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弁護士コラム

非上場株式と遺留分の関係とは?侵害額の計算・請求手続き・生前贈与の対処法を解説

相続税・事業承継対策
投稿日:2026年02月18日 | 
最終更新日:2026年02月18日

Q
父が亡くなり遺言を確認したところ、父が経営していた会社の非上場株式はすべて兄が相続し、その他の財産を私が相続するという内容でした。非上場株式以外の遺産は、預貯金がわずかにあるだけです。そのため、私は遺留分侵害額請求を検討しています。

兄は「遺留分侵害はない」と主張しています。しかし、兄が前提としている株価は税務上の評価方法によるものです。父の会社は業績好調であり、実際の株価は税務上の株価より高いはずなので納得できません。

また、父は兄に対し、経営する会社の株式を10年以上前に生前贈与し、さらに、不当に安い価格で売却したこともあります。このような場合、遺留分侵害の有無はどのように判断されるのでしょうか。
Answer
本件のような場合、遺留分侵害の有無や遺留分侵害額は、非上場株式の評価方法によって結論が大きく変わります。税務上の株価(相続税評価額)は、会社の実際の収益力より低く算定されることが多いため、これだけを基準にすると遺留分権利者が不利になりがちです。遺留分侵害の有無を判断するには、私法上の株式評価方法で株価を算定してみることも重要です。

また、相続開始前10年以内に相続人に対して行われた生前贈与や、著しく低い価格で行われた株式の売買は、遺留分算定の基礎財産に加算される場合があります。こうした取引の有無は、遺留分侵害額を算定するうえで大きな影響を与えます。


この記事では、非上場株式が関わる遺留分の計算方法・生前贈与の扱い・遺留分侵害額請求の進め方について、実務に基づき分かりやすく解説します。

監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦

事業を次世代に引き継ぐ際、非上場株式の集中と遺留分の調整は避けて通れない重要な課題です。
 
株価評価の方法や過去の生前贈与の扱いによって、遺留分の結論が大きく変わるため、事業承継には専門的な視点が求められます。
 
本記事では、事業承継の準備を進めたい経営者や相続に不安を抱える方のために、遺留分侵害の判断方法など実務上の検討ポイントを説明します。

遺留分制度の基礎知識

遺留分制度とは、被相続人が生前贈与や遺言によって財産を自由に処分したとしても、一定の相続人に対して最低限の取り分を保障するための制度です。遺言において極端に偏った分配がされた場合でも、遺留分権利者は「遺留分侵害額請求」によって、侵害された分の金銭を請求できます。

本章では、遺留分の仕組み、誰にどれだけ保障されるのか、侵害された場合の救済手段まで、制度の基本を整理して解説します。

遺留分制度とは

遺留分とは、一定範囲の相続人に法律上保障された最低限の割合のことをいいます。

被相続人が、遺言や生前贈与により特定の人に財産を譲った場合、本来の相続人が財産を全くもらえない、または、わずかの財産しかもらえないといった事態になることがあります。残された相続人の生活を保障するために、民法は遺留分として最低限の財産を請求できるよう定めています。

遺留分が侵害された場合には、遺留分侵害額請求という金銭請求ができます。

遺留分と特別受益の違い

遺留分と混同しがちな概念として、特別受益があります。特別受益とは、相続人が贈与や遺贈によって被相続人から受けた特別の利益のことです。遺産分割の際に、特別受益を遺産に持ち戻した上で相続分を計算すれば、公平な相続が実現します。

遺留分と特別受益は、目的も効果も異なる別個の制度です。遺留分は「もらい過ぎた人から最低限の分を取り戻す権利」、特別受益は「もらった分も相続財産とみなして計算するルール」であると考えると理解しやすいでしょう。

遺留分が認められる相続人(遺留分権利者)

遺留分が認められる相続人(遺留分権利者)は、「配偶者」「子(代襲相続人である孫を含む)」「直系尊属(父母・祖父母)」です。兄弟姉妹には遺留分はありません。

例えば、被相続人の「配偶者+子」が相続人になるケースで「配偶者に全財産を相続させる」遺言があれば、子は遺留分侵害額請求ができます。一方、被相続人の「配偶者+兄弟姉妹」が相続人になるケースでは、「配偶者に全財産を相続させる」遺言があっても、兄弟姉妹は何も請求できません。

遺留分の割合(総体的遺留分と個別的遺留分)

遺留分の割合には、「総体的遺留分」と「個別的遺留分」があります。

総体的遺留分とは、相続財産全体に占める遺留分の割合をいい、遺留分権利者全員の遺留分の合計が相続財産の何割にあたるかを示すものであり、その割合は相続人の組み合わせに応じて、以下のように定められています。

  • ① 直系尊属のみが相続人の場合:相続財産の3分の1
  • ② ①以外の場合:相続財産の2分の1

個別的遺留分とは、相続財産全体に占める各遺留分権利者が持つ遺留分の割合であり、総体的遺留分に法定相続分を乗じて算出します。

例えば、「配偶者+子2人」が相続人の場合、上記②に該当するため総体的遺留分は2分の1となります。法定相続分は配偶者が2分の1・子はそれぞれ4分の1であるため、個別的遺留分は配偶者が4分の1・子は各8分の1となります。

遺留分侵害額請求権とは

遺言や生前贈与によって遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は、遺留分を侵害する者に対して、「遺留分侵害額請求権」を行使し、侵害額に相当する金銭の支払いを求めることができます。

「遺留分侵害額請求」は、2019年7月の民法改正により、従来の「遺留分減殺請求」が名称変更されたものです。遺留分減殺請求では現物返還が原則でしたが、遺留分侵害額請求は金銭による回復を基本としています。

遺留分が侵害される原因としては、以下のような例があります。

  • 遺贈:被相続人が遺言により特定の人に財産を譲ることです。
  • 特定財産承継遺言:被相続人が特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言です。
  • 生前贈与:被相続人が生前に行った贈与です。一定の基準に該当する場合に遺留分を侵害する原因となります。
  • 死因贈与:被相続人が死亡したときに効力が生じる贈与です。
  • 相続分の指定:法定相続分と異なる相続分を指定することです。被相続人が自ら相続分を指定する方法と、第三者に指定を委託する方法があります。
  • 特別受益の持戻し免除:特別受益にあたる贈与について、被相続人が遺言などにより、当該贈与を相続財産に持ち戻さない旨の意思表示をすることです。

遺留分侵害額請求権はあくまで相続人の生活保障のための救済制度であり、行使するかどうかは遺留分権利者自身の判断に委ねられています。

権利行使後は、具体的な侵害額を当事者間で協議し、それでも解決しない場合には調停・訴訟へと進む流れとなります。遺留分侵害の主張には期限(時効)もあるため、早めの検討が重要です。

遺留分侵害額の算定方法

遺留分侵害が疑われる場合、まず確認すべきなのが「遺留分侵害額がいくらになるのか」という点です。

本章では、遺留分算定の基礎財産の計算方法、財産の評価基準時、具体的な侵害額の計算式という3つのステップで説明します。特に、非上場株式のような評価が難しい財産が含まれる場合に、注意しておくべき点を押さえておきましょう。

遺留分算定の基礎となる財産の計算

遺留分を計算する際の基礎となる財産は、次の計算式で求めます。

遺留分算定の基礎財産 = 相続開始時の積極財産(遺贈される財産も含む) + 一定の贈与 - 債務

なお、贈与については、相続人に対するものか否かで、基礎財産に加算される範囲が以下のように異なります。

  • 第三者への贈与:原則として相続開始前1年以内のもの
  • 相続人への贈与:原則として相続開始前10年以内で、特別受益に該当するもの

なお、贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ったうえで行った贈与については、贈与の時期に関係なく基礎財産に加算されます。

また、不相当な対価で行われた売買は、対価を負担の価額とする負担付贈与とみなし、対価を差し引いた額を加算します。

基礎財産の評価基準時

遺留分の算定に用いる財産の価値は、相続開始時点の時価を基準に評価するのが原則です。これは、遺言や生前贈与がいつ行われたかにかかわらず、相続開始時における実際の経済的価値を基礎とすることで、遺留分権利者の保護を図るための考え方です。

特に、非上場株式や不動産のように価値が大きく変動しやすい財産では、贈与時の価額と相続開始時点の価額が大きく異なることがあります。遺留分の判断にあたっては、贈与時ではなく相続開始時の時価で評価される点に留意が必要です。

遺留分侵害額の具体的な計算式

遺留分侵害額は、「本来保障される遺留分額」から「すでに取得している価値」を差し引いて計算します。例えば、遺留分額が1000万円に対し、取得した財産額が100万円の場合、侵害額は900万円です。

民法1046条で定められている遺留分侵害額の計算式は、以下のとおりです。

遺留分侵害額 = 遺留分額 - A - B + C
A:遺留分権利者が受けた相続・遺贈・特別受益となる贈与の額
B:遺産分割の対象財産がある場合の遺留分権利者の具体的相続分の額
C:遺留分権利者が承継する相続債務

「遺産分割の対象財産がある場合の遺留分権利者の具体的相続分の額」とは、遺言の対象外の財産を遺産分割する場合に、本来の相続分として取得できる価値をいいます。遺言により全財産の承継が指定されている場合は、具体的相続分はゼロになります。

相続債務の扱いについては、原則として遺留分権利者が実際に承継する債務のみ加算対象となります。

なお、「全財産を一人に相続させる」遺言があり、当該相続人が相続債務も全て承継した場合、遺留分侵害額の算定において相続債務を加算することはできません(最判平成21年3月24日民集63巻3号427頁)。

複数の遺贈・生前贈与がある場合には、遺留分侵害額を負担する順序が民法1047条で定められており、その順序は以下のとおりです。

  1. まず、「遺贈を受けた受遺者」が優先して負担します。
  2. 遺贈で不足する場合は、「贈与を受けた受贈者」が負担します。
  3. 受贈者が複数いる場合には、相続開始に近い「後の贈与」から順に負担します。
  4. 同時になされた遺贈・贈与があり、複数の受遺者・受贈者がいる場合には、もらった財産額の割合に応じて遺留分侵害額を負担します。

非上場株式が関わる遺留分計算の注意点

非上場株式の生前贈与や遺贈があった場合、遺留分の計算には特有の注意点があります。非上場株式の評価額には税務上の評価額と私法上の評価額があり、どちらを採用するかによって金額が大きく異なります。

また、生前贈与に関しては、受贈者が誰か、いつ贈与が行われたかによって、遺留分算定基礎財産へ加算するかどうかが変わってきます。

本章では、非上場株式が関わる遺留分の計算における4つの注意点を解説します。株式の評価額・生前贈与の時期・不相当な売買などがどのように遺留分計算に影響するかを具体例と共に見ていきましょう。

注意点1:非上場株式の評価額(税務上 or 私法上)

非上場株式には様々な評価方法があり、税務上の株価は相続税等の計算のための基準に過ぎず、会社の収益力や純資産額を必ずしも正確に反映するものではありません。業績が好調な会社では、私法上の株価が税務上の株価を大きく上回るケースもあり、採用する評価方法によって遺留分侵害の有無が変わることがあります。

例えば、相続財産として税務上の株価1億円の非上場株式と預貯金5,000万円があり、子3人のうち1人が株式を全て取得する場合、税務上の評価では遺留分侵害がないように見えても、相続開始時の私法上の株価が1億9,000万円であれば、遺留分算定の基礎財産は2億4,000万円となり、不足分が生じます。

そのため、税務上の評価額だけを前提にすると、後に私法上の評価方法による株価(純資産法やDCF法など)に基づき、遺留分侵害額請求をされるリスクがあります。

また、遺留分権利者としては、株式を取得する相続人に依頼するなどして会社の計算書類等の資料を入手し、相続開始時点の私法上の時価を正しく把握することが不可欠です。

注意点2:相続開始前10年以内の生前贈与(特別受益)

相続人に対する生前贈与が「相続開始前10年以内」に行われ、かつ「特別受益」に該当する場合、その価額は遺留分算定の基礎財産に加算されます。特別受益に該当する贈与とは、「婚姻または養子縁組のための贈与」「生計の資本としての贈与」です。

非上場株式の承継が後継者に対して行われる場合、この特別受益にあたるケースが非常に多く注意が必要です。

会社経営者が後継者である子に非上場株式を生前贈与した場合、通常は会社経営権を承継させるためになされた「生計の資本としての贈与」と考えられるため、特別受益に該当します。相続開始前10年以内に行われていれば、その価額を遺留分算定の基礎財産に加算する必要があります。

株式は評価方法によって評価額が変わるため、遺留分権利者としては、評価資料の収集と適切な株価算定が重要となります。

なお、特別受益に関して、被相続人が持戻し免除の意思表示をしていたとしても、遺留分の算定においては加算対象となります。持戻し免除は遺産分割における調整であり、遺留分算定には影響しないためです(最決平成24年1月26日判時2148号61頁)。

注意点3:相続開始10年以上前の生前贈与

生前贈与について、第三者に対する場合は相続開始の1年以上前、相続人に対する場合は相続開始の10年以上前のものでも、一定の条件を満たすと遺留分算定の基礎財産に加算されることがあります。

民法1044条は、贈与者(被相続人)と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与を行った場合には、時期に関係なく加算されるという例外規定を置いています。

「損害を加えることを知って」とは、遺留分権利者に損害を与えるという加害の意図や誰が遺留分権利者であるかを知っている必要はありませんが、判例によると、贈与当時、「贈与財産の価額が残存財産の価格を超えること」を認識していただけでは足りず、「将来相続開始時までに被相続人の財産が増加しないことを予見していた」事実が必要とされています(大判昭和11年6月17日民集15巻1246頁)。

この要件が認められた場合、贈与時ではなく相続開始時の時価で評価された株式価額が、遺留分算定の基礎財産に加算されます。

注意点4:不相当な対価での売買(有償行為)

被相続人が生前に相続人へ非上場株式を売却していた場合でも、売買価格が著しく低いときには「負担付贈与」として扱われる可能性があります。負担付贈与とは、受贈者に一定の債務負担を条件とする贈与であり、遺留分算定の基礎財産に加える際には、本来の価額から負担額を控除した額を加算します(民法1045条1項)。

さらに、不相当な対価による売買を当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った場合には、「当該対価を負担とする負担付贈与」とみなされます(民法1045条2項)。

例えば、私法上の時価5,000万円の株式を500万円で売却していたケースでは、双方がその不相当性を認識していれば、差額の4,500万円が遺留分算定基礎財産に加算されます。

このように、「売買だから遺留分侵害とは無関係」とは言えず、取引内容によっては遺留分侵害額請求の対象となることがあります。

売買価格が不相当か否かを判断するには、株式の私法上の時価を正確に把握することが不可欠です。非上場株式の評価には、純資産価額方式・類似業種比準方式・DCF法(将来キャッシュフロー評価)など複数の手法があり、事案に応じた選択が求められます。

評価を誤ると遺留分侵害額に大きな影響を及ぼすため、後継者側・遺留分権利者側の双方に不利益を招く可能性があるため、専門家と連携して適正に算定することが重要になります。

会社資料の入手方法(株主名簿・計算書類・議事録)

非上場株式の価値を正確に把握し、遺留分侵害の有無を判断するには、会社資料の収集が不可欠です。特に、株主名簿や計算書類は株価算定の前提となる重要な資料であり、株主は一定の範囲でこれらを閲覧することができます。

株主名簿は、株主としての地位や保有株式数を確認するための基本資料です。相続人は、相続により株式を承継した旨を会社に通知すれば、名義書換手続の過程で閲覧が可能となります。過去の名義変更の状況を確認できれば、生前贈与や異動の有無を把握する手がかりとなります。

次に、計算書類(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書)は、純資産価額方式やDCF法による私法上の時価算定に必要な資料です。会社法上、株主には計算書類の閲覧請求権が認められているため、相続した株式数にかかわらず、閲覧・謄写が可能です。

さらに、株主総会議事録や取締役会議事録には、増資・株式譲渡・事業の状況など株価に影響する重要事項が記録されています。これらについても、会社法上、株主は閲覧請求をすることができます。議事録を確認することで、生前贈与や異動の背景、会社の経営判断などを把握できます。

非上場株式が関わる相続の場面では、株主としての権利を適切に行使し、会社から必要な資料を収集することが重要です。資料が不足している場合には、弁護士を通じて会社に照会するなど、適切な方法で情報を集めることが求められます。

それでは、遺留分権利者がこれらの資料を入手するには、どのような方法があるのでしょうか。

遺言により株式を相続する者以外は株主ではないため、閲覧請求権を行使することはできません。そのため、株主である相続人に依頼して資料を収集する方法が考えられます。また、会社が任意に開示してくれる場合もあります。

遺留分侵害額請求の手続きと流れ

遺留分が侵害されている場合、相続人は受遺者・受贈者に対して遺留分侵害額請求を行使できます。

この章では、権利行使の期限(時効)・具体的な行使方法・交渉が決裂した場合の法的手続(調停・訴訟)について説明します。

遺留分侵害額請求の行使期限(時効)

遺留分侵害額請求権には、行使期限(時効)があります。「①被相続人の死亡」と「②遺留分を侵害する遺贈・贈与があったこと」を両方知った時から1年以内に行使しなければなりません(民法1048条)。

また、遺留分侵害額請求権には、相続開始から10年という除斥期間も定められています。前記①②の事実を知らなくても、被相続人が亡くなって10年経過すると行使できなくなります。

遺留分侵害の疑いがある場合には、期限に留意しつつ、早急な調査と対応が必要です。

遺留分侵害額請求の行使方法

遺留分侵害額請求は、受遺者または受贈者に対して「遺留分侵害額を請求する」という意思表示を行うことで成立します。侵害額がまだ確定していなくても通知は可能であるため、まずは権利行使の意思を明確に示すことが重要です。

通知方法としては、証拠としての信用性の観点から、内容証明郵便が推奨されます。メールやチャットツールでの通知も可能ですが、時効の完成を阻止して証拠を残すためには内容証明郵便が最も確実です。

協議・調停・訴訟への移行プロセス

権利行使の通知後は、まず当事者間で任意の協議・交渉を行い、話し合いでの解決を試みます。話し合いで合意ができれば、金銭の支払方法や期限を定めます。

話し合いがまとまらない場合、遺留分侵害額請求では調停前置主義が採用されているため、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申し立てます(家事事件手続法257条1項)。調停では、「遺留分額」「生前贈与・不相当な売買の扱い」「非上場株式の評価方法」などが主な争点となり、決算書や株価算定の資料が重要な証拠となります。

調停が不成立となった場合、または調停の見込みがない場合には、地方裁判所(事案によっては簡易裁判所)に遺留分侵害額請求訴訟を提起します。

遺留分侵害額請求が認められた場合、現物返還ではなく、金銭支払いが原則となります。すぐに現金を用意できない場合には、分割払いや支払期限の延長の交渉をするか、裁判所に「期限の許与」を求める訴訟を提起することができます(民法1047条5項)。

経営承継を踏まえた生前贈与・遺留分対策

非上場会社の経営承継では、後継者に株式を集中させながら、他の相続人の遺留分をどのように確保するかが大きな課題となります。生前贈与を検討する際には、相続開始前10年以内の贈与が遺留分算定の基礎財産に加算される点を踏まえ、遺留分に配慮した贈与計画を立てることが重要です。

非上場株式は評価額が大きく変動するため、贈与の時期や評価方法を誤ると、想定以上の遺留分侵害が発生する可能性があります。

会社経営に関与しない相続人との間で調整が必要な場合には、遺留分放棄の活用も有効です。遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要ですが、放棄後はその相続人は遺留分侵害額請求を行うことができなくなるため、経営の安定性が高まります。

ただし、相続人の不利益になり過ぎないよう、代償措置や十分な説明を伴ったうえで行うことが求められます。

株式が分散することによる経営の不安定化を防ぐため、株式信託や持株会社化を活用する方法もあります。これらは法務・税務・企業評価が複合的に絡むスキームで慎重な設計が不可欠ですが、後継者への議決権集中と相続人間の公平性を両立させ、スムーズな事業承継と経営の安定化につながります。

経営承継と遺留分対策は、法律・税務・会計・株価評価が密接に関係するため、弁護士・税理士・会計士が連携した一体型のサポート体制を整えることが最も効果的です。複数の専門家が関与することで、生前贈与の税務リスク・株価算定・遺留分侵害回避策・遺言内容の整備などを総合的に検討でき、承継後の紛争リスクを大幅に軽減できます。

よくある質問(Q&A)

非上場株式が関わる相続では、株価の評価方法や過去の生前贈与の扱いなど専門的な論点が多く、遺留分が侵害されているかどうかの判断が難しいケースが少なくありません。

本章では、相談の現場で特に質問の多いポイントを取り上げ、遺留分侵害額請求を検討する際に知っておきたい基本事項を整理します。

Q
遺留分とはどのような制度ですか?
Answer
遺留分とは、相続人のうち配偶者・子(代襲相続人含む)・直系尊属に法律上保障されている最低限の取り分です。

遺言や生前贈与によって相続人の本来の取り分が減ってしまった場合でも、相続人は遺留分侵害額請求により最低限の額を取り戻すことができます。

なお、被相続人の兄弟姉妹が相続人になることもありますが、兄弟姉妹には遺留分はありません。
Q
遺留分の請求はいつまでにしなければなりませんか?
Answer
遺留分侵害額請求には時効があります。① 被相続人の死亡、② 遺留分を侵害する遺贈・贈与の存在の双方を知ったときから1年以内に請求しなければなりません(民法1048条)。

また、これらを知らなくても、相続開始から10年が経過すると請求できなくなる(除斥期間)ため、早期の調査と対応が重要です。
Q
10年以上前にされた非上場株式の生前贈与は、遺留分の請求対象になりますか?
Answer
遺留分算定の基礎財産に加算される生前贈与とは、原則として①相続人以外に対する贈与は相続開始前1年以内、②相続人に対する贈与は相続開始前10年以内に行われたものです。

しかし、贈与者と受贈者の双方が「遺留分権利者に損害を加えること」を知って行った贈与は10年より前であっても例外的に加算されます。贈与当時の財産状況や将来の財産増加の見通しなどが判断要素になります。
Q
遺言書で指定された非上場株式の評価額(相続税評価額)に納得いかない場合、どうすればよいですか?
Answer
非上場株式の税務上の評価額(相続税評価額)は、会社の真の収益力を反映しない場合があります。

遺留分侵害の有無を判断する際には、決算書等の株価算定資料を取得し、純資産法、DCF法など複数の方法で相続開始時点の価値を検討する必要があります。

税務上の評価額に疑問がある場合には、別の評価手法に基づき再評価を行い、その結果によって遺留分侵害額請求を検討するのがおすすめです。

東京都千代田区の相続に強い弁護士なら直法律事務所

非上場株式が関わる相続や遺留分の問題は、株価評価・生前贈与の扱い・事業承継計画との整合など、複数の専門的論点が絡み合う分野です。評価方法によって結果が大きく変わることも多く、個人で判断するには限界があります。

特に、後継者に株式を集中させたい場合には、遺留分への配慮を怠ると、相続発生後に多額の金銭請求や紛争へ発展するおそれがあります。早い段階で弁護士などの専門家に相談し、法務・税務・会計の視点から総合的に状況を分析してもらうことが重要です。

直法律事務所では、非上場株式を含む相続・遺留分問題について、株価評価や生前対策を含めた総合的なサポートを行っています。事前対策や紛争対応などでお悩みの方は、まずは一度ご相談ください。

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