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弁護士コラム
火災保険で雨漏りや水濡れは補償される?補償されるケースと請求の流れをご紹介
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
- Q
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マンションの上の階から漏水が発生し、私の部屋の洋服がびしょ濡れになりました。
私が加入している火災保険で補償されますか?
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結論から申し上げれば、火災保険で雨漏りや水漏れの補償を受けられる場合はあります。
しかし、全ての事象で保証されるわけではありません。
まず、契約の時点で補償の範囲に含めていないと対象にはなりません。また、経年劣化や修理すべき箇所を放置したことによる事故でも対象外となります。
偶然かつ突発的で自然災害などの外的な理由でない限りは補償を受けられないのです。
さらには、雨漏りや水漏れの原因や火災保険取扱会社によっても基準が異なります。
目次
火災保険の水濡れ補償とは
火災保険は文字通り火災が起きた際の補償を担ってくれる保険です。もっとも、火災保険は、火災だけに止まらず自然災害や突発的な事故にも対応しています。
ただし、自然災害の場合は、「水濡れ」の対象ではなく、「水災」「風災」に当てはまります。ここでは、「水濡れ」に関して詳しく解説します。
基本的には、給排水設備の突発的な事故で室内が水浸しになったり、マンションで隣接している別の部屋の住人が起こした水漏れ事故が該当します。
注意して欲しいのは、給排水設備が原因となって発生した事故や隣人が起こした事故が補償対象です。要するに、給排水設備自体の補償はされないということです。あくまで、被害を受けた家屋や家財が補償の対象になります。
また、補償されるのは「偶然」「突発」「外来」の事故のみです。自分の不注意で給排水設備の老朽化や破損が起こっていた場合は、補償されません。当然ながら、故意で起こした事故と重大な過失による事故も対象外です。
「水濡れ」に当てはまる水漏れは、水道管の破裂や損傷のような建物の内部で発生した事故による損害が対象です。
給排水設備の事故による被害や他の住宅(例えば上階)に起因して 起きた水漏れの被害、火災時の放水による被害が「水濡れ」の対象になります。
【水濡れの原因別】補償を受けられるのか
火災保険では、水濡れでも補償を受けられます。実際、近年では水濡れによる火災保険の支払いはかなり増えてきています。
では、どのような水濡れが原因で補償が受けられるのでしょうか。ここでは、4つの水濡れ原因について詳しく解説していきます。
①原因が「自分」の場合
まず、「自分」が原因で発生した水濡れでは、補償を受けられるのでしょうか。
断水中にうっかり蛇口を開け放したまま外出してしまい、帰ってきたら洗面所から水があふれ、マンションの下の階まで水漏れしてしまった
故意や重大な過失がない限り、すなわち「偶発かつ突発的な」事故の場合は、「水濡れ」に該当し補償を受けられます。
例えば、洗濯機のホースが外れてしまった場合や、お風呂のお湯を出しっぱなしにしてしまった場合などが挙げられます。
賃貸住宅では借りているものを原状 回復しないといけないため、軽度の過失であっても大家さんに対して賠償責任を負わなければなりません。そのため、軽度の過失に基づき、賃貸住宅を損傷してしまった場合には、借家人賠償責任保険という火災保険に付帯する特約による補償に基づき、修理をされるとよいでしょう。
他方で、マンションやアパートなどで下の階の人に損害を与えてしまった場合は、「個人賠償責任保険」で補償されます。
自分が契約している保険会社の内容を確認して「個人賠償責任保険」がついているか確認しておきましょう。
②原因が「他人」の場合
他人が原因の場合は、火災保険による補償を受けられます。
例えば、マンションやアパートの上の階の住人の不注意や給排水設備の破損が原因で、自分の家屋や家財に被害があると対象になります。
基本的には、損害を受けた部分の賠償をしてもらえますが、賠償額は購入した時の金額全てではありません。
購入時の値段から、経過年数や消耗分を差し引いた時価が計算され、その額が賠償額となります。
時価は購入時の金額よりも低いことが多いので注意しておきましょう。
③原因が「配管」の場合
水濡れの原因が床下にある配管だった場合は、どのように補償を受けられるのでしょうか。
この場合は、配管の設置箇所が「専有部分」か「共有部分」かによって、補償される保険が変わります。
一般的な規約では、玄関から内側は「共有部分」で、外側は「専有部分」と明記されていることが多いです。
自宅の床下の配管が原因なら「専有部分」になるので、水濡れを起こした住宅の持ち主が補償しなければなりません。
「共有部分」で配管の事故が発生している場合は、マンション組合が契約している賠償責任保険で補償してもらえます。
ただし、この場合も賠償額は時価計算なので注意しておきましょう。マンション組合によって契約している保険会社は異なるので、規約をしっかり確認しておきましょう。
④原因が「自然災害」の場合
原因が「自然災害」の場合は、「水濡れ」の対象ではありません。しかし、火災保険には「水災」と「風災」の2種類の補償があります。このどちらかに当てはまっていれば、補償を受けることができます。
「水災」は、集中豪雨や洪水、土砂崩れなどにより住宅や家財が損害を被った時に対象になります。
川が氾濫して床上浸水してしまったり家屋が破壊されてしまったりした場合も補償されます。火災保険の「水災」では、契約時に保険の対象を「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」の3パターンを選びます。それぞれ補償の条件や内容は異なります。
火災保険の「水災」では、下記の要件に当てはまった場合に損害保険金が支払われます。
- 再調達価額の30%以上の損害を受けた場合
- 床下浸水または地盤面から45cmを超えて浸水した場合
「風災」は、台風の風によって屋根の一部が破損し、吹き込んだ雨で家屋や家財に被害が生じている場合などに対象となります。
その他にも、台風や強風で物が飛ばされ屋根に当たり、屋根の防水シートが破れて雨漏りになった場合などは「風災」の対象です。
自然災害が発生し、被害が発生したら 諦めず火災保険会社に一報を入れましょう。
「マンション」か「一戸建て」による補償内容の違い
火災保険の内容は、マンションか一戸建てかで異なることがあります。
例えば、木造や鉄筋コンクリート造といった構造上の差や、近隣や上階の住人による事故が影響するといった部分に違いがあり得ます。
ただし、保険金という意味では、構造・築年数・床面積などの個別事情が大きく関係しますので、特に『マンションだから』『一戸建てだから』といった理由で相場に違いがあるという訳ではありません。
主に一戸建てについて考えられる事故としては以下のような場合が考えられます。
- 水道管の凍結による破損
- 木造屋根の破損による雨漏り
- 突風など風災による損害
- 門・ブロック塀・ガレージや倉庫などの所有物の破損
一方、主にマンションなどの集合住宅について特有ものとしては以下のような場合が考えられます。
- 上階や隣の部屋の給水管の破裂等による間接的な被害
- 上階からの漏水による被害
支払われる保険金の種類
支払われる保険金の種類は、損害が生じた原因によっていくつかに分類されます。
以下では、損害の原因によって分類される保険金の種類を、一般的な表現でいくつかご紹介します。
修理付帯費用・臨時費用
広い意味で、保険対象物の復旧・修理について発生した費用を指します。
修復・修理のための損害原因の調査費用や、復旧後の調整・点検・試運転の費用、建物を建て替える際の仮設物の設置、撤去の費用なども、これに含まれます。
請求権保全・行使手続費用
火災等の保険事故の原因が他人の過失(放火や失火)による場合、その者に対し損害賠償を請求することができますが、その際の手続きに必要な実費のことを指します。
民事保全法に基づく仮差押え、差押、裁判費用なども含まれます。
失火見舞
火災等の保険事故によって、近所の方の所有物や通行人など第三者に損害が生じたときの、当該第三者へのお見舞等を指します。
自己所有のマンションでの水漏れにより下階に被害が及んだ場合に下階住人に支払う損害金についても、こちらに該当します。
地震火災費用
地震・噴火またはそれを原因とする津波によって火災が引き起こされた場合の損害に対する保険金を指します。
屋外の設備等の修理費用なども含めて指すことがあります。
損害(拡大)防止費用
消火器、消火薬剤等の被害拡大を防止する用具・道具を再度用意するための実費を指します。
なお、これらの保険金の『分類』は、特に保険法上に定義があるわけではなく、各保険会社が呼称しているに過ぎません。
しかし、あえてこのように分類することで、特約による保険の適用範囲を明確にすることに役立っています。
水濡れの被害でも補償されないのはどのような場合?
水漏れの被害でも火災保険により補償されない例として、以下のようなことが考えられます。
- 『水濡れ』の特約を結んでおらず、補償範囲の対象外となる場合
- もともと存在していた壁のヒビからの雨漏りや、経年劣化による場合
- 故意による事故や、重大な過失によって水漏れが起こった場合
- 戦争その他の変乱によって生じた損害の場合
- 3年間の消滅時効にかかった場合
まず、契約の内容として水漏れが補償範囲に含まれていない場合には、当然ながら対象となりません。
雨漏りについては前述のとおりですが、基本的には補償の対象外です。
雨漏りの場合は経年劣化による被害である場合が多く、民法上においても所有者が管理・修繕義務を負う箇所であるためです。
ただし、台風や突風により屋根が損傷し、その結果雨漏りとなった場合には『風災』によって補償されます。
そのほか『ひょう災』『雪災』などの特約によっても、同様に補償される場合があります。
その他、よくある例としては家財保険の特約が挙げられます。
水漏れにより壁や給排水管の修理が補償される場合でも、冷蔵庫やテレビについては、別途『家財保険特約』が必要な場合があるため、その特約が無ければ補償の対象とならないことがあります。
また、例えば水漏れの原因がマンションの上階に住む第三者である場合には、テレビ等の家財は家財保険特約によって補償の対象となり得ますが、特約を結んでいない場合には上階住人に対し直接損害賠償を求めることになるでしょう。
次に、故意や重過失についてです。
故意とは『わざと』という意味です。この場合は、当然ですが保険の対象にはなりません。
重過失とは、先ほどの例でいうと、上階からの水漏れに気づき対処することが容易だったにも関わらず、テレビや冷蔵庫への浸水を放置したような場合を指します。
『保険金を頂いてテレビを新しく買い換えてやろう』『上階住人を困らせてやろう』などと不純なこと考えてあえて水漏れを放置してしまうと、事故の原因自体は自身にないとしても補償の対象から外れてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
戦争その他の変乱が原因となる場合については、故意過失とおなじく保険法17条に定められており、保険会社の免責対象となります。
時効については、保険法第95条で定められるとおり、請求できるときから3年の消滅時効にかかります。
- 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条又は第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
- 引用元:保険法第95条
水濡れの際に火災保険の保険金を請求する流れ
ここからは、水濡れが実際に発生してしまった際に、保険会社へ保険金を請求するまでの流れを解説していきます。
大きな流れとしては、以下のステップで進めていきます。
- 1保険会社へ連絡する
- 2保険金の請求に必要な書類を提出する
- 3保険会社による現場調査・審査
①保険会社への連絡
損害が発生したら、まずは保険会社に連絡するようにしましょう。
インターネット上で『○○(保険会社名) 火災保険 請求』と検索すれば、おおよそ保険会社窓口の連絡先がわかります。
保険会社では緊急の事情に対応するため、24時間体制のコールセンターを置いているところがほとんどですので、事故後の方針を確認する意味でも、まず保険会社へ連絡するとよいでしょう。
保険証券を手元に用意できるのであれば、電話番号および証券番号の記載があるため、保険会社との話はスムーズに進めることができます。
最近では、自動車保険ともセットになるワイドタイプの火災保険もあり、その場合は車に保険証券を載せる方が多いですので、ご確認してみてください。
電話がつながったら、案内に応じて手続きを進めることとなります。
一般的には保険金を請求するための書類を取り寄せ、必要書類を揃えて提出することになるでしょう。
②保険金の請求に必要な書類を提出する
請求に必要な書類が準備できたら、保険会社に提出します。
提出する書類として、保険会社から取り寄せた書類のほか、修理業者等による見積書、事故調査報告書、被害の原因がわかる写真などが必要となります。
保険会社に連絡した後は、速やかに修理業者へ連絡しておくと、その後の手続きがスムーズです。
事故原因が水漏れの場合、時間が経過することにより証拠が分かりづらくなることもありますので、被害の証拠写真はできるだけ多く撮り、複数の機器でバックアップしておくようにしましょう。
さらに、第三者への損害賠償請求が必要な場合や失火見舞の支払いが必要な事例では、賠償金の算定が複雑になる場合もあります。
その際は専門の弁護士へ相談が必要になるでしょう。
③保険会社による現場調査・審査
保険会社へ必要書類が届けられると、保険金の支払いが可能かどうかの審査が行われます。
審査の内容、書類の不備、または請求金額が高額になるような場合には、保険会社から現地調査に来る場合があります。
なお、修理を先に完了させた場合には、事故原因についての証拠が充分に残っていないと、審査が長引くか最悪の場合には不支給と判断されることもあります。
火災保険については、事故を装い保険金をだまし取ろうとする詐欺事件も少なくありません。必ず支給が決定されるものではないと考え、しっかり証拠を残しておく事が大切です。
審査に問題がなければ、保険金が支払われます。
まとめ
ここまで、主に水漏れの事故が起こった場合の火災保険の補償について解説してきました。
保険金は一般的に高額になるものであり、原因がどこにあるかの断定も難しいため、保険会社の判断に納得がいかずに訴訟に発展することも珍しくありません。
また、第三者が絡んで損害賠償が必要となるような場合には、損害金の算定が難しく、相手方に請求する手続きも大きなストレスになりがちです。
お困りの際はお一人で抱え込まずに、まずは保険会社及び弁護士に相談すると良いでしょう。
保険金の不払いに
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保険会社への対応に疑問を感じた時は、交渉のプロである弁護士にお任せください。
ご相談内容に応じて、代理請求・示談交渉、そんぽADRセンターへの申立て、訴訟提起をいたします。
時効で権利が消滅することもあるので、ご連絡はお早めに。
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