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弁護士コラム

使途不明金の不当利得返還請求とは?調停・訴訟のポイントを解説

遺産分割のトラブル
投稿日:2025年12月12日 | 
最終更新日:2025年12月12日

Q
先日、父が亡くなりました。遺産を調べていたところ、父と同居していた兄が、父名義の口座から預金を引き出していたことがわかりました。使途を問いただすと、「父の入院費や生活費に使った」と言っていますが、領収書などはなく、信用できません。相続人は私と兄だけですが、このままでは遺産分割協議が進められません。

使途不明金を遺産分割調停で取り戻すことができるのでしょうか。最終的には訴訟も検討していますが、不当利得返還請求と不法行為損害賠償請求のどちらで請求した方がいいでしょうか。また、証拠の探し方や立証はどのように進めていけばよいのでしょうか。
Answer
被相続人の預貯金口座から生前に引き出された使途不明金について、原則として遺産分割調停で協議することはできません。相続人全員が同意している場合には調停の場で話し合うこともできますが、本来、当事者間での話し合い又は訴訟により解決すべき問題です。

訴訟を起こす場合の法的構成としては、選択的に併合して請求することも可能ですが、消滅時効が完成する恐れがある場合には、不法行為に基づく損害賠償請求のほうが客観的消滅時効期間が長いことから、不法行為に基づく損害賠償請求を提起すべきケースもあります。

使途について、兄は病院の領収書や通帳などを示していないことから推察すると、無断で引き出して私的に使った可能性も否定できません。しかし、親子間のやり取りであり、被相続人の生活費について領収書を保管していなくても不思議ではありません。そのため、裁判例では、領収書がなくても、年金・資産の額・預貯金の払い戻し金額などから従前の被相続人の生活費を推計し、概算で生活費の支出と認められることもあります。したがって、実際に使途不明金が生じた当時の被相続人の生活費がどのように支出されていたのかを調査することが大切です。


この記事では、「使途不明金の法的な取り扱い」「調停・訴訟に向けた準備」「証拠収集・立証方法」などについて網羅的に解説していきます。

監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦

遺産が生前に聞いていた内容と違う、という場合には他の相続人による引き出しや使い込みが考えられます。特に被相続人と同居していた親族が被相続人のために使ったと主張している場合で、領収書などの証拠が提示できない場合は要注意です。

本記事では、使途不明金がある相続において、使い込まれた部分を法的に取り戻す方法や訴訟に向けた対策などについて解説します。使途不明金が多額に上って困っている方は、しっかり理解を深めていきましょう。

相続財産の「使途不明金」とは

遺産分割をしようと被相続人名義の預貯金について調査したところ、口座から多額の現金が引き出されており、その使途が不明なケースがあります。このようなお金は「使途不明金」と呼ばれ、被相続人と同居していた相続人が預金通帳やキャッシュカードを管理しており、死亡の数年前から直前までの間に多額の現金が引き出されているが、使途について領収書などの証拠が提示されず、合理的な説明もなされないケースが典型的です。

本当に被相続人のために使われたのか、特定の相続人が無断で引き出して使い込んだのか、という点が主な争点となります。

遺産分割の対象は、「相続開始時と分割時に現存する遺産」が原則です。使途不明金は被相続人の遺産と評価できるのか、誰の財産にあたるのかも明確ではなく、遺産分割時に物理的に現存しないため、遺産分割の対象とはなりません。

しかし、預金等を引き出した相続人以外の相続人にとって、使途不明金を除いた遺産のみで遺産分割をすると、不公平感が拭えず、心情的に到底納得できるものではありません。

使途不明金があり、特定の相続人が自分自身のために使ったと疑われる場合、相続人間で不信感がつのり、信頼関係が破壊されかねません。このように相続人間の信頼関係が損なわれると、精神的ダメージが大きいだけでなく、相続人間だけでは遺産分割協議が進まず、弁護士への依頼が必要となったり、調停や訴訟といった法的手続きに進まざるを得なくなるなど、結果として必要以上の時間や費用がかかってしまいます。

遺産分割調停で「使途不明金」を扱うための条件

遺産分割では本来、使途不明金は協議の対象外です。しかし、相続人の全員の同意があれば、例外的に使途不明金について遺産分割調停の場で話し合い、解決できる場合があります。

調停を行う場合には、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 1「被相続人の預貯金を引き出した相続人が、無断で預貯金の引き出しの事実を認めている場合」又は「被相続人の了承の下で相続人の一人が預貯金を引き出し、被相続人からその金銭の贈与を受けたことについて争いがない場合」
  2. 2当事者全員が調停での解決を希望していること

しかし、調停の当初から当事者全員の意向が一致するとも限りません。そのため実務では、調停において使途不明金の主張がある場合、調停委員は、当事者の言い分を聴取し、預貯金を管理する相続人に対して預貯金払戻しの経緯とその使途をできるだけ速やかに開示し、提出すべき資料を提出するよう促すことも多いようです。

使途不明金を主張する側は「引き出しが無断で行われたこと」、相手方は「被相続人の承諾を得ていたこと、または贈与を受けたこと」を主張し、それぞれ預貯金の取引履歴・医療費や介護費用の領収書・贈与契約書や贈与税申告書・被相続人の意思を示す資料などを提出します。任意に資料を開示しない場合は、弁護士照会により金融機関に入出金状況を明らかにしてもらうなどの対応が必要となる場合もあります。

相当回数の期日を経ても、使途不明金について合意が得られそうもない場合、現存する遺産のみを対象として遺産分割調停を先に進め、使途不明金については別途訴訟を提起して解決する必要があります。

また、使途不明金については税務上の問題もあります。時間的余裕がない事案では、調停での解決にこだわらず、民事訴訟への移行を前向きに検討しましょう。

使途不明金が「生前贈与(特別受益)」として扱われるケース

被相続人の預貯金口座から引き出しをした相続人に使途不明金について問いただすと、様々な反論をしてくる可能性があります。

具体的には「被相続人からの委任を受け、引き出すことについて了承を得ており、生前贈与として受け取った」といった主張です。この主張が真実で、裏付ける証拠もある場合には、被相続人が自己のために自由に財産を処分しただけであり、特に問題にはなりません。

裁判例の中には、仮に口座から引きだした金銭の内に被相続人に引き渡していない金銭があったとしても、被相続人の介護などの労力への対価や、遺言の付言にもある日頃の感謝の気持ちを踏まえ、贈与の趣旨があったと推認されたケースもあります(東京地判平成24年12月26日)。

贈与であったことについて争いがなければ、調停では「特別受益」として扱われます。贈与か否かについて争いがある場合には、どのような使途であったか等について争うこととなります。

訴訟で贈与であったと認められた場合、不当利得や不法行為が成立せず、「不法行為に基づく損害賠償請求」や「不当利得返還請求」は認められません。

その一方で、遺産分割では当該贈与が特別受益となり、遺産に持ち戻して計算されます。しかし、既に遺産分割が調停や審判で成立している場合にはやり直しはできません。また、合意により遺産分割が成立した場合でも、相続人全員が合意している場合など限定的な場合以外にやり直しができないため、注意が必要です。

使途不明金を遺産分割調停で扱う3つの方法

遺産分割調停において、当事者全員の合意がある場合には、使途不明金を遺産分割の問題として取り扱い、調停の中で解決を目指すことが出来ます。

ここでは、その際に用いられる主な3つの方法を解説します。

① 引き出した預貯金を「取得済み」として相続分を調整する方法

相続人の一人が引き出した預貯金の全部又は一部を、その相続人が「既に取得した」ものとして扱い、その相続人の具体的相続分を計算する方法です。

現実的で処理もしやすい点が特徴ですが、正当な支出があった場合は、その分を控除するなどの細かい調整が必要となる場合があります。

相続人A・B・C
Aが引きだした使途不明金500万円
その他の遺産1000万円
分配A:実質0円
(ただし、使途不明金500万円を既に取得したものとされる)
B:500万円
C:500万円

② 引き出した預貯金を「現金保管」とみなし遺産に含める方法

相続人の一人が引き出した預貯金相当額について、「現金を保管している」ものとみなし、これを分割対象の遺産に含める方法です。

より明確かつ公平な方法ですが、引き出した相続人が実際に現金を保管していない場合には、実質的には返金義務を負う形となります。

相続人A・B・C
Aが保管している現金500万円
その他の遺産100万円
遺産総額600万円
分配A:200万円(300万円をB・Cへ支払い) 
B:200万円 
C:200万円

③ 引き出した預貯金を「特別受益」として持ち戻し計算する方法

引き出された預貯金を被相続人からの贈与であると捉え、「特別受益」として遺産に持ち戻した上で、具体的相続分を定める方法です。

贈与額が大きい場合には、相続分が大きく変動する可能性があります。

相続人A・B・C
Aが贈与を受けた金銭(特別受益)500万円
その他の遺産100万円
みなし遺産を含む遺産総額600万円
分配A:0(-300万円だが返還は不要)
B:200万円(実際には50万円)
C:200万円(実際には50万円)

相続開始後の預貯金引き出しの扱い(民法906条の2)

相続開始後、遺産分割前に相続人が預貯金を払い戻した場合の取り扱いについて、令和元年に相続法改正がありました。改正まではこのような事例について明文規定がなく、争うこと自体がごく稀で、裁判例もありませんでした。

遺産分割は、原則として現在残っている遺産を分割する手続であるため、改正前、実務では相続開始後かつ遺産分割前に払い戻した預貯金は分割時には存在しないものとして扱っていました。

そのため、実際に存在する遺産のみで遺産分割を行うことが原則であり、相続人全員で遺産分割に含めると合意があった場合は例外的に遺産分割の対象とされてきました。この場合、引き出し金を自分のものとして取得した相続人と、そうではない相続人では、最終的に取得する金額に差が出てしまい、不公平が生じていました。

そこで、遺産分割前に遺産を相続人の一人が処分した場合に、処分をしなかった場合と比べて利得することがないよう遺産分割で調整を可能にできるよう改正された民法が令和元年7月1日に施行され、民法906条の2が新設されました。これにより、一部の相続人によって、相続開始後、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合、相続人全員の同意があれば、遺産分割時に存在するものとみなすことができます。

また、一部の相続人が財産を処分した場合には、その相続人の同意を得ることなく、他の相続人の同意によって遺産分割時に存在するものとみなすことができます。このように、処分された財産が、遺産分割時に存在するものとみなされた場合、遺産分割の対象となります。

民法906条の2を適用する際の留意点

民法906条の2を根拠として処分された財産を遺産分割の対象とするためには、遺産を処分した者(処分者)が誰かを明らかにする必要があります。

処分者が、自分が遺産を処分したことを認めている場合や、資料などから客観的に認定できる場合には、他の相続人の同意があれば民法906条の2を適用できます。しかし、処分者が自身の関与を否認し、証拠資料から認定することも困難な場合、そのままでは、処分された財産を遺産分割の対象とすることはできません。

そこで、「みなし遺産確認請求訴訟」の提起を検討する必要があります。みなし遺産確認請求訴訟とは、処分者を認定するために、処分された財産が民法906条の2第2項により遺産に含まれることの確認訴訟をいいます。

なお、みなし遺産確認請求訴訟の中で、処分者が被相続人の税金の支払いに充てたなど、被相続人のための支払いであったと主張する場合も考えらます。このような場合は、正当な支出として相続財産からの支出が認められる可能性が高いです。

他方、葬儀費用として使ったと主張する場合もありますが、これは判例や学説が分かれており、当然に正当な支出として認められるとは限りません。

使途不明金訴訟と遺産分割審判の進行に関する注意点

使途不明金が遺産に占める割合が大きければ、事実上、遺産分割に大きな影響を与える重要な問題となります。しかし、遺産分割調停や審判は、遺産分割時点で存在する遺産を対象としているため、遺産分割時点で存在していない使途不明金については別問題として扱われ、使途不明金についての訴訟の進行を待ってくれません。

そのため、使途不明金問題について、訴訟の提起を検討・準備をしている間に、遺産分割調停が不成立となり審判手続に移行し、審判がなされて確定してしまう恐れがあります。

遺産分割審判で使途不明金について特別受益の主張をしないまま審判が確定すると、その後の使途不明金返還請求訴訟において贈与(特別受益)と認定されても、遺産分割をやり直すことはできません。公平な遺産分割が実現できなかったとしても、自己の選択による結果として受け入れざるを得ないことになります。

このような事態を避けるためには、調停申立ての取り下げをして進行を止める必要がありますが、申し立てた相続人の自由な判断に委ねられ、取り下げを強制することはできません。

「訴訟で使途不明金の問題を解決させた後に、調停で遺産分割を行う」といった、正しい順序とタイミングで進めていくことが重要なポイントです。

使途不明金に関連する訴訟選択のポイント

使途不明金に関する主な訴訟としては、以下の3つが挙げられますが、事案に応じて適切な訴訟を提起する必要があります。

  1. 1遺産確認請求
  2. 2不法行為に基づく損害賠償請求
  3. 3不当利得返還請求

「遺産確認請求」は、主に以下のようなケースで提起されることが多いです。

  • 配偶者や子の名義だが実質は被相続人の預貯金財産(名義預貯金)であると主張する場合
    被相続人が実質的に管理・運用していれば、被相続人の遺産に含まれる。

  • 被相続人名義の預金について、生前贈与があったとして遺産ではないと主張している場合
    その財産が遺産として評価できるかどうかを確定させる。

他方、無断での引き出しの場合には、「不法行為に基づく損害賠償請求」と「不当利得返還請求」が最も主要な訴訟形態となります。

不法行為に基づく損害賠償請求と不当利得返還請求の比較

相続財産の無断の引き出しについて、調停での解決が難しい場合、最終的に民事訴訟で解決を目指します。

被相続人と無断引き出しをした者の間に委任関係がある場合には、委任契約に基づく善管注意義務違反による損害賠償請求や、委任契約に基づく受取物引渡請求という構成も考えられますが、「不法行為に基づく損害賠償請求」あるいは「不当利得返還請求」のいずれかを、事案に応じて適切な方を選択することが多いようです。

この2つの請求には、5つの比較項目において微妙な違いがあり、それぞれメリット・デメリットが存在します。

実務では、特に重要な「消滅時効」がより長期であるという理由から、「不法行為に基づく損害賠償請求」での提起が推奨される事案が多いですが、多くの場合は選択的に併合して請求しています。

なお、いずれの法律構成であっても、各相続人は自身の相続分を限度として請求できるだけですので、引き出した全額に対して請求できるわけではありません。

比較項目不法行為に基づく損害賠償請求不当利得返還請求
消滅時効損害及び加害者を「知ってから3年」、または「行為のときから20年」債権者が権利行使することができることを「知った時から5年」または「行為のときから10年」
遅延損害金の起算点「無断払戻しのとき」「請求日の翌日」
(ただし、悪意の受益者は利得時点から法定利息の支払義務あり)
立証責任請求者(原告)が不法行為の成立を立証する必要がある請求者(原告)が法律上の原因なく利得したことを立証する必要がある
弁護士費用不法行為と因果関係のある損害として、請求が認められる場合がある請求できないとされている
反対債権との相殺悪意の不法行為に基づく損害賠償債権は、原則として相殺(受働債権)できない相殺(受働債権)することが可能

不当利得返還請求を行う前に確認すべきこと

使途不明金をめぐるトラブルでは、「引き出されたお金は、誰が引き出し、何に使われたのか」が最大の争点になります。その立証には、金銭の流れを客観的に示す証拠が非常に重要となります。

この章では、訴訟を起こす前に確認・準備しておくべき事項について解説します。

使途不明金の立証に必要な証拠収集と事前準備

預貯金の入出金状況と引き出し行為の把握

使途不明金の立証において、最も重要なのが、被相続人名義の預貯金口座の取引について正確な内容を把握し、証拠を整理することです。

引き出した相続人本人又は金融機関に問い合わせて、入出金明細や取引履歴といった記録を開示してもらい、「いつ・誰が・どこで・いくら引き出したのか」を時系列で明確にしましょう。相続人の立場であれば、通帳を持っていなくても単独で開示を求めることが可能で、金融機関は拒否できないものとされています。「誰が引き出したか」については、出金伝票の筆跡・本人確認書類・ATMによる入出金の時間などにより、引き出した相続人本人の関与が立証できます。

ただし、金融機関へ開示を求める場合には、戸籍謄本等の提示や高額な手数料が必要となる場合があるほか、10年以上前の取引履歴については保管期間を過ぎているとして取得できない場合があります。

支出の正当性および被相続人の意思能力の確認

続いて、引き出しをした者が「生活費」「介護費」「入院費」などとして被相続人のために出費したと主張している場合には、それを裏付ける領収書・レシート・医療機関や介護施設での書類などを確認します。

また、被相続人の介護認定の調査票・健康状態や認知症の程度が分かるカルテや介護記録・施設入所の有無などから、被相続人の委任や了承による引き出しであったかを判断できる場合があります。

認知症と診断されている場合でも、法律上の「意思能力の欠如した状態」と一致するわけではありませんが、意思能力の欠如が疑われるため、家族や介護者や友人の証言・カルテの行動記録など、様々な考慮要素を集積し、意思能力の有無について検討する必要があります。被相続人が意思能力のない状態で引き出しをしていたとしても、委任や了承があったとは評価されず、権限のないものとして扱われます。

訴訟前又は訴訟中に遺産分割調停で使途不明金についての話し合いがなされ、自身に有利な供述を相手方がした場合には、調停調書などに記録してもらい、後に訴訟となった際に証拠として活用できるようにするとよいでしょう。

相手方に証拠を開示させる方法

では、被相続人の口座から預貯金を引き出した相続人に対して、直接、証拠の開示を求めるにはどのような方法があるのでしょうか。

まず、内容証明郵便により金銭の返還請求をするとともに、資料の開示を請求する方法があります。任意ではありますが、応じない場合でも返還請求権の消滅時効の完成は猶予されますし、通常であれば容易に提出できるはずの資料開示に応じない場合には、疑わしい事情があることを示す証拠として機能することもあります。

お互いの関係が悪い場合や複雑な使い込みの場合には、弁護士が作成した内容証明郵便の郵送や、弁護士を通した交渉をおすすめします。

不当利得返還請求の弁護士に相談すべきタイミング

弁護士に相談すべきタイミングは主に以下の3つです。

  1. 1時効が迫っている
  2. 2相手方が交渉に応じてくれない
  3. 3証拠が不十分

相手方も弁護士に依頼している可能性が高いことから、訴訟を見据えているような事案では早い段階で弁護士に相談し、アドバイスやサポートを受けることをおすすめします。

① 時効が迫っている

「不当利得返還請求」「不法行為に基づく損害賠償請求」のどちらにも消滅時効が設けられています。時効が完成してしまうと、法的に請求することができなくなり、泣き寝入りせざるを得ません。

そこで、時効が完成する前に弁護士へ依頼し、内容証明郵便の作成・送付してもらうことが効果的です。内容証明郵便は個人でも作成できますが、要件を満たしていない場合には、時効の完成猶予が得られない恐れがあります。

また、弁護士に依頼してでも解決を望むという意思表示は、心当たりがある当事者にとっては軽視できない心理的効果があります。

② 相手方が交渉に応じてくれない

相手方と話し合っても、説明や資料の開示に応じてもらえないことは多々あります。それどころか、様々な反論をしてきて、収拾がつかない状態になることもあります。

自力で交渉を続けても進展が望めないような場合には、弁護士に依頼して交渉を代理してもらいましょう。弁護士は、反論への対応にも慣れており、無用な衝突を避けつつ、圧倒的な知識と経験に基づいた冷静な交渉を進めることができます。

また、訴訟を提起すべきかどうか、そのタイミングも含めて適切に判断し、裁判に向けて書類をスムーズに整えることができます。

③ 証拠が不十分

何の書類を集めればよいのか、どの金融機関や医療機関を調べたらよいのかが分からない場合などは、弁護士に依頼し、知識と経験に基づいた効率的な証拠収集をしてもらうほうがよいでしょう。

また、一般には入手困難な証拠であっても、弁護士は「弁護士会照会」という制度に基づき、官公庁や企業などの団体へ調査・照会することができます。個人のプライバシーの関係で開示してもらえない等の限界はありますが、個人では難しい情報の取得が期待できます。

訴訟を有利に進めるためには、証拠の収集と保全が何よりも重要です。早めに弁護士へ相談し、訴訟の準備を着実に進めていきましょう。

よくある質問(Q&A)

使途不明金をめぐる遺産分割調停や不当利得返還請求に関して、読者の方が抱きやすい疑問について、Q&A形式でわかりやすく解説します。

Q
遺産分割調停で使途不明金の話をしたら、必ず解決してもらえますか?
Answer
使途不明金問題は、原則として遺産分割調停の対象事項ではないため、必ずしも解決してもらえるわけではありません。

本来、調停は話し合いの場に過ぎず、裁判所のように最終的な判断や解決をしてもらう手続きではありません。民法906条の2が適用できる場合を除き、当事者間で引き出しの認否や金額などについて争いがある場合や、当事者のうち1人でも調停での解決を希望しない人がいる場合には、調停で使途不明金問題を解決することはできません。
Q
使途不明金が「特別受益」と認められた場合、どうなりますか?
Answer
相続人が生前に被相続人から受け取った贈与が「特別受益」と認められると、贈与を受けた金額を相続財産に加えたものを「みなし相続財産」とし、これを基礎に各相続人の相続分を算定します。

特別受益を受けた相続人は、本来の相続分から特別受益分を控除することで、具体的相続分が算出されます。具体的相続分は「(遺産総額+特別受益)×法定相続分-特別受益」で計算されます。

なお、贈与の全てが特別受益として認められて持ち戻しの対象になるとは限りませんので、注意が必要です。
Q
相続開始「後」の引き出しは、必ず遺産分割の対象になりますか
Answer
相続開始後(被相続人が死亡した後)に引き出しがあった場合でも、必ず遺産分割の対象になるわけではありません。場合によっては、訴訟での解決が必要になることもあります。

民法906条の2の要件「引き出した相続人が明らかで、その相続人以外の相続人全員の同意)を満たしている場合には、引き出された金額を「みなし遺産」として遺産に組み込み、遺産分割の対象として取り扱うことができます。
Q
不当利得返還請求の時効はいつからですか?
Answer
不当利得返還請求の時効は、原則として「権利を行使できることを知った時から5年」あるいは「権利を行使できるときから10年」です。

「権利を行使できるとき」の起算点とは、利得が受益者に帰属した時点です。具体的には、相続人が個人的に引き出した時点や消費した時点で不当利得が発生したと考えられています。

東京都千代田区の相続に強い弁護士なら直法律事務所

相続財産における使途不明金は、相手方から反論されることが多く、冷静な対応が求められます。訴訟や交渉による解決には、専門的な知識と経験が結果を左右します。

また、相続に関する訴訟は特に時間を要するうえ、使途不明金が問題となる場合には、税務申告などの付随的な問題が生じることもあります。早期に弁護士などの専門家へ相談し、迅速に対応につなげましょう。

直法律事務所では、相続分野に精通した弁護士が問題解決をサポートいたします。まずは一度ご相談ください。

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