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火災保険の不正請求とは?3つのケースと、注意すべき悪徳業者についても解説

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投稿日:2022年07月06日 | 
最終更新日:2023年10月17日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
家が全焼したので火災保険金の請求をしましたが、「故意、又は、重過失がある」として保険金の支払いを受けられませんでした。
不正請求一般について、教えてください。
Answer
火災保険の不正請求は、法的に保険会社に保険金の支払義務が存在しないにもかかわらず、保険金支払請求をすることです。
意図的に不正請求をしてしまった場合、保険会社から損害賠償を請求される可能性があります。

契約者や被保険者、またはその同居親族等の故意、もしくは重大な過失があるケースでは、火災保険で補償されることはありません。

火災保険の不正請求とは

火災保険の不正請求とは、どのようなものなのでしょうか。

本項目では、「不正請求」の意味、「不正請求」と「水増し請求」の違いを紹介します。

不正請求とは

「不正請求」とは、「あたかも保険金支払義務があるように見せかけて、火災保険を請求すること」です。故意による建物や家財の被害を、地震や台風など自然災害で起きたものと見せかけるケースもあります。

水増し請求との違い

「水増し請求」は「被害金額を不当に上乗せして、火災保険を請求すること」です。

保険金額を不当に増やすために水増し請求をすることは認められません。

虚偽の申告をすることには、以下のようなデメリットがあります。

  • 保険会社において、ブラックリスト入りされる
  • 保険会社において、水増し請求のデータを記録される

また、依頼した火災保険請求サポート会社が悪徳業者であった場合、不正請求を疑われ、保険金を受け取れないケースもあります。

保険金を受け取れないだけではなく、保険会社は依頼者を「悪徳業者と契約した要注意人物」として扱います。

そのため、火災保険の保険金支払審査に落ちやすくなるという長期的なデメリットも存在します。

火災保険の不正請求をするとどうなるのか

意図的に火災保険の不正請求をすると、保険会社から損害賠償請求等を理由に訴えられる可能性があります。

もし裁判で負けると、賠償金を支払わねばならない事態になることもあるでしょう。

たとえ故意に火災保険の不正請求をするつもりはなかったとしても、火災保険申請サポート会社が虚偽申告をしているケースもあります。

このようなケースでは、依頼者は悪くないにもかかわらず、 保険会社からの印象が悪くなってしまうのです。相見積もりや口コミを調べて、安心できる火災保険サポート会社を見つけることが重要です。

相見積もりをする際にも、注意が必要です。

口コミがサクラである場合もあるため、口コミは参考程度にして、依頼前に火災保険サポート会社の担当者と対面で話すことをおすすめします。

不正請求の3つの主なケース

火災保険の不正請求には、主に以下のような3つのケースがあります。

  1. 1契約者自身が、意図的に経年劣化による損害を自然災害と偽るケース
  2. 2契約者自身が、故意による損害を自然災害と偽るケース
  3. 3業者の勧誘に乗り、保険金詐欺に加担するケース

それぞれ、実際の不正請求事例をもとにご紹介します。

①契約者自身が、経年劣化による損害を自然災害と偽るケース

不正請求のケース1つ目は、「契約者が、意図的に経年劣化による被害を自然災害によるものと偽るケース」です。

前章でも紹介しましたが、経年劣化による被害は火災保険で補償されません。したがって、経年劣化による被害であることを知って、自然災害によるものと偽り、火災保険を請求することは認められません。

プロの調査員が派遣されることもあるため、経年劣化箇所を意図的に申請することはやめましょう。

②契約者自身が、故意による損害を自然災害と偽るケース

不正請求のケース2つ目が「契約者が、故意による損害を自然災害と偽るケース」です。

火災保険では、故意・重大な過失などによって発生した損害は補償されません。

「故意」の破損や汚損とは、例えば以下のようなケースです。

  • イライラして壁を蹴り、壁に穴が開いた
  • 買い換えたい家具があるので、意図的に故障させた
  • 傷が付くと理解していたにもかかわらず、椅子を引きずり床に傷を付けた

③業者の勧誘に乗り保険金詐欺に加担するケース

最初は不正請求するつもりはなくても、悪徳業者の勧誘によって保険金詐欺へ加担するケースもあります。

ある40歳男性のケースでは、ネットサーフィン中に「火災保険の請求に関するサポートをしています」という悪徳業者のサイトを見つけて、問い合わせをしました。

悪徳業者が自宅を訪問して自宅の雨どいやベランダを自ら壊したうえで、「火災保険で雨どいやベランダの手すりを直せる。火災保険の申請サポートをする代わりに、保険金の30%を支払ってほしい。」と言われて契約しました。

このような悪徳業者にひっかかると、保険金を支払ってもらえないうえに、壊れた個所を自らの費用で修理しなければならないので注意してください。

故意に自然災害とウソをついて保険会社に請求する悪徳業者もいるので、怪しいと思った場合は安易に契約書にサインをせずに、弁護士事務所や一度消費生活センター、日本損害保険協会などに相談することをおすすめします。

不正請求が横行している理由

不正請求が横行している理由は、主に以下のようなものがあります。

  1. 1火災保険に対する知識不足
  2. 2大震災時に不正請求が成功した
  3. 3損保各社が情報を共有していない

それぞれ解説していきます。

①火災保険に対する知識不足

不正請求が横行している最も大きな理由は、消費者の「火災保険に対する知識不足」です。

みなさんの中にも、火災保険と聞くと「火災時のみの保険」というイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか。

火災保険に関する知識が乏しい方は、火災以外に自然災害や盗難、水災、破損・汚損等も補償されることを知らない場合が多いです。そうした方々は悪徳業者のターゲットになりやすい傾向があり、「火災保険で保険金がもらえるので、お得です」と話を持ちかけられて不正請求をしてしまう、ということがあります。

火災保険を利用するときは、最低限の保険知識を身につけてから契約をしましょう。

②大震災時に不正請求が成功した

不正請求が横行している理由の2つ目は、大震災の際に不正請求が成功した例が多いからです。2011年3月11日に起きた東日本大震災のとき、保険会社は多忙により申請のチェックが甘い状態となりました。

そのため悪徳業者は不正請求がしやすくなり、横行してしまう契機になったのです。

また自然災害による被害は、1ヶ月をすぎると劣化します。そのため、以前は事故通知は1ヶ月以内となっていましたが、現在は3年以内の請求でいいので、被害の時期がわかりにくく不正請求の横行につながっています(ただし、事故通知は発見した後、速やかにしなければなりません)。

③損保各社が情報を共有していない

不正請求が横行している理由の3つ目は、損保各社が情報を共有していないからです。

自動車保険の場合、加入者の情報は各社で共有されているため、事故の履歴がある人はどこの保険を利用しても、その履歴に応じた等級で契約することになります。

しかし火災保険の場合、こうした情報共有の仕組みが存在しないため、会社を変えれば不正請求を行いやすい状態になっているのです。

不正請求が発生する流れ

火災保険の不正請求が発生する流れの一例を挙げますと、以下のとおりです。

  1. 1悪徳業者による訪問・電話による勧誘
  2. 2「無料です」や「保険金請求をサポートします」などと、あまい言葉で勧誘
  3. 3悪徳業者が、ウソの現地調査の実施や見積書を作成する
  4. 4消費者が自身で保険金の請求をする

このような悪徳業者の被害に合わないためにも、火災保険の不正請求の流れを理解し、いち早く違和感を感じとれるようにしておきましょう。

注意すべき悪徳業者の特徴

火災保険の不正請求をする悪徳業者の特徴は、以下のとおりです。

  1. 1火災保険申請サポート会社として交渉も行うと広告している
  2. 2「工事費無料」など、あまい言葉で勧誘している
  3. 3屋根や雨どいを壊して、自然災害の被害にする

それぞれの項目を解説していきます。

①火災保険申請サポート会社として交渉も行うと広告している

注意すべき悪徳業者の特徴は「火災保険申請サポート会社を名乗り、交渉も行うことを広告していること」です。

もちろん、火災保険申請サポート会社=詐欺ではありませんが、交渉は弁護士にのみ認められている行為ですので(弁護士法72条)、交渉も行うことをサービスに掲げている事業者は違法行為を行うことを自認しているものです。そのため、消費者生活センターには、年間1,000件以上の火災保険詐欺に関する相談が寄せられています。

火災保険申請サポート会社から勧誘されたら、口コミなどの精査や、専門家への相談を行いましょう。

②調査・工事費無料などあまい言葉で勧誘する業者

注意すべき火災保険会社の特徴の2つ目は、「調査・工事費無料」などの甘い言葉で勧誘することです。

自宅のポストに「屋根の調査費無料」や「工事費無料」などのチラシが入れられた方もいるのではないでしょうか。これらのチラシを投函する会社は、悪徳業者である可能性があるでしょう。 他にも「建物の修繕が必要なので、無料で調査させてください」と訪問し、「すぐに修理しないと大変である」というように不安を煽るパターンも存在します。

まとめると、「無料」をうたい文句に提案する火災保険申請サポート会社は、悪徳業者の可能性が高いので注意してください。

③保険金の請求と工事費用がセットの業者

注意すべき悪徳業者の特徴の3つ目は「保険金の請求と工事費用がセットの業者」です。

保険金の請求と工事費用がセットの場合、手数料が二重に取れるので、悪徳業者が稼ぎやすいのです。業者は火災保険を利用した工事を契約することで、保険金の15%程度を成功報酬として受け取ることができます。

ただし、受け取った保険金の使い道は、本来依頼主が決めることができます。それにもかかわらず、保険金の使い道を限定し、保険金で修理費用を支払わせようとしているのです。

保険会社のホームページや専門家が書いた記事等を読んで、正しい知識を身につけることが重要です。

まとめ

①火災保険の不正請求とは保険会社に保険金支払義務がないにもかかわらず、「保険金支払義務があるように見せかけて、保険金をだまし取ること」

②火災保険の不正請求をすると、保険会社においてブラックリスト入りしてしまう他、訴訟提起をされるリスクがあること

③調査や工事費無料等とうたう火災保険申請サポート会社は、違法行為を行わないかしっかりとチェックすること

火災保険の不正請求をすると、今後の保険金を受け取ることができないなどデメリットがあります。

それでも、短期的には保険会社の目をかいくぐることもできるかもしれません。

長期的に考えると悪徳業者の片棒を担いでしまい、保険会社から「悪徳業者に関与している人」とみなされてしまいます。

しっかりとあなたの権利を守ってくれる専門家を探して、安全に保険金を受け取りましょう。

火災保険の加入状況や必要性については、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。

参考:火災保険に加入している人は約7割。未加入者の半数は、災害に備える必要性を感じている

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