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弁護士コラム
遺言書を発見したらどうすればよい?【遺言書の検認手続】
- 家族信託・遺言書作成
- 投稿日:2023年01月17日 |
最終更新日:2024年03月14日
- Q
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遺言書を発見したら直ぐに開封してもよいのでしょうか?
開封におけるルールを教えてください。
- Answer
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遺言書を発見したときは、開封せず、すぐに家庭裁判所に提出し、検認を求めなければなりません(遺言書の開封は、相続人の面前で、裁判官がハサミを入れて行います)。
本記事でわかりやすく説明します。
遺言書の意味
遺言書は、遺言者が自身の最終意思を実現するために作成し、死後にのこしたものです。
しかし、遺言者が遺言をしたとしても、遺言書が散逸したり、偽造や変造がなされたりすると、遺言者の最終意思を実現することができなくなってしまいます。
そのため、遺言者が死亡したときは、できる限り速やかに遺言書の現状を確認し、確実に保存しておく必要があります。
このための手続が裁判所による検認になります。
遺言書の提出・検認義務
遺言書は、原本が公証役場で保管され偽造・変造リスクのない公正証書遺言を除き、家庭裁判所に提出し、その検認を受けなければなりません(民法1004条1項、2項)。
また、遺言書に封印がされているときは、検認期日において、相続人の面前で裁判官が開封することになります(民法1004条3項)。なお、封印されている遺言書を誤って開封してしまったときは、速やかに検認を請求し、その旨を裁判所に説明しなければなりません。
遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人が遺言書の提出を怠ったり、裁判所の検認を経ないで遺言を執行したり、封印がされている遺言書を開封したりすると、5万円以下の過料に処せられることになります(民法1005条)。実際にその者を過料に処するかどうかは、過料に処せられる者の住所地を管轄する地方裁判所が判断することになります。
また、相続人が遺言書の提出をせず故意に隠匿すると、相続人の欠格事由に該当して相続権を失ったり(民法891条5号)、受遺能力を失ったりするリスクがあります(民法965条)。
このように、民法は、遺言書の保管者は相続人に対して遺言書の提出・検認義務を課し、義務違反に対してはペナルティを課すことで、遺言書の散逸・偽造・変造をできる限り防止し、遺言者の最終意思の実現に努めています。
遺言の検認とは
遺言書の検認は審判事項です(家事事件手続法209条1項、別表第一103項)。遺言書の保管者や相続人が相続開始地の家庭裁判所に遺言書を提出して行います(家事事件手続法209条1項、別表第一103項)。
検認の請求を受けた家庭裁判所は、申立人と全ての相続人に対し、検認を行う期日を通知します(家事事件手続規則115条1項)。これは全ての相続人に対して立ち会う機会を与えるためですので、全員が立ち会う必要はありません。
裁判所は、検認期日において、遺言の方式に関する一切の事実を調査し(家事事件手続規則113条)、遺言書の客観的外形的状態を確認して検認調書を作成します(家事事件手続規則114条)。
裁判所は、封印の有無や外部の状態、遺言の全文、日付、氏名、押印の有無や印影の形状、紙質、大きさ、枚数、字体、配列、筆記用具の種類、加除変更の形式や内容などを確認の上、検認調書に記録します。検認調書には、通常、遺言書や遺言書が入っていた封筒等のコピーが添付されます。
遺言書に封印がされているときは、立ち会った相続人の面前で裁判官がハサミを入れて開封し、立ち会った相続人に中身を確認させた後、裁判所書記官に遺言書が入っていた封筒と一緒にコピーさせ、検認調書に添付します。
裁判所は、遺言書を開封する際は、事前に期日を定めて相続人全員に呼出状を郵送し、全ての相続人に対し、遺言書の開封作業に立会う機会を与えるように配慮しています。
遺言の検認の効力
遺言の検認は、遺言書の現状を確認し、偽造や変造を防止し、遺言書を確実に保存するためになされるものです。そのため、遺言書の提出・検認がなされず、封印がなされている遺言書が不正に開封されたとしても、遺言自体の効力に直接影響することはありません。
また、これとは逆に、裁判所が遺言書を検認したからといって、遺言書が遺言者の真意に基づくものであるかどうか、遺言が有効か無効かについて裁判所が判断を示したものではありません(大審院大正4年1月16日決定)。そのため、遺言書が偽造されたものであることが一見して明らかであったり、遺言書の内容が子孫に対する訓戒にすぎなかったりした場合であっても、遺言としての一応の形状を有している限り、裁判所は検認の請求を却下することはできず、検認をしなければならないものと考えられています。
そして、遺言の検認は遺言の有効性を確認したものではありませんので、遺言の検認後に遺言の無効確認訴訟を提起することは当然に許されます(大審院大正7年4月18日判決)。
なお、遺言書の検認後に遺言書を紛失したときは、検認調書謄本によって遺言を執行することができます。
検認終了後
遺言書の検認手続が終了すると、通常は、遺言書に検認済みであることの証明文を付けて申立人に交付します。
また、裁判所書記官は、検認に立ち会わなかった相続人、受遺者、その他の利害関係人に対し、検認をした旨を通知します(家事事件手続規則115条2項)。
まとめ
このように、遺言書は、必ず裁判所に提出し、その検認を経なければなりません。
遺言書が封印されているときは、開封せず、封印されたままの状態で裁判所に提出しなければ、過料の制裁を受けることになりますので、注意してください。
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