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弁護士コラム
火災保険で破損・汚損は補償される?事例でわかる「補償される場合・されない場合」
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
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火災によって、家財が破損、汚損してしまいました。
補償はされますか?
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火災による家財の破損、汚損が補償されるかは、契約している火災保険の補償(契約プラン)、保険の対象によります。
保険会社との契約内容をよく読み、確認する必要があります。
一般的に、破損、汚損による補償を受けられるのは「不測かつ突発的な事故」とされており、起こりうることを容易に想定できた場合や、故意の場合は対象外とされています。
なお多くの火災保険は、破損、汚損のように火災だけでなく自然災害や日常のトラブル・事故も補償しています。
以下では、火災保険全体の補償対象や事例、対象とならない場合の例、対象となった場合の保険金についてご説明します。
最近の火災保険は、オプションを付加したり除外したりと被保険者のライフプランに合わせた組み立てができるものが多数あります。
そのため、下記にて紹介する内容も契約によって含まれるもの・含まれないものがあることをご了承ください。
目次
火災保険の補償対象
火災保険の補償対象は「建物」と「家財」に分類されます。
火災保険のメインは「建物」となるため、「家財」が補償対象に含まれていない契約も存在します。
「建物」と比較し「家財」の方が破損・汚損する可能性は高いため、「家財」が補償対象に含まれていない場合は、保険会社に見直しを相談するのも良いでしょう。
では、「建物」と「家財」の定義を説明します。
建物
建物の定義は「住居にのみ使用される建物」と、「その建物に付属するもの」です。
建物に付属するものの例としては、下記が該当します。
- 建物に付随する電気・ガス、通信、消火、冷房・暖房、エレベーター・リフトなど
- 浴槽、流し台、調理台、レンジ台など
- 門、塀、物置、車庫
※所有者が、建物の所有者と同じ場合
マンションの場合は特に注意が必要ですが、専有部のみが対象となり、共用部(廊下やバルコニーなど)は対象外となります。
また店舗などの併用住宅、賃貸物件などはそもそも補償対象に含まれていないこともあります。
建物の破損・汚損の事例
具体的な建物の破損・汚損の事例としては、下記のような内容が想定されます。
- 引越しの際に、家具をぶつけて部屋の壁に穴があいてしまった
- 子供が遊んでいる最中に玩具を投げ、窓ガラスが割れてしまった
- 自動車を車庫に入れる際にぶつかり塀が破壊されてしまった
- 他人からの落書きで自宅の外壁が汚損されてしまった
- 畳・襖を破いてしまった
- 浴槽のタイルが割れてしまった
- 重い鍋を落下させレンジ台・調理台を破壊してしまった
- エアコンが水漏れにより故障してしまった
※詳細は契約内容をご確認ください
家財
家財の定義は、上記「建物」の中にある「被保険者または被保険者と生計をーにする親族が所有する家財」です。
家具や家電だけでなく、衣服や日常用品なども含まれます。
「建物」の中にあることが前提となるため、外出中の損害は火災保険の適用外となることに注意が必要です。
また、1個(または1組)の価格が30万円以上の高額な宝石や貴金属、美術品などは、契約時に保険証券に明記されていないと、補償の対象にならない場合があります。
※保険によっては別途契約が必要になることもあります。
なお、30万円以上になる場合でも、日常的に使用するような家電製品や楽器などは通常の「家財」として補償の対象となります。
家財の破損・汚損の事例
具体的な家財の破損・汚損の事例としては、下記のような内容が想定されます。
- 火事により洋服一式が燃えてしまった
- 落雷によりテレビが故障してしまった
- 水漏れにより冷蔵庫が故障してしまった
- 掃除中にテーブルに乗せていたカメラが落下し、破損してしまった
- つまづいた際に食器棚にぶつかり食器を割ってしまった
- 子供がカーテンを引っ張り、破いてしまった
※詳細は契約内容をご確認ください
破損・汚損が火災保険の補償の対象となる場合
補償が受けられるのは「不測かつ突発的な事故」の場合
一般的に、火災保険の補償が受けられるのは予期できない突発的なトラブルや事故の場合です。
破損、汚損の場合も火災と同様、この前提は変わりません。
しかし、破損・汚損による補償は日常的に頻繁に起こりうることのため、補償の対象となる事例も幅広くなっています。
中には、一見すると補償の対象にならないように見える事例もありますので、破損・汚損があった際には保険会社にまずは問い合わせてみると良いでしょう。
破損・汚損が火災保険の補償の対象となる事例(金額例)
- 水道の蛇口の締め忘れによる部屋全体の水漏れ(約580万円)
- 子供が遊んでいた際の事故によるトイレのドア・ウッドデッキの破損(約300万円)
- 引越し時の不注意によるテレビの破損(約70万円)
- ドアストッパーが挟まったことによる床面の大きな傷(約160万円)
- 台風による建物と車庫の屋根破損(約520万)
※参考
三井不動産リアルティ株式会社「保険コンサルティング」
楽天損保ホームアシスト
破損・汚損は最も支払い件数が多い
火災保険の補償は、失火・もらい火などの火災はもちろんですが、落雷による損害・火災、ガスなどの爆発による損害、台風・竜巻、ひょう、豪雪やなだれなどの雪災も含まれます。
これらによって損害を受け、一定の額を超えた場合に補償を受けることが可能になります。
そのため、火災保険は「建物の総合保険」と呼ばれています。
なお地震・噴火・津波は含まれないため、このようなリスクに備えるためには別途、地震保険を 契約する必要があります。
また、火災などが発生した際の紛失や盗難による損害も補償されないため注意が必要です。
非常に幅広い補償対象ですが、その中でも特に破損・汚損は保険金の支払い件数が多い 事由です。
三井住友海上(※1)によると、事故種類別・支払件数の割合は、破損、汚損が最も多く全体の44.2%を占めます。
一方、火災、落雷、破裂・爆発は5.6%に留まるため、火災保険は火災そのものに備えるだけでなく破損、汚損に備える有効な手段と言えます。
実際、楽天損保(※2)によるとこの破損、汚損の補償をつけている加入者の割合は70.2%(マンション・アパートの場合)にまで至ります。
いかに破損、汚損が日常生活で起こりうると認識されているかがわかるデータです。
(※1)三井不動産リアルティ株式会社「保険コンサルティング」
(※2)楽天損保 みんなの加入データ(不測かつ突発的な事故)
破損・汚損が火災保険の補償の対象とならない場合
火災だけでなく、そのほかのトラブルでも補償を受けることができる火災保険ですが、どのような場合に補償対象にならないのでしょうか。
破損・汚損が火災保険の補償の対象とならない主な場合
前提として、予想できない突発的なトラブルや事故に該当しない場合、つまり故意の場合は補償がされません。
また、予想できない場合であっても、契約者・被保険者および法定代理人の重大な過失が認められた場合には故意と同様に補償がされません。
例えば、下記のような場合には重過失が認められたため、補償を受けられないとされました。
- 過去に二度火事を出した経験のあるにも関わらず火のついたたばこを故意に放置していた(東京高等裁判所昭和59・10・15)
- 台所のガスコンロにてんぷら油の入った鍋をかけたまま台所を離れ、過熱されたてんぷら油に引火した(東京地裁昭和57・3・29)
単なる「過失」であれば補償を受けることができますが、「重過失」の場合は補償がされません。
どのような場合が「重過失」に当たるのかは慎重な見極めが必要になり、時には裁判にまで発展する場合があります。
一般的に補償の対象外となる状況
- 自然の消耗もしくは劣化または性質による汚損・破損等
- (変色、変質、さび・かび、腐敗、腐食、浸食、ひび割れ、剝がれなど)
- 平常の使用または管理において通常生じ得る汚損・破損等
- (すり傷・かき傷、塗料の剝がれ落ち、ゆがみ、たわみ、へこみなど)
- 地震・噴火・津波による破損・汚損
- 戦争、暴動などの異常な事態や核燃料物質等による事故による破損・汚損
- 差押え、収用など
一般的に補償の対象外となるもの
- 「建物」から持ち出した場合(「家財」の場合)
- 通貨、有価証券、預貯金証書など
- 義歯・義肢、コンタクトレンズ・眼鏡など
- 動物・植物
- 自動車・自動二輪車
- スマートフォン・パソコン
※スマートフォン・パソコンはオプションで補償対象に追加できる場合もあります。
破損・汚損が火災保険の補償の対象とならない事例
- サイクリング中に事故で自転車を破壊されてしまった
- パソコンを外出先で落として故障させてしまった
- 旅行先でカメラの盗難にあった
- 不注意で眼鏡のレンズを割ってしまった
- 地震により本棚が倒れて破壊してしまった
- 自宅の駐車スペースで自動車に傷や凹みを付けてしまった
※盗難補償・携行品補償などをオプションで補償対象に追加できる場合もあります。
※詳細は契約内容をご確認ください。
また近年では、「破損・汚損」の補償は基本の契約プランには含まれておらず、火災保険の補償対象とするには別途オプションとして特約を締結しなければいけない保険も存在しています。
そもそも自分自身が契約している火災保険が、「破損・汚損」をカバーしているか必ず確認しましょう。
損害保険金はいくら支払われるのか
自己負担額によって変わる
一般的な保険等同様、支払われる保険金は被害状況と保険内容(掛け金など)によって変動します。
火災保険の場合、契約の際に「自己負担額(免責金額)」というものが設定できます。
これは損害を受けた場合に、損害額のうち自己負担する金額のことを指します。
自己負担額(免責金額)が大きいほど毎回の保険料の支払い金額を少なく 抑えることができます。
一方で、自己負担額が大きすぎると損害を受けた場合の出費がかさむため保険の意味がないともいえます。
バランスの良い設定が必要です。
損害保険金は、損害額から自己負担額(免責金額)を引いた金額となります。
なお、設定できる自己負担額(免責金額)は火災保険会社によって異なります。
損害額の計算方法は
損害額の算出には、「新価(再調達価額)」「時価」という2種類の方法があります。
損害を受けた建物を新しく購入・建築するために必要な金額を基準にして算出するのが「新価」であり、「時価」は「新価」の金額から、経年劣化の分を差し引いて算出します。
「新価」の方が損害保険金は多く支払われますが、保険料も高額になります。
支払限度額も存在する
火災保険にも支払限度額は存在し、基本的には損害金額が上限となります。
また、実際の損害金額が非常に高額でも、限度額を超えて保険金が支払われることはありません。
契約内容を必ず確認しておきましょう。
破損・汚損時に火災保険の保険金を請求する流れ
では、いざという際にどのように保険金を受け取るのか、一連の流れを見ていきましょう。
慣れない手続となるため、下準備をしておく必要があります。
①保険会社への連絡
火災保険を契約している保険会社を確認し、カスタマーセンターに連絡をします。
多くの場合は電話となりますが、保険会社によってはウェブでの手続きを推奨している場合もあります。
問い合わせは契約者本人がします。
氏名・電話番号のほか、契約の確認のため証券番号も聞かれるため、手元に保険証書を用意しておきます。
その後、破損・汚損が発生した日時や場所、状況・原因などを伝えることになります。
破損・汚損による心理的ダメージが大きいと、冷静に上記を伝えることも難しくなることがあるため、あらかじめ被害にまつわる情報をメモ書きしておくとスムーズです。
②保険金の請求に必要な書類を提出する
保険会社への連絡後、提出すべき書類や案内が保険会社から送られてきます。
必要書類は保険会社に確認をする必要がありますが、下記3点は必ず求められる場合がほとんどです。
- 火災保険請求書(フォーマット指定)
- 損害箇所の写真
- 損害箇所を修繕する場合の見積書
特に写真は、タイミングを逃すと失念してしまいがちです。
必ず、全体像や損害箇所、その他家電であれば型番の写真など、複数枚撮影しておくと安心です。
③保険会社による現場調査・審査
保険会社から損害鑑定人が派遣され、現地調査・審査を実施します。
損害鑑定人による現場調査は必ず実施される訳ではありませんが可能性はあるため、なるべく現場の状況はそのままの状態で保存しておく必要があります。
④決定した保険金を受け取り修理する
保険金を受け取り、修理・修繕を行います。
特に家財の破損、汚損の場合は、いますぐに必要ではなくなってしまったということも考えられます。
保険金を受け取った場合でも必ず修理・修繕に使用しなければならないということはなく、他の用途で保険金を使用しても問題はありません。
ライフプランに合った火災保険の選択を
相次ぐ自然災害を背景に、火災保険ではオプションメニューの提供や金額変更など、大きな変化が起きています。
自己負担額の設定をいくらにするか、補償対象をどこまで広げるか、盗難や携行品の補償をどこまで付けるかなど、選択肢の幅が広い保険商品だからこそ、家族構成や生活を今一度振り返り、定期的な見直しをすることが求められます。
まとめ
火事を始めとする災害の多い日本では火災保険は重要な位置付けにあります。
「失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)」によると、隣家からのもらい火で自宅が焼失しても、その出火元に重大な過失がない限り、損害賠償請求ができません。
そのため、自分自身でトラブルや事故に備えておく必要があります。
一方で、この記事でご紹介した破損、汚損は日常的に起こりうる身近なトラブル・事故です。
自分自身の生活を安心・安全に過ごすためにも破損、汚損にも対応した火災保険で備えておくことが求められます。
保険金の不払いに
お悩みの方へ
保険会社への対応に疑問を感じた時は、交渉のプロである弁護士にお任せください。
ご相談内容に応じて、代理請求・示談交渉、そんぽADRセンターへの申立て、訴訟提起をいたします。
時効で権利が消滅することもあるので、ご連絡はお早めに。
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