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弁護士コラム
雪害、雪災の補償範囲は?保険適用の条件や申請の仕方について解説
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
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大雪が降って、自宅の屋根がつぶれてしまいました。
火災保険で補償されますか?
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結論から申し上げれば、火災保険の雪災補償を受けられる場合があります。
雪災は多くの火災保険で初めからついている補償の一つです。
ただし、雪による被害でも融雪水の漏入や凍結、融雪洪水、除雪作業による事故は補償の対象にならない場合があります。
目次
雪災補償の対象になる5つのケース
火災保険の雪災補償の対象となる、主なケースは次のとおりです。
- 積雪で雨どいが歪んだ場合
- 積雪により車庫が破損した場合
- 積雪による雨漏りが発生した場合
- 落雪による屋根の変形
- 大雪によるアンテナの破損
雪災補償の対象になる損害は、「雪」を原因として発生していることが必要です。
詳細については後述しますが、上記の事例はすべて雪が原因で生じているため、原則として雪災補償の対象となります。
ただし、雪災補償は火災保険に付帯しているものなので、補償を受ける前提として以下の2つの要件を満たしている必要があります。
- 1加入している火災保険が雪災を補償対象としている
- 2加入している火災保険が雪によって損害のあった「建物」や「家財」を補償対象としている
①について、多くの火災保険では、複数の補償がセットになったパッケージ型の契約が主流となっています。
どのパッケージを選択しても、雪災・風災・雹災補償がセットで付いているのが一般的です。
もっとも、火災保険会社によっては、補償内容をしぼったプランが用意されているケースもあるため、契約時にはどこまで付帯しているかをよく確認する必要があります。
すでに火災保険に加入している場合は、契約書などの書類で補償内容に雪災・風災・雹災補償が含まれているかをチェックしておきましょう。
②について、火災保険の補償対象は、「建物のみ」・「家財のみ」・「建物と家財」の3つの中から選択します。
火災保険の契約時に「建物のみ」や「家財のみ」を選択していた場合、雪災補償も同じ範囲に限定される点には注意してください。
たとえば、火災保険の補償対象を「家財のみ」にしていたケースでは、雪によって「建物」である屋根に損害が発生した場合であっても、雪災補償の対象とはなりません。
積雪で雨どいが歪んだ場合
積雪によって雨どいが歪んだ場合は、雪災補償の対象となります。
積雪という雪を原因とした災害で、雨どいという建物に損害が生じているからです。
火災保険の「建物」には、付随した設備も含まれるので、雨どいは建物として扱われます。
雨どいの上に積雪がある状態が続くと、重さに耐えきれず歪んでしまうケースは多いようです。
保険会社への雪災補償の相談としてよくある事例ですが、損害と原因との関係が明らかな場合も多いので、保険金の支払いにつながりやすいケースです。
注意が必要なのは、雨どいが強風や石などをぶつけられて壊れた場合には、雪災補償の対象外になるということです。
いずれも雪を原因とした損害ではないので、積雪と同じような被害が生じていたとしても、雪災補償による保険金の支払いは受けられません。
積雪が原因で損害が生じた場合、雨どい全体に歪みなどが生じているケースも多いでしょう。
そのため、修理費用は高額になるケースが多くみられます。
火災保険の雪災補償によって適正な保険金が受け取れるように、雪による損害を発見したら早めに保険会社へ被害報告をしましょう。
積雪により車庫が破損した場合
積雪による車庫の破損は、基本的に雪災補償の対象となります。
前述した事例と同様、積雪という雪を原因とした災害で、車庫という建物に損害が生じているからです。
なお、車庫は建物に付随した設備ですので、雨どい同様に建物として扱われます。
車庫に損害が生じた際、併せて押さえておきたい注意点は以下の2つです。
- 166㎡以上の大規模な車庫は原則対象外
- 2車両の損害は補償の対象外
①については、車庫などの付属建物は、延べ床面積が66㎡未満であれば火災保険の建物の補償に含まれます。
しかし、延べ床面積が66㎡以上の大規模な車庫の場合、「屋外明記物件特約」をセットしていない限り保険の対象にならないことが多いです。
屋外明記物件とは、車庫や物置などの付属建物で延べ床面積が66㎡以上の物件のうち、あらかじめ保険申込書に明記されたものなどを指します。
屋外にある大型の建物は、付属建物として事前に特約の明記をしていなければ、保険の対象外です。
また、②については、車庫内の車両が積雪で壊れたとしても、雪災補償の対象外ですので注意してください。
車両は「建物」でも「家財」でもないので、火災保険の対象外であり、自動車保険の車両保険でカバーされるものであるからです。
積雪による雨漏りが発生した場合
積雪による雨漏りが発生した場合も、雪災補償の対象となります。
積雪が原因で、建物の雨漏りという損害が発生しているからです。
雨漏りの修理自体にかかった費用や、雨漏りから生じた建物や家財の損害額が補償されます。
この事例のポイントは、最終的に水によって生じた損害であっても、雪が原因で発生した雨漏りによる被害は雪災補償でカバーされることです。
火災保険の補償対象にあたるかどうかは、損害が生じさせた原因に着目して判断するというのは覚えておきましょう。
同様の理由で雨漏りの原因が、強い風によって飛んできた石であれば風災補償の対象、降ってきた雹(ひょう)によって生じた損害であれば雹災補償の対象です。
雹災補償は、雹やあられによって生じた損害に対して保険金を支払うものです。
なお、雹とあられの違いは氷粒の大きさであり、直径5mm以上の氷粒を雹、5mm未満はあられといいます。
火災保険では基本的に雪災・風災・雹災補償が付帯されていますが、保険会社によっては対象外となっていたり、補償限度額が少なくなっていたりするケースがあるので注意してください。
実際に災害が生じたときのために、事前に契約書を確認しておくのをおすすめします。
落雪による屋根の変形
雪が落ちてきたことによって屋根が変形した場合は、雪災補償の対象となります。
落雪という自然災害によって、建物である屋根が変形するという損害が生じているからです。
たとえば、上の階からの落雪によって、下の階の屋根が変形するという事例は多くあります。
落雪による被害で、補償対象になるか迷う人が多いケースは以下の2点です。
- 1隣の家の落雪が原因で自宅に損害が生じた場合
- 2自宅の落雪が原因で隣の家に損害を与えてしまった場合
①について、隣の家からの落雪であっても、基本的には雪という自然災害で生じた損害にあたるので、雪災補償の対象となります。
②について、火災保険の対象は自宅の建物や家財なので、隣の家に損害を与えたとしても雪災補償の対象にはなりません。
自宅に積もった雪が原因であっても、原則として自然災害によって生じた損害の責任を隣の家から問われることはないでしょう。
しかし、隣の家に落雪して被害が出る状況を知りながら放置していたなどの事情があれば、損害賠償請求をされる可能性があります。
雪によって発生した被害であれば、近隣の人に与えた損害まで含めて補償されると勘違いする人は多いので、注意してください。
なお、自宅の落雪によって隣の家に損害を与えて損害賠償責任を負ってしまった場合に役立つのが、個人賠償責任保険や個人賠償責任特約です。
落雪によって損害を与えた相手に損害賠償請求をされた場合、その費用は高額になるケースが多いので雪災補償と併せて加入を検討してみてください。
大雪によるアンテナの破損
雪を原因としたアンテナの破損は、雪災補償の対象になります。
雪によって、アンテナの破損という損害が生じているからです。
アンテナは建物に付随する設備ですので、補償されるには「建物」を対象とした火災保険に加入している必要があります。
押さえておきたいポイントは、同じアンテナの破損であっても、損害を生じさせた原因によっては雪災補償の対象とならないことです。
たとえば、以下のようなケースでは、雪災補償の対象とはなりません。
- 1強い風によってアンテナが破損した
- 2突風で飛んできた看板でアンテナが壊れた
- 3雷が落ちてきてアンテナが使えなくなった
- 4誰かに石を投げつけられてアンテナが故障した
①と②については、風を原因とした損害ですので、雪災補償ではなく風災補償の対象です。
③については、落雷によって生じた損害として補償されます。
落雷によって生じた被害は、火災保険の基本補償に含まれているケースも多くあります。
④については「外部からの物体の落下・飛来・衝突」の補償項目で、保険金が支払われる事例です。
「外部からの物体の落下・飛来・衝突」の補償は、基本補償に含まれているケースもありますが、契約書などでしっかり確認しておくのをおすすめします。
補償されると思っていたのに、加入していた火災保険のプランでは補償を受けられなかったという事態にならないように、それぞれの補償でカバーされる内容は押さえておきましょう。
雪災で支払われる補償金額
火災保険の雪災補償では、実際の損害額から自己負担額を除いた金額が支払われます。
補償金額について、以下の2点は押さえておきましょう。
- 1契約時に定めた保険金額の支払いがあるわけではない
- 2契約時に設定した自己負担額(免責金額)が引かれる
①については、契約時の保険金額はあくまでも支払いの上限額であり、実際の損害を超えた保険金は受け取れない点に注意してください。
損害保険である火災保険には利得禁止の原則があるので、損害が発生する以前の状態よりも得をするような保険金は受けとれません。
損害保険で支払われる保険金は、突然の事故や災害による損害を経済面からカバーするものであり、利益を得るために出されるものではないからです。
②については、実際に支払われる保険金額は、自己負担額が差し引かれたものになります。
たとえば、自己負担額5万円で設定して20万円の損害が発生したケースでは、「20万円−5万円」で、受け取れる保険金は15万円です。
損害のうちどれくらいの保険金額がもらえるか、前もって保険内容を確認しておきましょう。
火災保険で雪災を申請する手順
火災保険で雪災補償を申請する手順は、以下のとおりです。
- 1保険会社への雪災を原因とした損害発生連絡
- 2保険金の請求に必要な書類を準備して提出
- 3保険会社からの現場調査対応や審査・保険金の決定
火災保険の申請などについては、雪災補償に限らず上記の流れになります。
①について、雪災によって建物・家財に損害を発見した場合、契約している保険会社に損害発生の連絡をしてください。
雪災による損害は、素人でも比較的わかりやすいケースが多いので、家の周りや家の中を目視でチェックするだけでも、被害があるかないかの確認はできるでしょう。
保険会社に連絡した際には、以下のような内容が聞かれます。
- 契約者の名前・保険証券の番号
- 損害が発生した日時・場所
- 確認した状況・日時
保険会社によっては、電話のほかに、WebやLINEなどからの損害発生連絡に対応している場合も多いようです。公式HPなどで、連絡先や連絡方法を事前に確認しておくと、損害が発生した際の連絡がスムーズに進むでしょう。
損害が生じた建物や家財の片付けをする前に、写真や動画をとっておくと、現地調査の際に被害状況を明確に伝えられます。
②について、損害発生の連絡をしたあとに、必要書類の準備と提出が必要になります。
以下のものが、必要書類として求められることが多いようです。
- 保険金請求書
- 修理をするとした場合の見積書
- 被害状況の写真
連絡した際に相手方から必要書類を伝えられる場合が多いので、保険会社から言われた書類を準備して提出しましょう。
③について、保険会社が必要だと判断したら現場調査に「損害保険登録鑑定人」という専門家がきます。
立ち会う必要があるので、保険会社と現地確認できる日程を調整してください。
申請した被害状況や提出した見積書などを考慮して、保険金が確定します。
その内容に問題がないと承諾すれば、そのあとに入金という流れになります。
火災保険で雪災の対象にならない3つのケース
火災保険の雪災補償の対象とならない3つのケースは、以下のとおりです。
- 1雪解け水による洪水が原因の場合
- 2経年劣化が原因の場合
- 3損害が免責額以下の場合
上記のケースの場合には、雪災によって建物や家財に損害が生じたとしても保険金を受け取れません。
損害の発生が経年劣化によるものである場合や免責額以下の場合など、受け取れると思っていたら保険金が受け取れなかったというケースもあるので、しっかり把握しておきましょう。
それぞれ、詳しく解説していきます。
雪解け水による洪水が原因の場合
雪解け水によって洪水が発生した場合には、雪災補償の対象外となります。
雪解け水によって生じた洪水は、火災保険の水災補償の対象であるためです。
水災補償では、台風や豪雨のほかに、融雪によって生じた損害も対象にしています。
たとえば、雪解け水の洪水によって床上浸水が生じた場合、床のリフォームなどの費用や清掃費用が補償の対象となるでしょう。
なお、雪解け水の洪水以外にも、以下のものが原因となって生じた損害については雪災補償の対象外です。
- 融雪水の漏入
- 凍結
- 除雪作業
雪災によるものだと感じる人も多いと思いますが、雪災補償の対象から除かれているので注意してください。
水災補償は、火災保険の基本補償に含まれていないのが通常なので、事前に自分が加入しているかは確認しておくようにしましょう。
経年劣化が原因の場合
大雪の際などに雨漏りが生じた場合でも、その原因が雪ではなく経年劣化や老朽化であった場合には、雪災補償の対象外となります。
経年劣化は、利用していれば当然発生するものなので、突然の事故や自然災害の損害を補償するための火災保険の対象としてふさわしくないからです。
経年劣化による損害であると保険会社に判断された場合には、基本的に保険金は支払われないので注意しましょう。
経年劣化か雪災のいずれによるものかは、専門家でも判断が難しく争いになるケースは少なくないので、心の準備をしておいてください。
損害が免責額以下の場合
損害が免責額(自己負担額)以下の場合には、損害が生じた場合でもすべて自己負担になるので、雪災補償による保険金の支払いはありません。
契約者の自己負担額を定める場合、以下のいずれかの方法が一般的です。
- 1自己負担額を定めて、損害額からその自己負担額を引いた保険金が支払われる
- 2一定の金額を定めて、損害額がその金額以上になったら保険金が支払われる
たとえば①のケースでは、自己負担額を5万円と定めた場合、損害額が4万円だった場合には、すべて自己負担の範囲内ですので保険金の支払いはありません。
②のケースでは、一定の金額を30万円だと定めた場合、30万円の損害なら30万円の保険金が支払われますが、30万円を下回る損害については全額自己負担になり、補償はないということになります。
自己負担の設定方法は保険会社によって異なるので、自己負担をしたくない人は契約時に注意して決定するようにしましょう。
まとめ
雪害による損害事故が雪災補償の対象になるかは、雪を原因とした損害かどうかで決まります。
大雪が降って自宅の屋根がつぶされた場合には対象となりますが、経年劣化で壊れた場合には雪災補償の対象外になるので注意してください。
雪災による被害は大きな損害金額になるケースが多いので、雪災補償の適用条件や申請方法を押さえて、適正な保険金を受け取りましょう。
補償の範囲を事前に把握して、自分に合った火災保険の内容で契約するようにしてください。
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