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弁護士コラム
遺言執行者は解任できる?手続きを相続に強い弁護士が解説!
- 家族信託・遺言書作成
- 投稿日:2024年08月16日 |
最終更新日:2024年08月16日
目次
遺言執行者とは?主な役割や選任方法について
遺言執行者とは、亡くなった方の遺言書に沿って相続が行われるよう、様々な手続きをする人物を指します。
具体的には、下記のような役割を担う方が該当します。
① 遺言書の保管場所や内容の確認 遺言執行者は、故人の家族や親族に聞き込みを行い、遺言書が誰に預けられたか、どこに保管していたかなどを調べなければいけません。 また、内容を確認して遺言書が法的に有効であるかもチェックします。 ② 遺産の整理・分配 故人の財産や負債の整理を行います。 また、遺言書に従って遺産を受取人に分配、必要な手続きも進めていく必要があります。 ③ 相続財産の調査や目録の作成 遺言執行者は、亡くなった方の相続財産の調査を実施し、財産目録の作成を行う義務があります。 財産目録は相続の際に必要不可欠な書類ですので、早めに準備してもらいましょう。 |
なお、遺言執行者の選任方法には
・遺言者本人が指定する方法
・相続人が家庭裁判所に申立を行い選任してもらう方法
などがあります。
遺言執行者を解任できる理由について
相続が開始されたにも関わらず遺言執行者が手続きを進めない場合、相続人等は時間が経っても遺産の相続ができません。
こうした事態への防止策として、民法では遺言執行者を解任できる規定を定めています。
<民法1019条1項> 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。 |
したがって、相続人等が家庭裁判所への請求を行い認められれば、遺言執行者を解任してもらえる可能性があるのです。
ただし、解任は確実に認められるわけではありません。
具体的には、下記の要因が大きく影響し判断されます。
解任申立の理由
遺言執行者の解任の請求が認められるかは、解任申立を行った理由により決まります。
具体的には、申立の理由が下記のような条件を満たす場合において解任が可能です。
遺言執行者が任務を怠った場合
解任が認められるケースの一つは、遺言執行者が任務を怠った場合があります。
遺言執行者には、前述のような果たすべき役割が存在します。
その役割や義務を遂行していない場合、任務を怠っていると判断されて解任できる可能性があります。
主なケースとしては下記のような事例があるでしょう。
・遺言執行者として就任したにも関わらず、相続財産の調査や目録作成を行わない ・故人の遺産の整理や分配を行う必要があるが、まったく手続きを進めてくれない ・相続人が問い合わせをしても対応せず、相続の進捗状況を伝えてくれない |
こうした事態が発生している場合には、速やかに遺言執行者の解任を検討しましょう。
できれば弁護士などにも相談して、早めに対策を取る必要があります。
その他の正当な理由がある場合
遺言執行者が任務や役割を怠った場合以外にも、正当な理由があれば解任は認められる可能性があります。
主な事例としては、遺言執行者が下記のケースに該当している場合です。
〇 遺言書の内容に反して、不正な管理や分配を行っていた場合 → 遺言の内容を無視して、執行人が身近な人に有利な条件で分配をした等のケースが当てはまります。 〇 病気やケガ等で遺言執行者の任務遂行が難しくなった場合 → 遺言執行の業務が進まないため、解任するための正当な理由があると判断されます。 〇 不正に相続財産を使用している場合 → 遺言執行者が公平に分配すべき財産を、不正に使用・消費している場合も解任できます。 〇 転勤や引越し等の事情により任務遂行が困難になった場合 → 連絡や会うことが難しくなり、任務を遂行できなくなった場合などが該当します。 |
なお、以下のケースは遺言執行者を解任する正当な理由とはならないため注意しましょう。
- 遺言執行人の性格や態度が気に入らないから
- 遺言執行人への報酬を支払いたくないから
- 遺言が特定の相続人にだけ有利になっている内容だから
遺言執行者の解任手続きの準備やポイント
遺言執行者を解任するための手続きには、必要な準備や注意すべき点が存在します。
主な事項としては下記のポイントがありますのでチェックしておきましょう。
家庭裁判所に申立
遺言執行者を解任させるためには、家庭裁判所に対して「遺言執行者解任の審判の申立」を行う必要があります。
申立の権利は、相続人や受遺者などの利害関係人(相続財産に利害関係がある人)が有しています。
なお、利害関係人の中から代表者1名の方が手続きを行えば手続きは可能であり、申請は亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
ちなみに、解任の請求をしてもすぐに遺言執行者の職務執行を停止できるとは限りません。
解任までに時間が掛かるケースも存在します。
相続人や受遺者の相続財産に損失が出る前に「遺言執行者の職務執行の停止の審判」の手続き等も行っておきましょう。
申立書に必要な内容と準備する書類
遺言執行者の解任手続きでは、主に下記のような書類や費用が必要になります。
・申立書 ・申立人の戸籍謄本、住民票 ・遺言書の写し ・遺言者の戸籍謄本、住民票 ・遺言執行者の戸籍謄本または住民票 ・被相続人の戸籍謄本、住民票除票 ・解任の正当な理由を示す資料 ・申立費用(800円) ・郵便切手(管轄の裁判所による) |
上記書類を家庭裁判所に提出すると、解任の必要性があるかを判断する審査が始まります。
特に重要なのは前述した解任の「正当な理由」ですので、根拠を示す明確な資料や内容の記載を行い、事前にしっかり準備しておきましょう。
遺言執行者の陳述聴取
申立人から解任の請求が出されると、家庭裁判所は遺言執行者の陳述聴取も行います。
そして、申立人から提出された申立書の資料や遺言執行者の陳述などから総合的に判断して、解任とするか決定します。
解任すべき「正当な理由」があると判断されれば、審判により遺言執行者は解任となります。
したがって、申立書には解任を求めるに至った経緯や状況を明確に記載しておきましょう。
解任が確定した後は、家庭裁判所からの通知で「審判書謄本」が発行されます。
審判書の発行までの期間
家庭裁判所の審判が決定するまでには時間が掛かります。
裁判所や案件の内容にもよって変わりますが、約1ヵ月程度の期間は想定しておいた方が良いでしょう。
原則として、解任の決定までの期間中も遺言執行者は変わりません。
この間に遺言執行者が相続財産を不正に横領する、もしくは株価が変動し目減りしてしまうなどの可能性があるでしょう。
そうなれば相続人や受遺者が受け取る相続財産には損失が出てしまいます。
したがって、早急に遺言執行者の職務を止めたい場合は、「遺言執行者の職務執行の停止の申立」も解任の請求と同時に出しておく方が良いでしょう。
こちらは裁判所が発行している家事審判申立書に内容を記載して提出します。
なお、上記の手続きを行うと遺言による相続は一時的に中断されてしまいます。
この間も遺言執行を続けたい場合は、「遺言執行者の職務代行者の選任」の保全処分も併せて行うと良いでしょう。
即時抗告
解任の審判を受けた後、遺言執行者は内容に不服がある場合には高等裁判所に即時抗告ができます。
即時抗告は、裁判所の決定が下された後において行う申し立てであり、2週間以内に手続きを取るようにします。
即時抗告が受理されると、抗告を受けた上級裁判所は、その抗告内容について審理を行います。
この審理において、上級裁判所は原裁判所の決定が法律的に適切であるかどうかを検討します。
なお、解任の請求が却下されてしまった場合には、利害関係人からの即時抗告も可能です。
審判内容に不服があれば、当該手続きで裁判所に結果を再考してもらえますので覚えておきましょう。
遺言執行者の解任後の進め方
遺言執行者を解任した後の遺言執行の進め方については、主に以下の2パターンが存在します。
- 家庭裁判所の選任で新しく遺言執行者を決定する
- 相続人だけで相続を継続していく
それぞれの方法には、注意すべき点やポイントがあります。下記の内容をチェックしてどちらが良いか検討しておきましょう。
新しい遺言執行者を選任する場合
遺言執行者が解任されると、遺言執行を行う人が不在となってしまいます。
この場合、利害関係人は家庭裁判所に「遺言執行者の選任の申立」をすれば、新たな遺言執行者を選任してもらえます。
なお、利害関係人には相続人だけではなく、受遺者や債権者の方も該当します。
手続きについては、管轄の家庭裁判所で行いますので、事前に必要書類を調べて提出の準備をしておきましょう。
選任の申立で出す書類には下記のようなものがあります。
① 申立書 ② 遺言執行者の候補者の方の住民票もしくは戸籍附票 ③ 亡くなられた方の死亡記載のある戸籍謄本 ④ 遺言書のコピー ⑤ 亡くなられた方との利害関係が分かる書類 |
また、上記に加えて収入印紙800円及び郵便切手(管轄の裁判所による)の費用が掛かります。
その他、必要に応じて追加書類の提出を求められる可能性もありますので、家庭裁判所に連絡してみましょう。
相続人だけで相続手続きを継続する場合
遺言執行者がいなくても、相続人だけで相続の手続きを継続できます。
具体的には、相続財産の調査や相続人の確認作業、また預貯金口座の解約などを相続人自らが行えるためです。
ただし、民法上では「子どもの認知をする場合」や「相続人の廃除もしくは廃除の取り消しをする場合」においては、遺言執行者がいなければ当該業務は執行できません。
また、相続人同士での話し合いでも相続は進められますが、トラブルになるリスクがあるため注意が必要です。
可能であれば新たな遺言執行者を選任して手続きは進めた方が良いでしょう。
東京都千代田区の遺産分割に強い弁護士なら直法律事務所
遺言執行者が任務を怠っている場合、相続財産の受け取りが遅れる、もしくは財産自体に損失が出る可能性があります。
もし遺言執行がスムーズに進まない場合には、遺言執行者の解任の申立を検討するようにしましょう。
なお、申し立て時には解任の正当な理由を提示する必要があります。
証明資料や書類の準備は相続人でも可能ですが、できれば専門知識のある弁護士などに依頼した方がスムーズです。
遺言執行者の解任を検討している場合には、専門家への依頼も考えておきましょう。
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