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弁護士コラム
相続手続きをするのに、相続人が協力をしてくれない!どのような手続きを行えばよい?
- その他
- 投稿日:2022年07月21日 |
最終更新日:2022年07月21日
- Q
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遺言書通りに相続手続きを実行したいのですが、相続人が協力をしてくれません。
この場合には、どのような手続きを行えばよいのでしょうか?
- Answer
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あなたが相続人の1人のときは、単独で所有権移転登記をすることができますので、他の相続人の協力は不要です。また、遺産を占有している者がいるときは、その者に対する民事訴訟を提起して引き渡しを求めることができます。
これに対し、あなたが相続人ではないときは、単独で所有権移転登記手続をすることができませんので、遺言執行者を選任してもらい、遺言執行者に対して登記手続への協力と引渡しを請求することになります。
解説
自分が相続人の1人であるとき
遺言によって遺贈や遺産分割方法の指定がなされると、受遺者(遺贈を受けた人)や分割方法を指定された相続人は、遺言者の死亡時に直ちに当然に遺産を取得することになります(大審院大正5年11月9日判決、最高裁判所平成3年4月19日判決)。
遺産の所有権を取得した受遺者や相続人としては、遺産の引渡し(不動産であれば、引渡しに加えて登記名義の移転)を求めることになります(第三者に対する対抗要件は、動産であれば引渡し、不動産であれば登記です。これらをしておかないと、先にこれらを済ませた第三者に所有権を奪われたり売却することができなくなったりといった不都合な事態が発生します)。
この点について、最高裁判所昭和39年3月6日判決は「遺贈が効力を生じた場合においても、遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は、完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである」との判断をしているため、受遺者にとっては速やかに所有権移転登記手続をすることが極めて重要になります。
そして、不動産登記法60条は、不動産登記は登記権利者と登記義務者の共同申請によるべきことを規定しているところ、登記権利者は遺産の所有権を取得した相続人や受遺者、登記義務者は他の相続人全員(遺言執行者がいれば遺言執行者)となります。
この点について、最高裁判所平成11年12月16日判決は「相続させる」という文言の遺言により相続した相続人は所有権移転登記を単独申請できると判断し、不動産登記法63条2項は遺贈された相続人が単独で登記手続をすることを認めています(施行日は令和5年4月1日ですので、それ以前の相続については、受遺者が相続人であっても相続人でない者と同じ処理になります)。
そのため、分割方法を指定された相続人(「相続する」という文言の遺言)や遺贈であっても受遺者が相続人のときは、他の相続人の協力を求めることなく単独で遺産(不動産)の所有権移転登記手続をすることができます。
自分が相続人ではないとき
これに対し、受遺者が相続人でないときは、単独での所有権移転登記は認められていません。
遺言で遺言執行者が指定されているときは、引渡しと登記名義の移転の要求は遺言執行者に対して行うことになります。遺言執行者は、遺産を占有している者がいるときは、最終的には民事訴訟を提起してその占有を取り戻した上で、遺産の所有権を取得した受遺者に引き渡すことになります。
また、遺産が不動産のときは、遺産の所有権を取得した受遺者と遺産執行者とが共同申請して登記名義の移転手続を行います(不動産登記法60条は、不動産登記は登記権利者と登記義務者の共同申請によるべきことを規定しているところ、登記権利者は遺産の所有権を取得した受遺者、登記義務者は遺言執行者となります)。
これに対し、遺言で遺言執行者が指定されていない場合は、遺産が不動産のときの登記名義の移転手続は、遺産の所有権を取得した受遺者と相続人全員とが共同申請することになります(不動産登記法60条は、不動産登記は登記権利者と登記義務者の共同申請によるべきことを規定しているところ、登記権利者は遺産の所有権を取得した受遺者、登記義務者は他の相続人全員となります)。
共同申請ですから、相続人全員の協力が必要であり、誰か1人でも協力を拒否する相続人がいるときは登記手続をすることができません。
その場合は家庭裁判所に対して遺言執行者の選任申立てをした上で(民法1010条)、選任された遺言執行者と共同申請して登記手続を行うことになります。
まとめ
このように、遺言で遺産の所有権を取得した人が相続人の1人かそうでないかによって、遺言執行者の選任申立てをするルートに入るかどうかが異なることになります。
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