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相続財産清算人(相続財産管理人)は誰がなるの?選任の流れや報酬・権限について解説!

相続放棄
投稿日:2022年07月26日 | 
最終更新日:2024年05月22日
Q
相続人が全員相続放棄を選択し、相続人がいなくなった場合等には、相続財産清算人(相続財産管理人)が選任されると聞きました。
この「相続財産清算人」とは誰がなるものなのか、どのような権限があるのか、具体的に教えてください。

※令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)により、相続財産管理人の名称が「相続財産清算人」に変更されました。
Answer
相続人がいない場合は、財産を管理する人がいなくなります。そこで必要となるのが「相続財産清算人(相続財産管理人)」です。
相続財産清算人とは遺産を管理する人のことです。
具体的には、法律にしたがって債権者や受遺者への支払い、特別縁故者に対する相続財産を分与するための手続きなどを行います。
相続財産清算人は、相続人がもともと、いらっしゃらない場合のみならず、相続人全員が相続放棄をした場合にも利用されることが多いです。

相続財産清算人(相続財産管理人)とは?相続に強い弁護士が動画で解説

相続財産清算人(相続財産管理人)とは

相続財産清算人(相続財産管理人)」という言葉を聞いたことがあるものの、その意味をよく知らない方は多いのではないでしょうか。

相続財産清算人(相続財産管理人)は難しいイメージがありますが、相続人がいない場合、もしくは相続人全員が相続放棄を選択したとき等に必要となる存在ですから、ぜひ知っておきたい言葉の1つです。

ここでは相続財産清算人の意味についてご紹介します。

相続人に代わり財産を管理する人

相続財産清算人とは、簡単にいうと相続人の代わりに財産を管理・清算をする人のことを指します。

基本的に被相続人の財産管理は相続人が行うのですが、状況によっては相続人が明らかでないことがあります。(相続人全員が相続放棄を選択して、相続する者がいなくなった場合なども含みます。)

財産を管理する人がいなくなれば、被相続人の債権者から損害賠償を請求される可能性が高くなったり、他人に迷惑をかければ管理不行届でクレームが来たりする可能性も出てくるのです。

そういったことを避けるためにも、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任して、相続財産清算人が相続人の代わりに被相続人の財産管理・清算を行います。

通常、財産の管理は相続人・包括受遺者が行う

先程も述べた通り、通常、財産の管理は相続人もしくは包括受遺者が行います。

包括受遺者とは、「遺産の何分の1(ないし全部)を〇〇に与える」 というように、 遺産の全部またはその割合を指定し、 目的物を特定せずに行う遺贈を受けた者を指します。

つまり包括遺贈を受ける者のことを包括受遺者と言い、相続人と同一の権利義務を持っているのです。

しかし、相続人や包括受遺者がいない場合は、適切な財産管理を行うために相続財産清算人が必要となります。

相続財産清算人(相続財産管理人)が選任される2つのケース

相続財産清算人は必ずしも必要となるわけではありません。

選任されるケースは、具体的に次の2つです。

  1. 1相続人がいないケース
  2. 2相続人全員が相続放棄を選択したケース

ここでは相続財産清算人が選任されるケースについて、詳しく見てみましょう。

1:相続人がいないケース

相続財産清算人が選任される1つ目のケースが「相続人がいない」場合です。

包括受遺者がおらず、また、相続人がいるのか確認できない場合は、相続財産を管理する人がいないため、利害関係人や検察官の請求によって「相続財産清算人」が選任されます。

相続財産清算人を選任する必要があるものの、家庭裁判所に請求をしなければなりません。

併せて次の3つの要件を満たす必要があります。

  • 相続の開始
  • 遺産が存在すること
  • 相続人のあることが明らかでない場合であること

ただし、遺言があり遺言執行者が選任されている場合は、相続人がいないに関わらず相続財産清算人を選任する必要はありません。

※遺言執行者については、別記事「「遺言執行者」って何?引き受けたら辞任できる?」をご参照ください。

また、相続人自身が生死不明や所在不明の場合は、相続人は死亡したとは見られないので、相続財産清算人が選任されるための「相続人のあることが明らかでない」には該当しないことに注意しましょう。

また、戸籍上、相続人が存在しないが、相続人になる可能性がある者がいる場合(例:認知の訴え、協議離婚無効確認の訴え等)、どのように考えるべきか問題になりますが、実務上、相続財産清算人を選任したうえで、判決が確定するまで清算手続を申告しない処理を取るとされています。

2:相続人全員が相続放棄を選択したケース

相続財産清算人が選任される2つ目のケースが「相続人全員が相続放棄した」場合です。

相続人がいるものの相続人全員が相続放棄を選択した場合は、全員が相続人ではなくなるため相続財産を管理・清算する人がいなくなります。

そのような場合は相続債権者(被相続人にお金を貸していた人)が相続財産から弁済を受けることが難しくなります。

したがって、その役割を担う相続財産清算人が必要です。

ただし、相続放棄を選択したからといって、相続人がすぐに財産管理をする必要がなくなるわけではありません。

相続人全員が相続放棄を選択したとしても、相続財産清算人が管理を始めるまでは、最後に相続放棄を選択した相続人が財産の管理をする必要があります

具体的には、自己の財産と同じく相続財産の管理をしなければなりません。

これは民法940条1項に、次のように記載されています。

「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」

もし相続財産清算人が選任される前に適切な管理を行わずに財産を破損すれば、債権者から損害賠償を請求される可能性があります。

相続放棄をした=すぐに財産管理をする必要がなくなる、というわけではないため注意しましょう。

相続財産清算人(相続財産管理人)が選任されるまでの手続・流れ

相続財産清算人が選任されるまでの手続・流れは次のとおりです。

  1. 1利害関係人か検察官による申立て
  2. 2必要書類の提出
  3. 3家庭裁判所による審理・選任

1:利害関係人か検察官による申立て

相続財産清算人を家庭裁判所から選任してもらう必要がありますが、その際は「相続財産清算人選任審判」の申立てを行わなければなりません。

ここで、誰が申し立てるのかというと、「利害関係人」もしくは「検察官」です。

利害関係人とは、被相続人の債権者、特定遺贈の受遺者、特別縁故者などのことを指します。つまり相続人ではないものの、被相続人と法律上特別な関係にある人のことです。(内縁の妻もしくは医療看護をしてきた人も該当します。)

一方、検察官が申立てをする権利を持っているのは、稀に国が相続財産清算人を必要とする場合があるからです。

相続財産清算人を家庭裁判所から選任するためには、利害関係人もしくは検察官による申立てが必要である、と覚えておきましょう。

申立てを行わなければ相続財産清算人は選任できません。

2:必要書類を提出する

相続財産清算人の申立てを行うには、必要書類を提出する必要があります。

ここでは必要な書類を一覧にし、併せて必要な費用もご紹介します。

必要書類一覧

  • 申立書
  • 財産目録
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
  • 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
  • 被相続人の子どもおよびその代襲者で死亡している人がいる場合、その子どももしくはその代襲者の出生時から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
  • 被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
  • 代襲者としての甥姪で死亡している方がいる場合、その甥もしくは姪の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 財産目録記録の財産を証する資料(預貯金が分かる通帳や有価証券の残高がわかる書類、不動産登記事項証明書など)
  • 利害関係人からの申立ての場合は利害関係を証する資料(戸籍謄本や金銭消費賃借契約書き写しなど)

必要な費用

申立てに必要な費用は、申立書に貼る800円の収入印紙、連絡用の郵便切手、官報公告料などです。

連絡用の郵便切手は裁判所によって金額が異なるため、申立てを予定している裁判所に事前に確認をしましょう。予納金の納付を求められることもあります。

お金が思ったよりも足りなかったとならないように、少し多めに用意しておくことをおすすめします。

3:家庭裁判所による審理・選任

「利害関係人」もしくは「検察官」から相続財産清算人選定の申立てがなされると、家庭裁判所は相続財産を管理するのに最も適している人を「相続財産清算人」として選任します。

選任する際は被相続人との関係や利害関係の有無、相続財産の内容などを考慮します。

場合によっては弁護士や司法書士といった、清算に適格性を有する専門職の者が選ばれます。

申立人の利害関係が認められない場合や、相続財産清算人の選任が不必要となれば、申立てを却下することもあります。

相続財産清算人(相続財産管理人)への報酬

相続財産清算人を立てる場合、相続財産清算人への報酬が発生します。

相続財産清算人への報酬とは、具体的に「申立ての費用」と「予納金」の2つです。

ここでは相続財産清算人を選任するための費用について詳しく見てみましょう。

予納金とは

予納金とは、相続財産清算人の経費や報酬のために申立人が事前に納めるお金のことを指します。

相続財産清算人には相続財産の管理の他にも、債権者への支払いと諸経費が発生します。さらにこれらの作業を専門家へ依頼する場合の費用も発生するのです。

もし相続財産が少ない場合は、費用や報酬の不足が懸念されるため、予納金が必要となります(すべての事案において予納金が必要なわけではありません)。

予納金の金額は20万円〜100万円と言われており、とても幅広いものです。

事案によって裁判所が決めるため金額は一概にはいえません。

しかし、費用の清算と報酬の支払いをして予納金が余った場合は返金され、不必要に全て使われるということはないので安心してください。

予納金はしっかりと用意しておきましょう。

予納金は誰が支払うのか

予納金は申立人が納めることになります。

つまり相続人が申立人であれば相続人が支払い、特別縁故者が申立人であれば特別縁故者が予納金を支払うこととなります。

相続財産清算人(相続財産管理人)がもつ2つの権限

相続財産清算人の職務は、

  1. 1相続財産を調査し、把握する。
  2. 2相続財産を管理する。
  3. 3相続人の存否を確認する。
  4. 4相続人不存在が確定した場合には相続財産を清算する。
  5. 5残余財産を国庫に引き継ぐ。

ことにあります。

そして、相続財産清算人は、被相続人と同じ権限を持っているわけではありません。

相続財産清算人の役割は相続財産や相続人を調査し、借金があれば債権者に弁済して、清算することです。

相続財産を引き継ぐ者がいない場合は国に帰属させて、相続財産の管理・清算を行います。

相続財産清算人といえど、あくまで他人の財産を扱っているため、自分勝手に好きに使うことはできません。

もし好き勝手に使えばさまざまな不都合が発生してしまいます。

相続財産清算人は具体的には相続財産の管理・清算を行う権限があります。

他方で、相続財産を処分するためには、家庭裁判所の許可が必要となります。

この2つについて、以下、解説していきます。

1:保存行為・利用行為・改良行為

民法953条、28条、103条に基づき、相続財産の管理行為として、保存行為・利用行為・改良行為を行います。

主に行うのは、保存行為であり、財産の現状を維持するために必要な一切の行為が保存行為となります。

具体的には不動産の相続登記、建物の修繕工事、預金の払い戻し(をした後、相続財産清算人名義の口座での管理)などが該当します。

保存行為・利用行為、改良行為には家庭裁判所の許可は不要です。

そのため、相続財産清算人は単独の判断でこれらの行為を行うことができます。

ただし売却するといった財産の形を変える行為は次に紹介する処分行為に該当し、家庭裁判所の許可なく行えないため、注意しましょう

2:処分行為

「処分行為」とは、相続財産の形を変える行為のことを指します。

具体的には、不動産の売却、株式の売却、定期預金の満期前の解約、家具家電の処分などが該当します。

このような財産の形を変える行為、すなわち「処分行為」については家庭裁判所の許可が必要となり、自分の好きなように財産を扱うことはできません(具体的には、裁判所に対し「相続財産清算人の権限外行為許可」申立をします)。

したがって、亡くなった人のために購入する墓地や永代供養費の支出も、家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所が金額や内容を特定して、許可を出します。

仮に相続財産清算人が家庭裁判所の許可を受けずに処分行為を行うと、権利のない代理行為となります。

家庭裁判所の許可なしに処分行為を行うと、取引相手が不測の損害を被り、また、相続財産清算人自体が法的責任を問われることもあるので、注意しましょう

相続財産清算人(相続財産管理人)は法律上「相続財産法人の代表者」

相続財産清算人の法律上の地位は、「相続財産法人の代表者」と定められています。

債権者は相続人が不在の場合、相続財産清算人の選定や登記申請などの手続きを進める必要がありますが、その相手方は相続財産法人であり、管理人はその代表にしかすぎません。

訴訟が起きたとしても、当事者適格があるのは相続財産法人であり相続財産清算人個人ではないため、相続財産清算人個人を被告とした相続財産法人に対する判決は不適法となります。

また相続財産清算人の選定後に相続人が現れて、相続財産法人が成立しなかったとみなされた場合は、相続人の法定代理人になるものと解されています。

相続財産において第三者が訴訟をする場合は、相続財産清算人の選定の申立てをするべきであるものの、緊急の必要性によって管理人の選定を待てない場合は、特別代理人の選定が可能です。

特別代理人が選任された後に相続財産代理人が選任された場合は、両者の権限関係が問題となりますが、両者は役割や権限関係が異なります。

特別代理人はあくまで、訴訟行為、強制競売等を進めるために選任されるものであり、業務は訴訟行為、強制競売等に係る内容に限られます。

他方で、相続財産清算人は、特別代理人と異なり相続財産法人の法定代理人であり、代表者的な位置づけでもあり、相続財産全ての管理、清算を行う権限を有しています。

よくある質問

よくある質問① 相続財産管理人と相続財産清算人の違いは何ですか?

質問:

相続財産管理人と相続財産清算人の違いは何ですか?

回答:

相続財産管理人と相続財産清算人は、役割と権限がほぼ同じですが、主な違いは「清算」の職務にあります。

相続財産管理人:相続財産の「保存」に特化。

相続財産清算人:相続財産の「保存」に加えて、「清算」も担当。

具体的には、相続財産清算人は以下の業務を行います。

①相続人・債権者への調査・公告

②財産目録の作成

③債権者への弁済

④遺産分割協議の進行

⑤不動産の売却

⑥税金の申告・納付

⑦残余財産の分配

相続財産管理人と相続財産清算人の選任

  • 相続人全員が協議で選任
  • 家庭裁判所への申立て

どちらを選任するべきか

  • 相続人の間で争いがなく、財産の管理のみが必要であれば、相続財産管理人を選任します。
  • 相続人の間で争いがある場合や、財産の清算が必要であれば、相続財産清算人を選任します。

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本記事では、相続財産清算人が選定されるケースや報酬、権限などについてご紹介しました。

相続関係はトラブルが多いためなるべく関わりたくなく、相続放棄を選ぶ相続人の方も多いでしょう。

仮に全員が相続放棄を選択し相続人全員が財産管理を放棄した場合、財産管理を行う人はいなくなります。しかし相続財産清算人を選任することで財産管理・清算を代わりに行ってもらうことが可能です。

相続財産清算人には限られた権限しかないものの、相続人が遠方に住んでいて適切な管理が難しい場合や、相続人が明らかでない場合などに有効な手段です。費用はかかるものの、自分で管理するのは難しい方に最適な方法となっています。

もし相続財産清算人を選任する上で不安がある方や、疑問がある方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。専門知識を持ったプロの弁護士がサポートします。

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