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弁護士コラム
非上場株式の譲渡制限とは?承認請求と価格決定の法的手続を解説
- 相続税・事業承継対策
- 投稿日:2026年03月11日 |
最終更新日:2026年03月11日

- Q
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父からA社の非上場株式を5%相続しました。私は経営には一切関与しておらず、配当も見込めません。そこで専門の買取業者に売却を考えています。
しかし、A社の現経営者である伯父から譲渡を承認してもらえず、少数株主であることを理由として配当還元方式で算定された非常に安い買取価格を提示されています。これは応じるしかないのでしょうか。
また、裁判所に価格決定の申立てをするという方法があると聞きましたが、適正な価格で評価される可能性はあるのでしょうか。売却に関する手続きについても知りたいです。
- Answer
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相続税額の算出に際しては、持株比率の小さい少数株主の有する非上場株式の株価の算定方法として、配当還元方式が用いられます。一般的に、少数株主が非上場株式を保有するメリットは、配当を受けることくらいしかないためです。
しかし、株式を売却する場合の株価の算定方法は、会社法や民法の定めがなく、当事者間の合意によって決定するのが原則です。そのため、提示された金額に納得がいかないのであれば、無理に応じる必要はありません。
株主は、会社に対して譲渡制限株式の譲渡等承認請求をすることができますが、会社が承認を拒否する場合、当該請求を受けて2週間以内に、譲渡等承認請求者に対して、会社あるいは指定買取人が当該譲渡制限株式を買い取る旨の通知(株式買取通知)をします。売買当事者は、株式買取通知後20日以内であれば、裁判所に、売買価格決定の申立てができます。
裁判所は、売買価格決定に際し、少数株主を保護する傾向にあり、純資産法やDCF法などの複数の評価方法を採用した上で細かく調整します。少なくとも会社側から一方的に提示される金額よりも適正な価格で評価される可能性があります。
この記事では、譲渡制限株式を譲渡するための手続きや裁判について、基礎知識をできるだけ分かりやすく解説します。
監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦
「売却したいが、会社から承認されるだろうか」「できるだけ高く売りたいが交渉に自信がなく、評価方法もよく分からない」
このように悩んでいる方に向けて、非上場株式の売却の法的手続きや裁判所の判断について説明します。
本記事を読むことで、売却の難しい非上場株式に対する理解が深まり、売却をめぐるトラブルや心配事にもスムーズに対応できるようになります。
目次
非上場株式の「譲渡制限」とは
株式は、本来、株主が投資した資本を回収する手段として第三者に自由に譲渡できるのが原則です。
しかし、非上場株式については、自由な譲渡ができない「譲渡制限株式」とすることが認められています。そして、ほとんどの非上場株式は譲渡制限株式です。
譲渡制限株式を譲渡しても、会社からの承認がないと株式を譲り受けた者は株主としての権利を行使できません。このように、非上場株式の譲渡には会社の承認が必要となるため、売却が困難となっています。
なお、株式に譲渡制限がついているかどうかについては、定款や商業登記簿にて確認できます。
譲渡制限が設けられる理由
譲渡制限株式とは、「譲渡により株式を取得する場合には、会社の承認機関から承認を受ける必要がある」旨が定款で定められている株式のことをいいます。
このような譲渡制限株式が認められている理由は、会社にとって不都合な個人や競合他社が株主となってしまうと、会社の経営や意思決定に不都合が生じる可能性があるためです。中小企業や同族会社などの非公開会社においては、譲渡制限株式を発行することが一般的となっています。
また、形式的に株式会社とみなされている特例有限会社の発行する株式は全て譲渡制限株式です。定款に明記がなくても、「株式を譲渡するには会社の承認を要する」旨と、「株主が株式を譲渡により取得するときは譲渡について会社が承認したものとみなす」旨の定めがあるものとみなされます。これらのみなし規定と矛盾する定款を作成・変更することはできません。
株式に譲渡制限があるかの確認方法
譲渡制限の有無は、定款で確認することが可能です。株主の権利として、会社の営業時間内であれば本店・支店を問わず、定款の閲覧や謄本・抄本の交付を請求できる権利があります。
また、譲渡制限株式である旨は、商業登記簿に必ず明記するべき事項と定められています。そのため、法務局で登記情報証明書を取得するか、インターネットの登記情報提供サービスで商業登記情報を閲覧することで確認できます。
譲渡制限株式の承認機関の違い
譲渡制限株式について譲渡等承認請求がされた場合、会社は譲渡を承認するかどうかを決定しますが、どの機関が承認するのでしょうか。
株式譲渡の承認機関は、定款で別段の定めがない限り、取締役会を設置している会社では取締役会、設置していなければ株主総会です。定款で異なる定めをすることも可能で、取締役会非設置会社が代表取締役を承認機関とすることもできます。
譲渡制限株式の「譲渡等承認請求」の手続き
譲渡制限株式を第三者に譲渡する場合、会社に対して「譲渡等承認請求」を行います。
譲渡等承認請求には、譲渡人(現株主)からする「譲渡承認請求」と、譲受人からする「取得承認請求」があります。ただし、取得承認請求は、一定の例外を除いて、譲渡人である現株主と共同で請求しなければなりません。
譲渡等承認請求を受けた会社は、請求を受けた日から2週間以内に、承認機関の決議により承認・不承認を決定し、請求者に決定内容を通知する必要があります。
この期間内に不承認通知がされなかった場合、譲渡を承認する決定があったものとみなされ、株主は株式の譲渡を会社に対して対抗できるようになります。
譲渡等承認請求で必ず記載すべき事項
譲渡等承認請求をする場合、以下の点を必ず明記します。
- 1譲渡する株式の数(種類株式発行会社の場合:種類と種類ごとの数)
- 2譲受人の氏名または名称
そして、会社が承認をしない場合には会社または会社が指定する買取人が買い取ることを請求(買取請求)する場合には、「譲渡について会社が承認しない場合には、会社または指定買取人が買い取ることを請求する」旨を記載することを忘れないようにしましょう。
請求の通知方法と推奨される手段
譲渡等承認請求の通知方法は、特に方法は決まっていません。
会社に意思表示が伝わればいいので、理論上は口頭やメールでも可能です。しかし、請求を行った事実や日付(みなし承認の起算点)が明確になるよう、実務では通例として内容証明郵便が用いられています。
代表取締役宛てで、「会社法136条・同法138条に基づく株式譲渡のための承認を請求する」旨と「譲渡する株式の種類と数・譲受人の氏名・不承認の際には会社側で買い取ることを請求する」旨を、漏らさず記載します。
会社の不承認通知が2週間以内にない場合(みなし承認)
譲渡等承認請求があったにもかかわらず、会社側が対応に遅れたり、無視したりする場合があります。
譲渡等承認請求の日から起算して2週間以内に、会社が請求者に対して不承認決定の通知をしなかった場合には、会社は譲渡について承認する旨の決定をしたものとみなされます。これを「みなし承認」といいます。
会社または指定買取人による買取通知が期間内にない場合(みなし承認)
譲渡等承認請求とともに買取請求も受けている場合、会社は、まず譲渡等承認請求について、請求の日から2週間以内に、譲渡の承認・不承認を決定して請求者に通知します。
そして、株式譲渡を不承認とした場合、会社は自ら買い取るのか指定買取人が買い取るのかを決定し、会社または指定買取人が請求者に通知する必要があります。その期間内に当該通知を行わなかった場合は、譲渡等を承認する旨の決定をしたものとみなされます。
この買取についての通知は、会社が自ら買い取る場合には会社が不承認通知から「40日以内」、会社が指定する買取人が買い取る場合には、指定買取人が不承認通知から「10日以内」に通知する必要があります。
また、指定買取人は、上記の通知に先立ちまたは同時に、請求者に対して、暫定的な買取代金を供託したことを証明する書面を交付する必要があります。この書面の交付を行わなかった場合にも、譲渡等を承認する旨の決定をしたものとみなされます。
なお、この暫定的な買取代金は簿価純資産額により算定されます。
譲渡不承認時の「株式売買価格決定申立」
買取通知が届いたとしても、その通知に記載された買取金額が必ずしも譲渡人に対して有利な金額とは限りません。むしろ、会社側にとって有利で、譲渡人にとっては非常に低額な金額であることが予想されます。
価格について協議・交渉が調わず決裂した場合には、最終的な手段として会社の本社(本店)の住所を管轄する地方裁判所に対して、買取通知から20日以内に「株式売買価格決定申立」を行い、裁判所に価格を決定してもらいます。
裁判所は「会社の資産状態その他一切の事情を鑑みて評価する」とされており、複数の評価方法を用いたり、専門委員の意見を考慮したり、できるだけ客観的で公正な評価をする傾向にあります。
申立てが必要になるケースと「20日」の期限
会社や指定買取人からの買取通知により、売買契約は成立します。しかし売買価格はこの時点では決まっておらず、会社法では当事者の協議で定めるものとされています。
この協議が調わなかった等の場合、買取の通知があった日から「20日以内」であれば、裁判所に対し、株式売買価格の決定の申立てをすることができます。期限内に協議も不成立で、かつ、株式売買価格決定の申立てがなかった場合、簿価純資産価額が売買価格となります。
この簿価純資産価額を基準とする株式売買は、株主にとっては不利な結果になる可能性もあります。どのような方法をとればより有利な売買価格となるのか十分に検討し、必要があれば期間内に売買価格の決定の申立てをするようにしましょう。
裁判所が考慮する「一切の事情」とは
裁判所は、「譲渡等承認請求のときにおける株式会社の資産状態その他一切の事情」を考慮して売買価格を決定しなければなりません(会社法144条3項)。
取引相場がない株式であるため、会社の資産状態のほか、会社の収益状況、1株当たりの収益または配当額、配当政策や配当能力、将来の事業の見通し、業界の状況等の会社の事業活動及び財務状況等に関する一切の事情を考慮して、客観的に妥当な価格を定める必要があると解されます(大阪地決平成27年7月16日金判1478号26頁)。
裁判所は、会社や指定買取人が主張してきた特定の評価方法のみを採用するわけではなく、拘束されることもありません。会社が配当還元法のみを主張してきても、裁判所は複数の評価方法の加重平均で決定することもあります。
少数株主の株価算定方法
譲渡の対象となる株式が少数で持ち株比率が低い場合、会社は、少数株主であることを理由に配当還元法を用いた低額な株価を提示するケースがあります。
確かに少数株主はわずかな配当を主たる目的にせざるを得ないため、配当還元法を採用する裁判例もありました。しかし、近年の多くの裁判例では、会社の内部留保や純資産を反映した評価方法を採用しています。
内部留保が生じているのにもかかわらず、それを無視するように配当還元法で評価することや、事業計画のない会社においてDCF法で評価するのは不適切であるとして、純資産を反映し、時価純資産法による評価が採用された裁判例があります。裁判所が、配当還元法よりも高額となる可能性のある評価方法を採用する可能性は十分にあるのです。
弁護士に依頼した場合のサポート内容と費用感
弁護士に依頼した場合、書類作成・資料取得や分析・価格交渉・訴訟における期日対応まで、全体的に弁護士がサポートし、交渉や訴訟対応も弁護士が代理して行います。
報酬体系は事務所によって異なりますが、着手金があるところとないところもあり、成功報酬については売却価格のうち7~22%としている事務所や、一定の金額以下の部分は6~10%、超える部分については5~8%程度として、それぞれに数万~数百万円を加えた成功報酬を設定している事務所が多くなっています。基本的には訴訟で解決した場合には報酬が高くなる傾向にあります。
このほかタイムチャージ制にしている事務所もあります。また、相談料・資料取得費用・内容証明郵便などの実費・日当などが加算されます。株式譲渡は複雑な事案であるため、複数の事務所に見積もりを出してもらって比較することをおすすめします。
売却をめぐって起こりやすいトラブルと対処法
譲渡制限株式の売却をめぐってはトラブルとなることが多いため、その対処法について解説します。
まず、そもそも買い手が見つからない場合には、M&Aを専門とする会社や事業承継のマッチングサービスの利用を検討しましょう。時には、贈与や売却をせずに持ち続けることも選択肢の1つといえます。
次に、会社に譲渡の承認を拒否された場合です。みなし承認とならない場合には、会社側に買い取ってもらうしかありません。しかし、ほとんどの場合、売価についての協議は難航します。そのため、できるだけ納得のいく金額や条件について、根拠資料も併せて提示しながら交渉する必要があります。
それでも会社側が示す評価額が不当と感じられる場合には、裁判所に株式売買価格決定の申立てをします。この審理の中で、当事者双方が公認会計士などの専門家による評価書を提出するのが一般的で、多くの場合100万円程度の費用がかかります。
また、裁判所の鑑定を利用する場合にも同様に費用がかかり、さらに、鑑定書の作成には数か月を要します。費用をかけられない場合には、裁判所が選任した専門委員からの意見聴取を利用することもあります。
なお、相続で譲渡制限株式を取得した場合は、会社側の譲渡承認決議は不要です。
よくある質問(Q&A)

以下、よくある質問についてQ&A形式でまとめました。
- Q
- 自分の持っている株式が譲渡制限株式かどうか確認する方法はありますか?
- Answer
-
株式の譲渡制限の有無は、定款または商業登記簿で確認できます。
株式会社の発行する株式に譲渡制限がある場合、定款及び商業登記簿に、必ずその旨が記載されています。そのため、比較的容易に調べることが可能です。
ただし、特例有限会社については、定款に譲渡制限の定めは明記されていませんが、譲渡制限があるとみなされる点、注意が必要です。
- Q
- 譲渡制限株式を第三者に売却したい場合、まず何をすべきですか?
- Answer
-
まずは、譲受人となる第三者と、株式の数や金額を決定します。その後、共同で会社に対して「譲渡等承認請求」を内容証明郵便で行い、承認が得られるのを待ちます。
承認またはみなし承認があれば、次は株式名簿に名義書換の手続きを行い終了します。
株式譲渡に関する契約の時期ですが、会社の承認後に契約という方法や、譲渡等承認請求の前に会社の承認を条件とする売買契約を締結するなどの方法も考えられます。
- Q
- 譲渡承認請求に「買取請求」を併記しないとどうなりますか?
- Answer
-
買取請求をするか否かは任意ですが、買取請求は譲渡等承認請求の中で行使する必要があります。
そのため、譲渡承認請求に買取請求が併記されていない場合、通常は買取請求をすることができません。
形式上、必ず併記しなければならないわけではありませんが、譲渡承認手続には時間的制限があることから、実務上は譲渡等承認請求と併せて買取請求をしておく必要があります。
- Q
- 会社が指定した買取人から、少数株主だからと安い価格を提示されました。応じるしかないのでしょうか?
- Answer
-
価格決定は、当事者間の協議により自由に決定すべき事項です。したがって、納得のいかない金額を提示されても無理に応じる必要はありません。
難航する場合には弁護士に交渉を依頼する方法や裁判所に決定してもらう方法へ移行しましょう。
東京都千代田区の相続に強い弁護士なら直法律事務所
譲渡制限株式の譲渡は、会社の承認を得られるかどうか、価格をどのような方法・根拠に基づいて算出し、交渉するかが大きな争点となります。
会社法上の手続きの流れや株式評価の手法を理解するのは難しい上に、手続きの時間制限もあることから、迅速な判断も必要となります。そのため、早い段階で弁護士などの専門家に相談することで、手続きにおける不備やトラブルを最小限に抑えることが期待できます。
直法律事務所では、譲渡制限株式の譲渡に詳しい弁護士が積極的に問題解決に向けてサポートいたします。まずは一度ご相談ください。
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