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弁護士コラム
「遺言執行者」って何?引き受けたら辞任できる?
- その他
- 投稿日:2022年07月21日 |
最終更新日:2023年12月27日
- Q
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遺言執行者を引き受けたあとに辞任することはできますか?
また、そもそも引き受けないということは可能なのでしょうか?
- Answer
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遺言執行者になった後に辞任するには、家庭裁判所の許可が必要です。
また、遺言執行者になりたくなければ、受諾する旨の通知をしなければよいだけです。
遺言執行者とは
遺言執行者とは、死亡した遺言者に代わって遺言者の最終意思を実現するために遺言の執行を行う人のことです。民法1012条1項は、遺言執行者に対し、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を認めています。
そのため、遺言執行者が選任されると、相続人は相続財産に対する管理権を失い、遺産執行者だけが相続財産に対する排他的な管理処分権を取得することになります(民法1012条、1013条。相続人が処分行為をすると何人に対しても絶対的に無効となります)。
また、遺言執行者は、遺言執行に対する妨害を排除したり、遺言執行に必要な限度であらゆる訴訟行為を行ったりすることができます。
このように、遺言執行者には、遺言者の意思を実現するため、遺言の対象財産に対し、極めて強力な権限が認められています。
遺言執行者になるには
遺言執行者になるには、
- 1遺言による指定
- 2家庭裁判所による選任
の2通りのルートがありますが、遺言による指定のほうが原則的なルートになります。
遺言者は、遺言で1人又は数人の遺言執行者を指定したり、遺言執行者の指定を第三者に委託したりすることができます(1006条1項)。遺言や受託者によって遺言執行者に指定された人は、遺言執行者に就任することを承諾するか辞退するかについて、完全な自由意思に基づいて決めることができます。遺言執行者に就任することを承諾するにしても辞退するにしても、その理由を明らかにする必要はありません。
遺言や委託者によって遺言執行者に指定された人が遺言執行者に就任することを承諾すると、それによって直ちに遺言執行者に就任することになります。
なお、相続人に対して諾否(遺言執行者に就任することを承諾するか辞退するか)を通知する義務はありませんが、何も通知をしないと、相続人その他の利害関係人から諾否の催告権の行使を受ける可能性があるため(民法1008条)、遺言執行者に就任することを承諾するにしても辞退するにしても相続人には通知しておいたほうがよいでしょう。
これに対し、遺言執行者がないときやなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係者の請求によって遺言執行者を選任することができます(民法1010条)。
家庭裁判所は、事前に内諾を得てから遺言執行者を選任する運用をしているため、遺言執行者に就任したくなければその時点で断れば無理やり選任されることはありません。
このように、遺言執行者になりたくないのであれば理由を言わずに断ることができますので、意思に反して無理やり遺言執行者に就任させられることはありません。
遺言執行者をやめるには
遺言執行者は、遺言者に代わって遺言者の最終意思を実現するという重要な任務を行うことから、いったん就任したからには簡単に辞任することは許されていません。
遺言執行者が辞任するには、辞任をする正当事由の存在と家庭裁判所の許可が必須です(民法1019条2項)。家庭裁判所は、辞任をする正当事由があると判断したときでなければ、遺言執行者の辞任を許可することはしません。
この点について、遺言執行者としての任務を遂行できないような事情があれば、辞任の正当事由が認められやすくなります。
例えば、病気、長期の不在、多忙な職務への就任といった場合です。遺言執行者がやる気を失った場合であっても、それがもっともであるといえるような事情(相続人間の敵対関係に嫌気がさした等)があれば、辞任を認めてもよいと解釈されています。
なお、遺言執行者がやる気を失ったとしても、家庭裁判所による辞任許可決定があるまでは、誠実に職務を遂行しなければなりません(これを怠ると、相続人等から損害賠償請求を受けるリスクがあります)。
最後に
遺言や委託者によって遺言執行者に指定された人は、遺言執行者になることを自分の意思で辞退することができます。「やりたくないから」という理由で断っても一向に構いません。
しかし、遺言執行者になった後は、自分の意思で辞任することはできません。「やりたくないから」という理由で辞任することは許されないということを覚悟した上で、遺言執行者に就任することを承諾するか辞退するかを判断すべきであるといえます。
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