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落雷に保険事故が適用できるのか?適用の条件から保険金の受け取り方まで解説

保険事故 火災保険
投稿日:2022年03月28日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
落雷が自宅屋根に落ちて、屋根が焦げてしまうという事故がありました。
この場合、火災保険で補償されるのでしょうか?
Answer
補償の対象を「建物」としていれば補償される可能性があります。
火災保険では、保険の対象を何にするかによって雷の被害に遭った場合に補償される内容が異なります。

「落雷」損害補償の中身と対象

落雷と聞くと滅多に起きない事故のため、あまり気にしていないという方は多いのではないでしょうか。
しかし、気象庁の統計によると2012年から2017年の間に落雷の被害は1540件報告されており、また、これらの期間の8月には468件もの被害が報告されていることからすると、被害にあうことはないと決めつけるのは難しいように思います。

落雷による直接的な被害は、建物の中や乗り物に乗っていれば受けないですみますが、電信柱などに落雷が起きた場合、電線から家と落雷による電流が流れ込んだ結果、コンセントにつながれた家電製品に電流が流れ壊れてしまう被害もあります。
火災保険は火災によって発生した損害を補償するのが主な内容ですが、その補償対象となる保険事故には落雷による火災や、落雷の結果生じた過電流による家電製品への損傷なども保険の対象となります。

そのため、落雷による被害は火災保険によって補償の可能なケースがあります。
本記事では落雷被害に関する火災保険の補償内容や保険金の受け取り方まで解説します。

対象が「建物」の場合

落雷による被害を火災保険で補償しようとした場合、落雷による被害がどのような物件に生じたかにより火災保険による補償がされる場合とされない場合があります。

落雷による被害が建物に生じた場合としては次のような例が考えられます。

  • 落雷によって火事が起き家が燃えてしまった場合
  • 屋根に雷が落ちて屋根に穴が開いてしまった場合

このような例が考えられますが、これらのケースは建物に被害があったとして火災保険の補償の対象になります。
この他にも建物として、隣接している物置やカーポート、家の畳や床なども建物として火災保険の補償の対象となります。
建物に損害が生じた場合には、一般的な火災保険は建物を補償対象にしているため、こうした損害の場合には次で紹介する家財の場合と異なり、特に問題なく火災保険の対象となります。

対象が「家財」の場合

落雷によって生じた被害が家電製品や家具等に生じるケースがあります。
こうしたものについて生じた損害も火災保険の補償対象になるのでしょうか。

火災保険の補償対象となり得る家財とは、建物に収容されている家財一式のことをいいます。
具体的な例としては、家の中にある家電製品や家具などがこれに該当します。

落雷による家財への被害としては次のような例が考えられます。

  • 家から離れた位置にある電柱に落雷し雷サージが起きた結果、パソコンが壊れてしまった。
  • 建物に雷が落ちて火災が起き家具や家電製品が燃えてしまった。

以上のようなケースが考えられます。
なお、雷サージとは、電線などに雷が落ちることで短時間に異常な過電流や過電圧が発生する現象のことをいいます。
雷の電流は非常に大きいため、電線などに落雷が起きた場合には非常に大きな雷サージ電流が流れて建物や建物設備に大きな被害を与えます。
また、雷サージが起きると近くの電線に落雷した場合だけでなく、電線を通じて建物内の電気機器へ電流が侵入するため、離れた位置の落雷であっても被害を受ける可能性がある点に注意が必要です。

家財への被害で注意が必要なのは火災保険の対象に必ずしも家財が含まれていない場合があるということです。
火災保険が仮に建物だけを対象にしている場合には、先ほどのような例の事故が起きても火災保険では補償されません。
加入している火災保険が何を補償の対象にしているのかについては確認をしておきましょう。

落雷被害で火災保険を利用する際の注意点

落雷による被害で火災保険を利用する際の注意点としては以下の点が挙げられます。

被害が起きた物件は家財なのか建物なのか

先ほどもご説明したように、火災保険は保険対象に事故が起きた場合にその損害を補償する保険です。
そのため、火災保険の対象になっていない物件に事故が起きても火災保険で補償はされません。
多くの場合、建物は火災保険の対象になっていますが、中には家財だけを対象としているケースもあるため、事故が生じた物が火災保険において建物として扱われているのかそれとも家財と扱われているのかにより補償対象になるかどうか結論が変わるため重要です。
よく家財と勘違いしやすいものとしては、エアコンや室外機、照明設備や給湯器などは家電製品として家財にあたりそうにも見えますが建物と一体のものとして扱われます。

その他にも賃貸物件などに見られるビルトインの設備(家具や食器洗浄機、オーブンなど)についても建物と一体の物として建物と取り扱われます。

同じようなものでも賃貸物件に自分で取り付けた家電製品等は家財として取り扱われます。
このように家財に当たるか建物に当たるかは判断が付きにくいため、可能な限り建物と家財の両方をカバーできるように火災保険に加入するのが最もリスクを抑えることができるといえます。

パソコンのデータに注意

パソコンは家財として取り扱われますが、火災保険はあくまでも修理費用や購入費用を補償するものであり、中にあるデータについての補償はされません。
そのため、ハードディスク内に保存されたデータについては失われてしまうと戻ってきません。
こまめにクラウド上に保管したり、携帯電話とデータ共有をしたりしておくなど火災に限らずパソコンが壊れた時に備えてデータを保管しておく様にすると良いでしょう。

悪徳業者や詐欺業者に注意

建物やその一部が落雷で壊れた場合、火災保険でカバーできるからといって必要の無い修理まで行い、高額な修理費用を請求してくる修理業者がいます。
火災保険で補償されるのはあくまでも落雷やこれを原因とした火災などによって発生した損害です。
無関係な箇所について修理を行い、こうしたものも含めて保険金の請求を行う行為は詐欺罪に問われる可能性があります。
また、保険会社にバレてしまい、保険金の支払いが受けられなくなった結果、自費で修理費用を払うことになってしまうケースも考えられます。
保険金で支払われるからといって、頼んでもいない箇所の修理を行おうとするような業者は早めに断るようにしましょう。

保険が適用できない事例

落雷による被害を受けたからといって常に火災保険が適用される訳ではありません。
雷による被害があったとしても次のようなケースでは保険の適用はなく、火災保険の保険金は請求できません。

経年劣化によって壊れたと判断されたケース

火災保険の対象になるのは落雷によって生じた事故です。
そのため、それとは無関係に発生した経年劣化によって壊れたと判断された場合には火災保険の対象にはなりません。

家に雷が落ちたようなケースであれば、原因が落雷であることが明確になりやすいのですが、これに対して雷サージが生じた様なケースでは落雷があった地点と事故が発生している地点が離れているため、落雷が原因なのかそれとも経年劣化で壊れたのか分りにくくなります。

雷サージを疑う場合には気象庁のホームページなどで落雷が地域で発生していないかなどを確認しておき、保険金請求をする際に証拠として残しておきましょう。

保険金請求まで3年を経過した場合

火災保険の保険金請求は保険事故から3年以内と限定されています。
そのため、3年を過ぎた保険事故について保険金請求を行っても火災保険の対象から外れてしまうため、保険金は得られません。

火災保険の保険手続きは事故後すぐに行うように注意しましょう。

自動車に被害が起きた場合

自動車へ落雷が起きたことによって自動車が損傷した場合には、火災保険の保険の対象にはなりません。
この場合には火災保険ではなく、自動車保険でカバーする必要があります。

送電施設に落雷があった場合

雷サージの例と似ていますが、落雷があった場所が送電施設の場合には、送電施設からの電圧に異常などが生じた結果保険対象に損害が生じるケースがあります。
しかし、このような場合には落雷によって直接生じた事故ではないため補償対象外となります。

故意や過失で損傷させた場合

当然ですがこうした場合には火災保険の補償対象とはなりません。
火災保険は不慮の事故など被保険者に帰責事由のない事情で生じた損害を補填することを想定したものです。
そのため、このようなケースでは保険の適用はありません。

なお、故意に破損させたものについて落雷などの保険事故による破損として保険金を請求する行為は典型的な保険金詐欺に該当します。請求するだけで詐欺罪として問われる可能性もあるため、十分注意しましょう。

修理費用などが免責金額を下回る場合

詳細は後ほど解説しますが火災保険の保険金は免責金額と呼ばれる保険金の対象外となる金額が設定されている場合があります。

こうした免責金額を修理費用などが下回っている場合には、落雷によって損害が生じた場合でも保険金の支払いはされません。

落雷で支払われる補償金額

落雷で物件が損傷した場合には具体的にどういった金額が補償金額となるのでしょうか。

補償金額の計算方法

火災保険の補償金額は、損害額から免責金額を差し引いた金額が実際に支払われる補償金額となります。

免責金額とは?

免責金額とは、保険会社を保険事故の保険金支払い義務から免責する金額のことを言います。
つまり、免責金額については保険金は支払われず、自己負担することになります。
この免責金額は火災保険の契約時に決定することとなっており、一般的に免責金額が高くなればなるほど、保険料が安くなる傾向にあります。
つまり、保険料を抑えるとその分実際に保険事故が起きた場合に補償される範囲が狭くなると言うことになるのです。

免責金額の決定方法

このように保険金の金額を決定する上で重要な免責金額はどのように決定されるのでしょうか。

免責金額の決定方法はいくつかありますが、主な方法にフランチャイズ方式と免責方式の2つの方法があります。
フランチャイズ方式は予め定められた一定の金額まではすべて自己負担となりますが、それを超えた金額はすべて保険金になる方式です。
他方で免責方式は、損害額から自己負担額を除いた金額のみが保険金として支払われるという方式となります。
両者の違いは、免責金額を超えた部分のみが保険金の支払い対象になる(免責方式)か超えたら全て支払いの対象になる(フランチャイズ方式)かの違いと言えます。

免責金額と保険金額の具体例

分りにくいので、具体的な例で考えてみましょう。
落雷による雷サージが発生しパソコンが破損し、20万円の修理費用がかかったケースを想定します。

この場合免責金額が10万円と設定されているとすると、フランチャイズ方式では免責金額(10万円)を損害額(20万円)が上回っています。そのため20万円全額が保険金の補償対象になります。
これに対して免責方式では免責金額10万円を上回る10万円が保険金として補償されることになります。

免責方式はどのように決定すれば良い?

では、免責金額を決定する際にはフランチャイズ方式と免責方式はどちらのほうが免責金額を設定する際にお得なのでしょうか。
補償金額だけを見ると免責金額を超えれば全額が補償対象となるフランチャイズ方式の方が有利なようにも思われます。

しかし、一般的には補償範囲が広くなればなるほど保険料は高くなる傾向にあります。また、免責金額自体は契約時に自分で選べる保険もあるため、例えば免責金額を0円にできる保険に加入すれば、免責方式はどちらであっても変わりないという結論になります。
重要なのは保険事故が起きた際に生じる損害を予想し、高額な修理費用などが発生しにくいと考えるか、それとも高額な費用が発生することが想定されるため十分に補償を設定すべきか、ご自身の財産や建物・家財の状態に応じて適切な金額を設定することが重要です。

落雷の保険申請の仕方

では、実際に建物や家電製品が落雷で壊れた場合にはどういった手続きを踏むことで修理費用を請求することになるのでしょうか。ここでは保険金請求の手続きの流れについて解説します。
なお、これらの前に保険金請求の原因となる破損の状況について携帯電話を利用して写真を撮影し証拠を残しておくのも重要で

①保険会社への連絡

まずは保険会社に連絡です。保険会社に連絡して保険金請求の手続きを開始しないと保険金は支払われません。
保険会社に連絡すると以下の点について確認されるので、事前に確認しておきましょう。

  • 契約者の氏名
  • 被害の日時・場所・状況
  • 被害の状況・原因
  • 保険証券の番号

②必要書類を提出する

保険会社の連絡先については保険証書に記載があります。
また、保険会社のHP上に連絡先が掲載されている場合や受付用のフォームを用意している会社があります。
これらから保険会社にコンタクトを図ると、保険会社の方からレスポンスがあります。
まずはそれを待ちましょう。なお、保険証書をなくした場合でも保険金請求の手続きは可能なので、保険会社へ問い合わせてみましょう。

  • 保険金請求書
  • 被害を受けた物件の写真
  • 修理業者の見積書

以上に加えて、被害の程度が大きく、請求金額が大きくなるケースでは印鑑証明書が必要になる場合もあります。
準備に相応に時間が必要になるため、スムーズに保険金の支払いを受けるためにあらかじめ準備しておくことが望ましいでしょう。
保険会社に連絡する際に必要となる書類をあらかじめ聞いておき、準備するのがおすすめです。

③現場調査

ここでの現地調査とは、保険会社から派遣される鑑定人が行う調査です。
鑑定人は被害状況や損害の程度を調査し、行われた保険金請求が正しい申請になっているかどうかを鑑定人が確認します。
保険会社から鑑定人が派遣される場合もされない場合もありますが、高額の保険金の支払いなどのケースでは特に申請が正しくされているかを確認する必要があるため、鑑定人が調査を行うケースが多いようです。

なお、鑑定人は保険会社の社員ではなく外部の人間に保険会社が調査を委託して行っている場合が多いため、保険会社に有利なことしか言わないのではという不安を必ずしも抱く必要はありません。ただし、この調査も必ずしも正確でない場合も多いのが実態です。

④保険金受け取り・修理

現地調査完了後は調査結果と提出書類をもとに保険金を決定し口座へ振り込みます。
振込先の口座はあらかじめ指定された口座になります。

まとめ

落雷による被害が建物や家財に生じた場合には火災保険が利用できる場合があります。
本記事を参考に火災保険を利用し、落雷からの被害の回復をし、平穏な日常を取り戻しましょう。

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