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弁護士コラム
火災保険契約の通知義務とは?
- その他
- 投稿日:2022年02月28日 |
最終更新日:2023年07月03日
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
- Q
- 火災保険の通知義務とは何ですか。
- 保険契約の締結後に保険契約の内容に変更が生じ、それが通知すべき事項に該当する場合に、保険契約者または被保険者が遅滞なく保険会社に変更内容を通知しなければならない義務のことをいいます。
通知すべき事項
通知すべき事項(通知事項)は保険事故による損害が発生したこと(保険法14条参照「その旨」)だけではありません。その他の通知事項は、保険契約の申込書や約款に明示されていることが多く、告知事項※1のうち、保険事故発生の危険性判断に利用される事項である場合が多いです。
なぜなら、保険料※2は保険事故発生の危険性に見合うように設定されるため、この危険性に関する事項を保険会社は正確に把握する必要があるからです。
例えば、契約締結時に住宅として使用していた建物を飲食店として使用する場合や、リフォームによりコンクリート建築から木材建築に変更した場合などが通知事項に当たります。
このような事項について通知義務が課されているのは、危険の判断材料となる情報は保険契約者・被保険者※3側に存在することが多く、保険会社側で把握することが困難であるからです。
※1告知事項については「Q:火災保険を契約する際の告示事項とは?」の記事をご参照ください。 ※2保険料は、お客様側が保険会社に支払うもので、保険金は保険会社からお客様に支払われるものです。 ※3保険契約者とは、保険契約を締結した人で、保険料を支払う人を指します(保険法2条3号参照)。被保険者は、保険金を受け取る人を指します(保険法2条4号イ参照)。必ずしも両者は同じではありませんが、同一人であることが一般的です。また、 両者は個人に限定されず、法人でもなることが可能です。 |
通知に伴う義務
上記の通り、通知事項に該当する事実を知ったときは、保険契約者(被保険者)は保険会社にその事実を通知する義務を負います。もっとも、実際にはこれだけではなく、保険会社側が保険事故の状況を正確に把握するために通知義務以外にも約款により保険契約者(被保険者)に損害や事故状況についての説明義務が課され、保険会社が求める追加書類等の提出義務や保険会社の行う保険事故の調査に協力する義務も課せられている場合が多いです。
通知義務に違反した場合
故意または重大な過失によって遅滞なく上記1の通知事項の通知を行わなかった場合には、契約が解除され、保険金が支払われない場合があります。
また、通知はしたものの、事実とは異なる内容を通知した場合には、保険会社が保険金の支払いを免れることもあり得ます。事実とは異なる内容を通知した場合において、保険会社が保険金の支払いを免れるのかについて判断した最高裁の判例はありませんが、他の判例(大阪地判平15・10・3ジュリ1304号181頁〜183頁)をみるに、保険契約者(被保険者)が通知の内容が事実とは異なる内容であることを知っていることだけでは足りず、保険金を騙取・詐取しようとする意図や過大な保険金を取得しようとする意図など、積極的な主観的意思が保険契約者(被保険者)ある場合に保険会社の保険金支払い義務が免責される傾向にあるといえます。
そして、事実と異なる内容の通知が保険対象の一部についてのものであったとしても、契約の一体性が認められる限り、保険金全体の支払を拒絶できるとした判例(仙台地判平20・10・9公刊物未登録)がある点にも注意が必要です。この判例では、建物、商品・製品等及び設備・什器等を保険対象とする契約を締結していましたが、商品・製品等及び設備・什器等に関して事実と異なる通知を行なったため、建物に関する保険金を含めた保険金全体の支払いを拒絶されました。
建物と商品・製品等及び設備・什器等は別物で、商品・製品等及び設備・什器等は保険対象の一部に過ぎませんが、これらは建物内に存在するものであるから密接な関係にあるといえ、同一機会に同一の契約書によって契約されたことからも契約として一体と判断されています。
そのため、保険対象の一部に関して事実と異なる通知を行なったとしても、他の保険対象との一体性が認められれば、他の保険対象も含めて保険金が全て支払われなくなる可能性があるということです。
また、保険事故の発生後に正当な理由なく遅滞して通知した場合には、保険会社は遅滞により調査費用の増加など損害を被ることがありますので、契約の解除や保険金の支払いの免責がない場合でも、保険金の支払額からその損害分を差し引くことで保険金が減額されることもあります。
まとめ
以上のように、通知義務に違反しますと、契約の解除や支払いの免責により保険金を得られなくなることや保険金が減額されることがあり得ますので、保険内容に変更が生じた場合には、通知事項を確認の上、遅滞なく正確に保険会社に通知するようにしてください。
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