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弁護士コラム

水漏れは保険事故になるのか?適用の条件と申請までの具体的な流れ

保険事故 火災保険
投稿日:2022年03月24日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
マンションの上の階から漏水が発生し、私の部屋の洋服がびしょ濡れになりました。
私が加入している火災保険で補償されますか?
Answer
可能な場合があります。
しかし原因や事故が起こった場所によって、どの保険で補償を受けられるかが変わります。
また、基本的にはまずは上の階の方に損害を受けた部分の賠償をしてもらうことになるためそちらも確認が必要です。

「水濡れの原因別」の補償

水漏れ(ぬれ)事故という言葉を耳にしたことのある方は多いでしょうが、水濡れ(ぬれ)事故という言葉はあまり耳なじみの無い方が多いのではないでしょうか。
水濡れ事故というのは、様々な要因で家財や建物の一部が水に濡れた事により被害が発生するような事故のことを言います。

具体例としては以下の様な事例が水濡れ事故の例として挙げられます。

  • 水道管が破裂して部屋の中が水浸しになり、パソコンが水に濡れて壊れてしまった。
  • 上階の部屋からあふれてきた水が天井や壁紙を濡らしてしまい、張り替えなくてはいけなくなった
  • 隣の家で火事が起きて消火活動が行われた結果、放水の水圧で窓ガラスが割れてしまった

その他にも考えられますが、水に濡れると使えなくなるものや壊れるものというのは家や建物の中にはたくさん存在します。
こうした物等が水に濡れることによって事故が生じてしまうのが水濡れ事故です。

この水濡れ事故は、発生した原因や事故が起きた場所によって、損害を補償する保険や補償の対象となるかが異なります。

そこで、まずは原因別に起こった水濡れ事故が補償の対象となるかについて解説していきます。

原因が「自分」の場合

水濡れ事故の原因が自分にあるケースでは保険による補償はされるのでしょうか。
自分が原因となって発生する水濡れ事故としては以下の様なケースが考えられます。

  • お風呂の浴槽にお湯をためるために蛇口をひねって水を出していたが、それを忘れて外出してしまい、帰ったらあふれた水が階下の部屋の家電を濡らしてしまった
  • 洗濯機のホースが外れているのを確認しないで、洗濯機で洗濯をしようと水を出していたらあふれてしまい、賃貸している部屋の床を水浸しにしてしまった

この他にも考えられますが、いずれのケースも共通するのは自分自身の不注意、いわゆる過失によって損害を発生させている点がポイントとなります。

法律上、自分自身の過失により他人の財産に損害を発生させたケースでは不法行為責任や債務不履行責任が成立するため、1つめのケースでは階下の住人の方に、2つめのケースでは大家の方へ損害賠償責任を負うことになります。

こうした自分自身が賠償責任を負うケースで使える保険としては個人賠償責任保険が使える可能性があります。
この個人賠償責任保険は、日常生活で他人の財産に損害を発生させたようなケースで、被保険者が負う賠償責任について補償する保険です。

この個人賠償責任保険は、火災保険や自動車保険などとセットで契約することができるため、こういったケースではご自身が加入している火災保険や自動車保険に個人賠償責任保険が付いていないかを確認すると良いでしょう。

また、2つめのケースのように賃貸している部屋を水濡れさせてしまったような場合には、賃貸借契約を締結する際に火災保険に加入しているケースが多いため、こうした火災保険にセットされている借家人賠償責任保険で補償できる場合があります。

この場合には大家さんや不動産管理会社に問い合わせてみると良いでしょう。

原因が「他人」の場合

先ほどの例と逆に、他人の不注意や過失などにより、こちらが損害を受けた場合にはどのようになるのでしょうか。

先ほどと逆のパターンのため、原因を発生させた人に対して損害賠償請求が可能となります。

そのため、水濡れによって壊れた電気製品等を損害として賠償請求が可能となります。
そのため、原因を発生させた人の個人賠償責任保険等によって家電を買い換える費用等の補償を受けることになります。

この場合に注意が必要なのが、こうした場合の賠償は家電を買い替える費用ではなく、壊れた当時の家電の時価が賠償の対象となる点です。
そのため、購入から年数が経過している場合には十分な補償が受けられない可能性があります。

こうした場合にはご自身で加入している火災保険などで補償されないか確認してみると良いでしょう。

原因が「配管」(損傷・故障)の場合

マンションなどに住んでいる場合、配管が損傷し部屋の中が水浸しになってしまったというケースや部屋にあった家電製品が壊れてしまったというケースがあります。

こうした場合には損傷した配管の場所によって補償をする保険が変わる場合があります。
というのも、マンションには共有部分と専有部分があり、専有部分はマンションの所有者の施設となり、共有部分はマンション組合の管理下にあることが多くなっています。

そのため、専有部分内に壊れた箇所があった場合にはマンションの所有者自身の負担となる場合が多く、その場合には所有者が加入している火災保険などによって補償を受けることになります。

共有部分の場合には、マンション組合が契約している賠償責任保険により賠償されることになります。

このように原因となった配管の位置によって結論が全く異なる点に注意が必要です。

水濡れの補償を受けられる保険

では、水濡れ事故が起きた場合に補償が受けられる保険にはどのようなものがあるのでしょうか。
水濡れ事故の場合に補償を受ける保険としては①火災保険②個人賠償責任保険③水災補償の3つが考えられます。

以下ではそれぞれの保険について解説します。

火災保険

火災保険は火災から発生した損害を補償するものと考えている方は多いと思いますが、火災保険の補償は火災だけではありません。

一般的な火災保険は火災のほか、水災や風災といった地震を除く天災も補償対象としています。

また、加入している火災保険の種類や契約内容にもよりますが、住宅総合保険に加入している場合には火災・水災・風災などの他にも水濡れや盗難なども補償の対象となります。

注意が必要なのは、一般的な火災保険では水災(集中豪雨、川の氾濫、洪水など)は対象になっていますが、こうした水災以外から生じた水濡れは住宅総合保険に加入していない場合には補償対象とならない可能性があるので注意しましょう。

水災と水濡れは別ものであるという点を押えておきましょう。

個人賠償責任保険

個人賠償責任保険は先ほど少しご説明した通り、日常生活で他人の財産に損害を発生させたようなケースで、被保険者が負う賠償責任について補償する保険のことです。
火災保険はあくまでも被保険者の財産等に保険事故が起きた場合にその損害を補償するものですが、これに対して個人賠償責任保険は、他人の財産等に損害を発生させた場合に補償するものになります。

この個人賠償責任保険は火災保険や自動車保険に付帯できるほか、クレジットカードにもセットで契約されている場合があります。
他人の財産に損害を与えてしまった場合にはご自身の加入している保険やクレジットカードの契約などを確認し、個人賠償責任保険が付いていないか確認してみましょう。

水災補償

水災補償は火災保険の付帯として契約されるもので、洪水や高潮のような水災で一定以上の損害を負った場合に保険金が支払われるものを指します。
水災補償における水災とは、台風や暴風雨などが原因で発生した洪水・高潮・土砂崩れなどを言います。
そのため、台風や暴風雨が原因となって発生した洪水などにより水濡れが生じてしまった場合には、水災補償を使うことになります。

他方でこれ以外の原因で生じた水濡れについては、先ほどもご説明した通り、住宅総合保険によってカバーが可能なケースがあります。

同じ水濡れ事故ですが、発生した原因によって適用される保険が異なるため注意しておきましょう。
保険金請求の際にはどういった原因で生じた水濡れなのかを正確に把握し、適切な保険を選択して補償する必要があるため、この整理は保険金請求などの際に役立ちます。

保険が適用できない事例

では、火災保険や住宅総合保険、水災補償などを付保していればあらゆる水濡れ事故が補償されるかというとそうではありません。
というのも、水濡れ事故や水漏れ事故は保険の対象外となってしまうケースもあり、以下の様なケースでは保険が適用されないことになります。

火災保険の保険内容が水災や水濡れを対象としていない場合

火災保険の内容が火災や破裂、爆発などに限定されており、水災や水濡れを対象とする補償が付帯していない場合には、水災や第三者の過失などによって水濡れ事故が起き、被害を受けても補償する保険がないため保険の適用ができません。

こうした事態を避けるために、水災補償を付帯しておく事や、住宅総合保険などへの加入をするといった方法を検討すると良いでしょう。

被害が発生した物が火災保険の保険対象外の場合

水災補償などを付帯している場合でも、損害が発生したものが火災保険の対象外である場合には保険の適用ができません。
例えば、火災保険の対象が建物のみになっており家財が含まれていない内容で契約している場合に、洪水などで家の中が水浸しになった結果、家電が壊れてしまったようなケースでは、家電は家財になるため、火災保険が家財を対象にしていない場合には補償の対象外となります。

水災補償等を付帯する場合には、こうした水濡れ事故が起きるケースでは家電や家具などの家財が被害に遭う可能性が非常高いため家財も含めて保険対象としておき、実際に保険事故が起きた際に十分な補償が受けられるように備えておきましょう。

水濡れの原因が故意又は過失によって発生した場合

この場合には火災保険で被保険者に発生した損害は補償されません。
具体的な例としては、お風呂の浴槽にお湯をためるために蛇口をひねって水を出していたが、それを忘れて外出してしまった結果、自分の部屋が水浸しになってしまい、家具や家電製品が壊れてしまったようなケースが挙げられます。

注意が必要なのは、今のような例で第三者の財産に損害を発生した場合には個人賠償責任保険によってその第三者の損害の補償はなされますが、被保険者自身の財産に生じた損害については個人賠償責任保険では補償されません。

そのため、こうしたケースでは自分自身の負担で家具や家電製品を修理または買い直す必要があります。

こうしたケースで注意が必要なのは故意や過失により損害を発生させたにもかかわらず、それを隠して保険金請求を行うと詐欺罪に問われる可能性がある点です。
いわゆる保険金詐欺となってしまい、最悪の場合刑事罰を受けることになります。絶対に避けましょう。

また、類似するケースとして配管などが劣化している事を認識していたにもかかわらず放置していた結果、水濡れ被害が生じた場合も、過失により発生した損害として、保険の対象外となる可能性があるため留意しておきましょう。

3年以上前に発生した被害

火災保険の補償対象は3年以内に発生した保険事故に限られています。
そのため、発生から3年経過して水濡れ被害を理由に保険金請求を行っても保険の適用対象になりません。

経年劣化が原因で水濡れが発生した場合

雨などが室内に入って家電や家具が壊れた場合であっても、その雨の侵入が建物や窓などの経年劣化によって生じた場合には保険の対象外となります。
あくまでも火災保険は突発的、偶発的な災害や予測できない原因によって生じた損害を補償するもので、経年劣化などにより生じた場合はそのいずれにも該当せず、当然起きた事と言えるためです。

窓やサッシなどが経年劣化している場合にはこまめにメンテナンスや交換をするようにしておくことがいざというときに補償を受けるために役立ちます。

水漏れ事故の保険申請の仕方

では、実際に水濡れ事故により損害が生じた場合には保険申請はどのように行うのでしょうか。
ここからは手続きの方法や申請の仕方について解説します。
なお、事故の状況や住まいの形態によって対応方法が若干異なるため、以下では賃貸マンションで、水道から水を出しっぱなしにしてしまったために階下の住人の部屋を水浸しにしてしまったようなケースを例に手続きの流れを解説します。

被害状況の確認・謝罪

まずは被害状況を確認しましょう。
今回のケースであれば階下の住人の方へすぐに謝罪することも重要です。
被害の状況や状態を確認しておき、必要に応じて写真やメモを取っておきましょう。

管理会社(大家)への連絡

被害状況が確認できたら、水濡れ事故を起こしてしまったことを管理会社へ報告しましょう。
その際に、どういった状況なのか質問されることになるため、被害状況のメモや写真をもとに説明を行いましょう。
また、併せて賃貸借契約の際に加入している保険などがあれば使えないかも確認しておくと良いでしょう。

保険会社へ連絡

管理会社への連絡が終わったら次は保険会社への連絡です。
保険会社からは以下の事項について確認されるので、予め準備しておくとスムーズでしょう。

  • 契約者名
  • 証券番号
  • 事故の日時・場所・状況

なお、問い合わせ窓口は保険会社によって異なります。
加入している火災保険の保険会社のホームページを確認してから連絡するとよりスムーズでしょう。

申請書類の準備と提出・初動対応

保険会社へ連絡すると必要な書類の指示があるため、申請のために書類を準備します。
また、今回のケースでは階下の住人への賠償責任を負うことから、階下の住人との示談交渉なども考える必要があります。
こうした対応については保険会社と相談しつつ進めることになります。

保険会社と相手方との示談交渉

階下の住人と保険会社との間で示談交渉を行い、賠償額を決定します。
通常は示談と呼ばれる当事者間の協議によって解決されますが、条件がまとまらない場合や被害状況や内容について認識の相違などがあると、裁判や調停となる場合もあります。

保険会社と打ち合わせを行いつつ進めていくことになります。

示談書の締結と保険金の支払い

相手方との示談交渉がまとまれば、示談書を締結しこちらが了解をすれば、保険会社から相手方に保険金が支払われることで、手続きが完了します。

まとめ

水濡れ事故は事故の原因や事故が起きた場所によって補償をする保険が変わったり、保険の補償対象となるかなどが変わるため、事案毎にどういった被害が起きており、原因がなんなのかといった内容をしっかりと把握する必要があります。

また、水濡れ事故が起きてもこうした被害をカバーするための適切な保険が付保されている必要もあります。
集合住宅やマンションなどにお住まいの方は自分自身が加害者となってしまうケースもあれば、被害者となってしまうリスクも常にあるといえるため、どちらの場合にも自身の保険から補償が受けられるように適切な保険の付保をしておくのが、リスクヘッジの観点から望ましいと言えるでしょう。

特に家電製品や家具は一度水に浸かってしまうと使えなくなってしまう物が多く、自己負担で全てを買い直すというのは大きな負担ともなり得ます。

本記事を参考に水濡れ事故に備えた保険が付保されているか一度ご自身の保険を確認されてみてはいかがでしょうか。

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