者の貸金庫開扉権限が記載されていない場合には、金融機関が貸金庫の開扉に応じないケースがあります。

まず、遺言者としては、相続人や遺言執行者が困らないよう、しっかりと貸金庫の開扉・解約及び内容物の受取に関する権限を記載するようにしましょう。

では、相続開始後、遺言にこれらの権限の記載がない場合はどのような対応が可能でしょうか。金融機関が貸金庫の開扉に応じないケースとそのケースにおいて必要となる対応について説明します。

【金融機関が開扉を制限するケース】

ケース理由必要となる対応
遺言書に開扉権限の記載ない場合権限の有無が不明確・通常どおりの対応(相続人全員の同意書と立会い)を求められる可能性が高い
貸金庫の内容が不明であるが、特定財産の遺贈のために貸金庫を開扉したい場合遺言対象財産との関連性不明・通常どおりの対応(相続人全員の同意書と立会い)を求められる可能性が高い
相続人から異議申立て権利関係に争いあり・家庭裁判所の判断を仰ぐ
・相続人間の合意形成
金融機関の内規との不整合金融機関独自の手続規定・事前に金融機関の要件確認
・必要書類の準備

貸金庫の内容物が不明な場合のリスク

貸金庫の内容物が不明なままにしておくと、さまざまなリスクがあります。

まず、貸金庫の中に遺言書が保管されている可能性があります。もし遺言書があれば、遺産の分配方法が遺言の内容に基づいて決まるため、それまでに行ってきた遺産分割協議が無駄になってしまう可能性があります。

また、貸金庫内に現金・有価証券・貴金属などの資産があるにもかかわらず、把握できていないと相続税の申告漏れが発生する可能性があります。税務調査で発覚した場合、過少申告加算税・無申告加算税や重加算税のペナルティが課されることもあります。

貸金庫内の財産を把握しないまま遺産分割を行った場合、一部の相続人が後で気づいたときに分割のやり直しを求める可能性があり、これにより、相続人同士のトラブルに発展する可能性もあります。

遺言書への貸金庫開扉権限の記載方法

相続発生後、貸金庫の開扉には相続人全員の同意や金融機関の手続きが必要になります。
遺言書に貸金庫の開扉権限を明確に記載しておくことで、相続人全員の合意を得る手間を省きスムーズな相続手続きを進めることができます。

遺言書に記載すべき重要事項は以下のとおりです。

【遺言書における貸金庫開扉権限の記載チェックリスト】

カテゴリーチェック項目
遺言執行者の指定☐ 遺言執行者の氏名・住所の明記
☐ 複数の遺言執行者を指定する場合の権限関係の明記
☐ 遺言執行者の辞任・死亡時の代替者(予備的遺言執行者)の指定
基本的な権限の記載☐ 遺言執行に必要な一切の行為の権限付与
☐ 相続財産の管理権限の明記
☐ 預貯金等の払戻し・解約権限の明記
貸金庫に関する具体的な権限☐ 貸金庫の開扉権限の明記
☐ 貸金庫の解約権限の明記
☐ 貸金庫内容物の搬出・保管権限の明記
既存の貸金庫契約がある場合の追加事項☐ 金融機関名・支店名の明記
☐ 貸金庫番号の記載(把握している場合)
☐ 契約内容に関する特記事項
将来の貸金庫契約に備えた記載☐ 将来契約する可能性がある場合の条件付き文言
☐ 契約先金融機関の範囲指定
☐ 契約可能な貸金庫の種類・規模の指定
注意すべき補足事項☐ 相続人への通知義務の有無
☐ 開扉時の立会人の要否
☐ 内容物の処分に関する指示
☐ 費用負担に関する記載
金融機関実務との整合性確認☐ 金融機関の一般的な要件との整合性
☐ 必要書類の範囲の明確化
☐ 手続きの順序・方法の明記

これらの記載内容が不十分な場合、金融機関が貸金庫の開扉を拒むことがあります。その場合には、「全相続人の立ち合い」や「相続人全員の同意書の提出」が必要になります。

現契約がある場合の記載

既存の貸金庫契約がある場合の遺言書の記載方法を説明します。

  • 金融機関支店名の明示方法
    金融機関名:○○銀行 ○○支店
    貸金庫契約番号:123456(契約情報がある場合)
  • 開扉権限の具体的な記載例
    遺言執行者に遺言者が契約する「貸金庫の開扉、解約および内容物の取り出し」の権限を与える。
    遺言執行者がこの権限の行使するにあたっては、相続人の同意を要しない。

遺言書に記載する必須項目と任意項目は以下のとおりです。

【貸金庫契約が現存する場合の必須項目と任意記載項目】

記載区分項目記載例備考
必須項目金融機関・支店名○○銀行△△支店正式名称を記載
貸金庫契約の特定当該支店の貸金庫契約に関する一切の権限契約者名義も記載するとより明確
開扉権限の明記貸金庫の開扉、解約および内容物の取り出し権限の範囲を具体的に列挙
遺言執行者の特定遺言執行者○○○○に対して住所等も含めて明確に特定
任意記載項目貸金庫番号貸金庫番号△△△号把握している場合のみ
開扉時の立会規定相続人の立会いの要否必要に応じて規定
内容物の処理方法内容物の確認・管理方法具体的な指示がある場合
費用負担開扉に関する費用の負担者明確にしておくと望ましい

将来の契約に備えた記載

遺言書作成時点で貸金庫を契約していなくても、将来的に契約する可能性を考慮し、貸金庫について遺言書に記載することでスムーズな相続手続きを実現できます。

具体的な記載例として以下のように限定しておく必要があります。
「遺言書作成時点では貸金庫契約は存在しないが、将来貸金庫契約を締結したときには」

なぜなら、最終的に遺言者が貸金庫を利用しなかった場合に、相続人が「貸金庫契約があったばずだ」と誤解し、紛争の原因になりえるからです。

また、次のような包括的な記載をし、たとえ契約先が変わっても有効な内容になるようにします。
「将来契約する可能性のある貸金庫(金融機関を問わず国内の全支店)」

とはいえ、あまりに包括的な表現の場合、相続人や遺言執行社の財産調査の負担が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。

【現在の契約と将来の契約における記載の違い】

記載項目現在の契約の場合将来の契約の場合
契約対象特定の貸金庫契約将来締結する可能性のある契約全般
金融機関支店具体的な支店名包括的な表現(「国内の全支店」等)
開扉権限具体的な貸金庫の開扉権限将来契約する貸金庫全般の開扉権限

遺言執行者への開扉の権限付与の具体例

遺言執行者の権限を適切に設定することで、相続手続きをスムーズに進めることができます。

【遺言執行者に必要な権限の一覧と記載例】

権限の種類具体的な記載例必要性
基本的権限「遺言者はこの遺言を執行するものとして○○を指定する」必須
財産管理権限「遺言者名義の預貯金()その他の相続財産の名義変更、解約及び払い戻し」
あれば「不動産、株式」なども明記
必須
貸金庫開扉権限「遺言者が契約する貸金庫の開扉、解約および内容物の取り出し」必須
包括的権限「その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること」推奨

推奨される記載例

遺言執行者は、相続財産を保全し、適切に管理する権限を持ちます。そこで、遺言執行者が金融機関の口座管理や貸金庫の開扉など、遺言の執行に必要な手続きができるということを明確にしておくことが大切です。

【記載例】
遺言執行者は、次の権限を有する。
(1)遺言者の預貯金等の金融資産の名義変更、解約、払戻し等の手続きを行う権限
(2)遺言者の貸金庫の開扉、名義変更、解約および内容物を取り出す権限
(3)その他本遺言執行に必要な一切の行為をする権限

記載における注意点

遺言書作成時の具体的な注意点と対策は、以下のとおりです。

【よくある記載の誤りと対策】

よくある誤り問題点対策推奨される記載例
権限範囲が不明確金融機関が対応に躊躇具体的な権限を列挙「貸金庫の開扉、解約および内容物の搬出に関する一切の権限」
金融機関・支店の特定漏れ執行に支障契約先を明確化「○○銀行△△支店における貸金庫契約に関する権限」
包括条項のみの記載金融機関が追加確認を要求重要権限は個別列挙「以下の権限を含む一切の権限」として以下に個別の権限を列挙
将来契約への対応不足新規契約時に無効将来対応文言を追加「将来契約する貸金庫を含む」と明記

2019年(令和元年)7月1日に施行された改正相続法により、遺言執行者の権限が明確化・強化されました。

第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
引用:e-GOV法令検索|民法 第千十二条

改正前は、遺言執行者は相続人の代理人とされていました。そのため、金融機関などの手続きにおいて相続人の関与が必要とされることがありました。

改正後は、遺言執行者が相続財産の管理・処分を単独で行えることが明文化され、独立した立場で手続きが行えるようになりました。

ただし、注意しなければならない点は、遺言執行者の権限が「遺言の内容を実現するため」の権限であるということです。つまり、遺言の内容に貸金庫の記載がなければ、通常、遺言執行者は貸金庫を開扉する権限がないとされ、相続人全員の同意や立会いを求められます。

この点、全財産を包括遺贈する内容の遺言があり、預金通帳や印鑑が銀行の貸金庫に入っている事例で、遺言執行者による貸金庫の開閉権を認めた裁判例があります(神戸地決平成11年6月9日)。ただし、この裁判例でも特定物を対象とする遺言について言及はありません。

そのため、貸金庫に保管されている財産を誰に相続させるのかを明確にしておくとともに、遺言執行者の貸金庫に関する権限も明記することで手続がスムーズに進みます。

【記載例】

  • ・「遺言者が現在または将来契約する貸金庫に保管されている財産のすべてを、○○(相続人の氏名)に相続させる。」
    ・「遺言執行者には、貸金庫の開扉、解約及び内容物の受け取り、その他本遺言の執行に必要な一切の権限を授与する。」

遺言書に貸金庫への言及がない場合の手続き方法

遺言書に貸金庫についての記載がない場合、貸金庫の開扉には相続人全員の立ち会いや同意が必要になります。相続人全員が立ち会える場合と、一部の相続人が立ち会えない場合とで手続きが異なります。

なお、貸金庫の種類や金融機関のルールによって開扉手続きが異なるため、事前に金融機関に確認しておくことが重要です。

相続人全員での開扉手続き

相続人全員が貸金庫の開扉に立ち会うことができる場合、金融機関の担当者と事前に日程調整をし、また、必要書類などを確認した上で準備し、相続人全員で金融機関を訪れ、開扉手続きをします。

金融機関によって異なりますが、一般的な必要書類は下記になります。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 各金融機関所定の開庫手続の書類、念書
  • 貸金庫の正鍵またはカード
  • 貸金庫契約時の届出印

貸金庫の中に、遺言書や遺産分割の対象となる財産が含まれている場合もありますので、遺産分割協議の前に内容物を確認することが重要です。

開扉の具体的手続き

伝統的な貸金庫は、被相続人の所持していた正鍵と金融機関の保管しているマスターキーを併用して開く仕組みになっています。貸金庫には収納箱が置かれており格納品の出し入れを行います。

開扉時、金融機関の担当者が立ち会う場合と、顧客の機密情報であるとして立ち会わない場合があり、各金融機関の考え方により異なるようです。貸金庫の内容物を持ち出す際に、その記録を取るという金融機関もあります。

最近では、鍵式ではなく、暗証番号式やカード式の貸金庫も増えています。この場合、利用者が持つ正鍵だけで開扉することができます。

正鍵紛失への対応

貸金庫には、正副2個の鍵があります。正鍵は利用者が保管し、副鍵は金融機関が保管します。副鍵を金融機関が保管する際には、利用者の届出の印章により副鍵を封印します。

貸金庫の鍵を紛失した場合には、金融機関の保管する副鍵を利用して開扉を行います。最近は、支店ごとに副鍵を保管しておらず、本部にて一括管理している金融機関が多いです。そのため、副鍵の取り寄せに時間がかかる場合もあります。

貸金庫の解約

貸金庫は、相続人の申し出によりいつでも解約することができます。ただし、この申し出は、相続人全員の名義で行う必要があります。なお、特約により、利用者が死亡すると金融機関からも解約が可能になるのが一般的です。

貸金庫を継続して利用する必要がある場合には、相続人名義で新たな契約を締結する必要があります。

一部相続人不在時の対応

相続人の中に、遠方に住んでいる・病気・高齢などの理由で立ち会えない人がいる場合は、立ち会えない相続人が委任状を作成し、代理人(他の相続人または弁護士等)を指定します。

なお、被相続人が生前に貸金庫を開けるための代理人を定めている場合もありますが、この代理人の権限は、貸金庫の名義人の死亡により消滅します(民法第653条)。

立ち会えない相続人が、行方不明や住所不定などで連絡が取れない場合には、家庭裁判所に申立てをして、不在者財産管理人を選任します。選任された不在者財産管理人が行方不明の相続人の代わりに貸金庫の開扉に立ち会います。

相続人間で同意が得られない場合の解決策

貸金庫の開扉について相続人間で意見が分かれることがあります。

このような場合、以下の法的手続きを活用することで解決を図ることが可能です。

事実実験公正証書の活用

事実実験公正証書とは、公証人が嘱託を受けて自らの五感の作用により直接見分した事実を記載して作成する公正証書のことです。貸金庫の内容物を確認した公証人が、中に何が入っていたかを記録し、それを証明するために公正証書を作成します。

事実実験公正証書の利用の可否について、金融機関により対応が異なるため、事前に金融機関に確認する必要があります。事実実験公正証書の利用について金融機関の承諾が得られれば、相続人全員の同意がなくても貸金庫の開扉が可能になります。

ただし、貸金庫の内容物の確認はできても、内容物の搬出はできません。

遺産管理人の選任

遺産分割調停・審判を申立てた場合、保全処分としての相続財産の管理人選任の申立てができます(家事事件手続法200条1項)。

この制度を利用して、管理人に貸金庫の開扉や内容物の確認をしてもらう方法もあります。ただし、原則として管理人は内容物の搬出はできません。

一部遺産分割審判の活用

2019年(令和元年)7月1日に施行された改正相続法により、遺産の一部の分割を家庭裁判所に請求することができるようになりました。

「貸金庫契約の契約者たる地位」について一部分割の審判受けて、単独で貸金庫の開扉、内容物の搬出を行うという方法もあります。

東京都千代田区の相続に強い弁護士なら直法律事務所

相続発生後の貸金庫の開扉は、相続人全員の同意が必要な場合が多く、遺言書の有無、金融機関の対応、法的手続きなどを考慮する必要があり、非常に複雑です。

特に、相続人間の意見が一致しない場合や、貸金庫の中に重要書類(遺言書・不動産権利証など)が含まれている場合、専門家のサポートが不可欠です。

そのため、弁護士などの専門家に相談することが非常に重要になります。

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