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外部からの物体の衝突とは?風災補償との違いや火災保険で補償されるケースをご紹介

保険事故 火災保険
投稿日:2022年03月14日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
この度、飛行機墜落事故が近辺で発生してしまい、カーポートが損壊しました。
自宅の火災保険で補償ができますか?
Answer
飛行機の墜落によって生じたカーポートの損壊は、外部からの物体の落下・飛来・衝突による損害にあたるので、火災保険の補償対象です。

ただし、カーポートは「建物」に該当するため、火災保険の補償対象に建物が含まれていなければ、保険金の支払いは受けられないので注意してください。

外部からの物体の落下・飛来・衝突とは?

火災保険には「外部からの物体の落下・飛来・衝突」という補償項目がありますが、どのような場面で補償が受けられるのか、名称だけではイメージがわきづらいのではないでしょうか。

そこで、以下の2つの内容について、具体的な事例などをまじえて詳しく確認していきます。

  • 外部からの物体の落下・飛来・衝突とは
  • 火災保険で補償を受けられる事例

それぞれ見ていきましょう。

外部からの物体の落下・飛来・衝突とは

「外部からの物体の落下・飛来・衝突」による損害とは、建物の外部から看板などの物体が落ちてきたり飛んできたりしたことによって、建物や家財が損傷した場合を指します。

「外部からの物体の落下・飛来・衝突」による火災保険の補償を受けるには、以下の2つの条件を満たすことが必要です。

  1. 1建物の外部から物体が落下・飛来・衝突してきた
  2. 2それによって火災保険が対象としている建物や家財に損害が生じた

①については、建物外部からボールが飛んできて窓ガラスが割れた場合や自動車が衝突して建物を壊した場合などを指します。

また、②については、損害が生じた建物や家財は、火災保険の補償対象になっていることが必要です。

たとえば、火災保険の対象を家財のみに設定していた場合、建物に損害が出ても補償対象にはなりませんので注意してください。

どのような場合であれば補償の対象になるのか、火災保険の契約書に書いてあるので確認しておくようにしましょう。

火災保険で補償を受けられる事例

外部からの物体の落下・飛来・衝突によって生じた損害が火災保険の対象になるのは、以下のような事例の場合です。

  • 他人の自動車が突っ込んできて建物を損壊した
  • 他人の自動車の飛び石で家のガラスが割れた
  • 石やボールが投げ込まれて家財が壊れた
  • ヘリコプターの墜落により建物が損傷した
  • 他人のドローンが落ちてきて屋根を壊した
  • 隣のビルから看板が落ちてきて雨どいを壊した

上記のような場合は、物体の落下・飛来・衝突によって生じた損害にあたるので、火災保険の補償対象です。

ただし、保険契約者や同居している家族の行為は補償対象外ですので、注意してください。

たとえば、自分が運転する自動車によって自宅を壊してしまった場合には、火災保険の対象にはなりません。

また、前述のとおり火災保険の対象に建物を含んでいなかった場合も、補償の対象外です。

火災保険の補償が受けられる状況を事前に把握し、実際に損害が生じた際に保険金の申請がもれないようにしましょう。

風災補償との違いは?

外部からの物体の落下・飛来・衝突による損害の補償と風災補償との違いは、物体が飛んできた原因にあります。

たとえば、石が飛んできて家のガラスが割れた場合、その石が飛んできた原因によって以下の2つの補償にわかれるのです。

  1. 1石が誰かに投げ込まれた場合:外部からの物体の落下・飛来・衝突による補償
  2. 2石が風によって飛んできた場合:風災補償

①については、石が飛んできたのは誰かがわざと投げ込んだことによるものであり、損害が発生した原因は風災ではありません。

それに対して、②については、風によって石が飛んできた事例であり、損害の発生原因は風災によるものです。

より詳細に、風災補償の内容や具体的な事例についてそれぞれ確認していきましょう。

風災補償とは

風災補償とは、火災保険の補償項目の一つであり、台風・竜巻・暴風・突風などの強い風による自然災害の損害を補償するものです。

原因が強い風による場合には、建物外部からの物体の落下・飛来・衝突による損害でも、風災補償の対象になります。

そのため、突風により石や看板が飛んできて生じた建物の損害は、外部からの物体の落下・飛来・衝突による損害の補償ではなく、風災補償の対象です。

風災補償を受けるためには、火災保険の補償範囲に風災の項目が含まれている必要があります。

保険料を少なくするために風災の補償を外しているケースもあるので、加入している火災保険の補償対象は、一度よく確認しておくのをおすすめします。

風災補償で補償される事例

外部からの物体の落下・飛来・衝突による損害の補償ではなく、風災補償の対象となる事例は以下のような場合です。

  1. 1台風によってベランダが壊れた
  2. 2竜巻による突風で窓ガラスが割れ、風が吹き込み家財が壊れた
  3. 3暴風によって看板が飛んできて建物が損壊した
  4. 4突風によって屋根瓦が飛んできて窓ガラスが割れ、そこから雨が入り水浸しになった

①については、強い風が原因でベランダが壊れているので、風災補償の対象です。

次に、②についても、風が原因で家財が壊れているので風災補償の対象となります。

ただし、家財が火災保険の対象となっていない場合、風災補償の対象とはならないので注意してください。

そして、③については、外部から飛んできた看板という物体の飛来によって損害を受けていますが、飛んできたのは強い風が原因なので、風災補償の対象となる事例です。

最後に、④については、雨水による損害ですが、暴風が原因ですので風災補償の対象範囲です。

強い風を原因とする損害であれば、物体の飛来によるものでも、水に関係するものでも、風災補償の対象範囲であるというのは知っておきましょう。

物体の落下・飛来・衝突の保険金が支払われない3つのケース

建物外部からの物体の落下などによる損害が生じた場合でも、物体の落下・飛来・衝突の補償によって、保険金が支払われないケースがあります。

ここでは、風災以外の3つのケースについて紹介します。

  • 地震が原因の場合
  • あられ・ひょうが原因の場合
  • 損害賠償の支払いを受けている場合

上記のケースのように、ほかの保険が対象とする損害や、すでに損害額の支払いを受けている場合などは、物体の落下・飛来・衝突の補償対象から除かれます。

具体的に、一つひとつ詳しくみていきましょう。

地震が原因の場合

地震を原因とした落下物や飛来物による損害は、地震保険の対象範囲になるので、物体の落下・飛来・衝突による補償の対象とはなりません。

地震保険は、火災保険が補償の対象としていない、地震を原因とした損壊や落下物などで損害を受けた際に適用される保険であるからです。

たとえば、地震が発生した際に建物の屋根瓦が落ちてきて生じた損害は、地震保険でのみ補償されます。

また、地震保険は、地震だけではなく噴火や津波を原因とする損害を補償するものです。

そのため、噴火で飛んできた岩石で自宅が損壊した場合には、火災保険の物体の落下・飛来・衝突による損害補償の対象から除かれ、地震保険でのみ補償されます。

地震を原因とする損害については、火災保険とは別に、地震保険に加入していなければ補償が受けられないので注意しましょう。

あられ・ひょうが原因の場合

あられやひょうを原因とした損害は、物体の落下・飛来・衝突による補償の対象になりません。

なぜなら、火災保険の項目の一つである雹(ひょう)災補償の対象になるからです。

雹災補償とは、あられなどが降ってきた際に生じた損害を補償するもの。

具体的には、以下のような場合の損害を補償します。

  • あられで窓ガラスが割れた
  • ひょうでバルコニーの屋根に穴があいた
  • ひょうで雨どいが壊れた

あられは直径5ミリ未満、ひょうは直径5ミリ以上の氷粒を指します。

雹災補償は、風災補償や雪災補償とセットになっているのが一般的です。

風災補償などとあわせて、雹災補償が対象となっているか契約書などで確認しておくと安心でしょう。

損害賠償の支払いを受けている場合

物体の落下・飛来・衝突による補償対象の損害であっても、すでに損害賠償金の支払いを受けている場合には保険金を受け取れません。

なぜなら損害保険は、不慮の事故や災害により被った損害を補償するものであり、実際の損害額を超えて利益を与えるものではないからです。

同様の理由で、すでに別の保険により補償を受けている場合にも、支払いの対象になりません。

たとえば、損害を発生させた相手の保険によって損害分の補償を受けた場合には、自分が加入している火災保険からの保険金は受け取れないのです。

損害保険には、保険金を受け取ることによって利益を得てはいけないという原則があります。

そのため、複数の損害保険に入っていたとしても、損害以上の保険金は受け取れないので注意しましょう。

火災保険の保険金を請求する流れ

外部からの物体の落下・飛来・衝突による損害が生じた際に、火災保険の保険金を請求する流れは以下のとおりです。

  1. 1保険会社への連絡
  2. 2保険金の請求に必要な書類を提出する
  3. 3保険会社による現場調査・審査
  4. 4決定した保険金を受け取り修理する

火災保険の保険金は、申請者が請求しなければ支払われません。

保険金の請求期間は3年間ですので、うっかり期限を過ぎてしまわないように、できる限り早めに対応するようにしてください。

次に、手続きの流れを一つずつ詳しく確認していきましょう。

①保険会社への連絡

外部からの物体の落下・飛来・衝突による損害を発見したら、まずは速やかに保険会社や代理店に連絡してください。

連絡先は保険証書や、契約のしおりに記載されているケースが多いでしょう。

保険会社によっては、事故受付専用のWebサイトが用意されており、そのページから被害状況を報告できます。

連絡する際に必要な情報は、以下のとおりです。

  • 契約者名
  • 保険証券の番号
  • 事故の日時・場所
  • 事故の状況や原因
  • 損害の程度

現時点で事故の原因や被害の程度が明確にわからなくても、把握できている範囲の情報を伝えれば問題ありません。

保険会社の担当者が、今後の対応について丁寧に説明してくれます。

②保険金の請求に必要な書類を提出する

保険会社へ連絡した後は、保険金を請求するために書類一式の準備と提出が必要になります。

必要書類の一例は、以下のとおりです。

  • 保険金請求書
  • 修理会社からの見積書
  • 被害部分の写真
  • 罹災証明書(損害状況によっては不要)

具体的な必要書類については各保険会社から案内がありますので、指示に従いましょう。

被害部分がわかりにくく撮影が難しい場合は、見積もりをとる際に修理会社へ写真撮影も含めて依頼しておくのをおすすめします。

罹災証明書とは、暴風、豪雨などの自然災害による住居の被害の程度を証明する書類です。

罹災証明書を求められた場合には、市町村に申請して発行してもらいましょう。

③保険会社による現場調査・審査

書類提出後、必要に応じて保険会社の現地調査が行われる場合があります。

このとき現地調査にくるのは、「損害保険登録鑑定人」と呼ばれる住宅の損害を鑑定する専門家です。

現地調査では事故の原因と状況の調査が行われ、申請された被害状況や見積書に問題がないか判断されます。

損害保険登録鑑定人による現地調査が行われる明確な基準はありません。

以下の場合では、現地確認が必要と判断される可能性が高いです。

  • 申請金額が100万円以上と高額
  • 提出した書類に不備がある

損害規模が少なく、提出した書類で被害状況が把握できるような状況であれば、省略されるケースも多いでしょう。

④決定した保険金を受け取り修理する

保険金の金額が確定したら、契約者の了解を得た上で入金されます。

保険金は提出した資料や現地での調査結果を踏まえて決定されるので、届いた明細書とあわせて金額を確認しておきましょう。

火災保険の保険金支払い期限は、保険法によって「請求が完了してから原則30日以内」と明示されています。

多くは支払い期限までに入金されますが、特別な調査や照会が必要になった場合は延長されるケースもあるので注意が必要です。

なかなか支払われない場合は、一度保険会社に連絡して確認してみるのをおすすめします。

保険金を受け取ったら、見積もりをとった業者に修理を依頼しましょう。

まとめ

外部からの物体が落下・飛来・衝突による損害は、基本的に火災保険の補償対象です。

しかし、地震を原因とした場合や、すでに賠償金を受け取っているような場合には、火災保険による保険金は受け取れません。

また、物体の落下や飛来によって生じた損害は、その物体が飛んできた原因によってどの項目で補償されるかが変わります。

突風などが原因の場合には、外部からの物体が落下・飛来・衝突による補償ではなく、風災補償の対象です。

火災保険を契約する際には、想定する事態に対応できる補償内容になっているかをしっかり確認するようにしましょう。

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