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弁護士コラム

火災保険で雨樋の損傷は補償される?適用の条件と申請までの具体的な流れ

対象、補償内容 火災保険
投稿日:2022年03月16日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
大雪の影響により、雨樋が一部壊れてしまいました。
火災保険で補償されますか?
Answer
可能な場合があります。
ただし条件として、『自然災害による損傷であること』『損害の総額が20万円以上(ただし特約次第)』『損害が発生して3年以内の損傷であること』が挙げられます

雨樋の機能と損傷例

雨樋の本来の機能・役割とは

雨樋は建物に降った雨や雪による水を寄せ集め、地面の排水溝へとスムーズに送るための設備です。
屋根に降った雨水を軒先が受け止め、地上・下水へと流してくれるという仕組みです。

雨樋があることで、建物に水分が蓄積するのを防ぎ、建物が腐食してしまうのを予防するという役割を果たしてくれます。
また、家に水がかかる可能性も減るので、外壁が汚れてしまう心配も限りなく無くなります。
雨樋は普段はあまり気にしない部分ではありますが、自分の家のためにとても大きな役割を担っています。
雨樋がちゃんと機能しているか否かで、家の寿命は大きく異なってきます。

雨樋の損傷事例


雨樋の損傷事例として1つ挙げられるのは、雨樋にゴミが詰まってしまうというものです。

建物に落ちてきた葉っぱ・砂・土、その他のゴミは、雨風に流されて雨樋へと入り込んできます。
雨樋の中をスムーズに通り抜けることが出来ないほどの大きさのゴミが蓄積してしまった場合、雨水の流れをせき止めてしまい、雨樋本来の役割を果たすことが出来なくなってしまいます。

これを放置していると、カビやコケが生えてしまったり、雨漏りをする原因となり,衛生的にも悪くなってしまいますので、気づいたら直ちに対処をしなければなりません。

また、もう1つ挙げられる損傷事例は雨樋が自然災害で歪曲等して破損してしまうというものです。

雨樋は当然のことながら普段の雨風には耐えられるように設計されておりますが、台風や大雪のように想定外の強風・大雨・大雪が起こった場合には曲がってしまったり穴が開いて破損してしまうこともあります。

このような場合も、雨樋本来の機能が停止し、屋内への雨漏りを誘発してしまうので、直ちに修理をしなければなりません。

また、これを放置していると、雨樋から水が落ちて水しぶきを起こしてしまうので、自分たちだけではなく近所の迷惑にもなってしまうこともあります。ご近所トラブルになってしまう前に対処するのが良いでしょう。

他にも、雨樋を支える器具が故障してしまい、雨樋が外れて下にぶら下がってしまうようなこともあります。

これは、家の安全だけではなく、落下すれば通行人が怪我をしてしまう可能性等もあり、極めて危険ですし、歪曲等による破損と同様に水しぶきを起こしてしまう原因にもなります。

雨樋の損傷に火災保険が適用される条件

原因が自然災害であること

火災保険と聞くと「火事の被害に遭った時のみが保険の対象になる」と考えている方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。

雨樋の損傷に火災保険が適用される条件としては、「原因が自然災害であること」が挙げられます。当然、経年劣化や業者のミスによる損傷などは対象外となります。

火災保険の内容によっては、衝突や盗難等のいわゆる「人災」が対象となっている場合もありますが、雨樋の場合はこれに該当することはあまり多くはないです。

ただ、この「自然災害」という言葉はあまりにも抽象的すぎるので、具体的にどのような被害が「自然災害」に該当するのかについて説明していきます。

「自然災害」の定義


火災保険における、自然災害の定義は「落雷・風災・雹災・雪災・水災」となっています。

詳しくまとめると以下の通りです。

①落雷:
雷による被害によって屋根に穴が空いてしまう等の被害がこれに該当します。雨樋の損傷理由としてはあまり見られることはありません。

②風災:
暴風や竜巻などの風による被害。一般的に強風の条件としては、最大瞬間風速が秒速20km以上とされている(気象庁ホームページより)。

強風によって雨樋が歪曲したり、また、風によって飛んだ来たものが雨樋に当たって損傷するという被害がこれに該当します。雨樋の損傷の原因として雪災に次いで多いです。台風による洪水や高潮は該当しません。


③雹災:

降雹による被害。雹はとても硬いため、雨樋にぶつかると凹みを作ってしまったり穴を空けてしまったりするという被害がとても多いです。


④雪災:

雪崩や大雪による被害。重なった雪の重みによって雨樋が歪んでしまったり、穴が空いてしまうことがあります。

雨樋損傷の原因として最も多く、保険会社にも損傷の証明がしやすいです。


⑤水災:

台風・暴風雨・豪雨等による洪水・高潮・土砂崩れ・落石によって生じた被害。

床上浸水等が起こった場合がこれに該当します。雨樋損傷の原因としてはあまり見られないでしょう。

以上の5つが火災保険における「自然災害」に該当します。

なお「地震・噴火またはこれらによる津波」は自然災害に該当せず、これらに関しては別途「地震保険」への加入が必要になるので注意が必要です。

自然災害による雨樋の損傷として多いのは、風災や雪災の2つになります。

また、皆様が加入されている火災保険の中にはこれらの自然災害全てが対象となっていない場合もありますので、その点は入念にチェックをしておきましょう。

損害の総額が20万円以上(特約次第)

火災保険の中には、以上の自然災害が原因であることに加えて、損害の総額が20万円以上であることも条件とされているものがあります。
損害総額が20万円以上の場合、保険金を上限額まで受け取ることが出来るというシステムです。

そもそも損害総額とは、修理において発生する修理費と全く同じと考えて良いので、「損害総額=修理工事費用の見積もり」と考えて良いでしょう。

例えば、損害額が22万円の場合は保険金として22万円を全て受け取ることが出来ます。
一方で、損害額が20万円に満たない19万円の場合には、保険金を1円も受け取ることが出来ません。

部分的な雨樋の工事の場合は20万円に満たないことがあります。ただ、雨樋の修理工事は「足場工事」をする必要がある場合がほとんどであるため、足場工事の費用(10万円程度〜)も含めた雨樋修理費用を保険会社に請求するようにしましょう。

これは、火災保険の中でも「フランチャイズ方式」と呼ばれているもので、その他には、損害額があらかじめ設定した自己負担額を超えている場合、その超過分を保険金として受け取ることが出来る「免責方式」もあります。
損傷総額が20万円より低くても保険金を受け取ることが出来るのが特徴です。

例えば、自己負担額を7万円と設定し、実際の損傷総額が19万円だった場合は、「19万円–7万円=12万円」という計算式で、7万円を自己負担した上で残りの12万円を保険金として受け取ることが出来ます。

保険会社によってフランチャイズ方式なのか免責方式なのか異なりますので、自分の加入している火災保険がどちらの方式なのかを確認しておく必要があります。

火災保険の補償対象とするためにも、1つだけではなく複数の修理業者から見積もりを出してもらってどの業者にお願いするかじっくりと考えるのが良いでしょう。

損害が発生して3年以内の損傷

自然災害が原因となる雨樋の損傷は、被害に遭った日から3年以内に申請しなければなりません。

自分では被害に遭った日が具体的にいつなのかはわからないかもしれませんので、そんな時は、プロである修理業者に調査をお願いするのが良いでしょう。

また、3年以内に工事に着手・完了している必要は無く、3年が経過するまで火災保険申請の電話を入れてしまえば適用されます。なので変な話、ちょうど3年が経過してしまえば、当日でも、大急ぎで電話を入れてしまえば保険が適用されるということになります。

台風や大雪などが起こった後は定期的にチェックするのが一番良いでしょう。

雨樋の損傷に火災保険が適用されないケース

雨樋が損傷したからといって、どのような場合でも火災保険が適用されるわけではありません。
損傷の原因によっては修理・リフォームに火災保険が適用されないケースもあります。

雨樋の損傷に火災保険が適用されないケースとしては以下の2つが挙げられます。

・被保険者の故意または重大な過失による損害
・経年劣化による損害

ひとつめの、被保険者が故意または重大な過失により自ら損傷させた場合に火災保険が適用されないというのは納得しやすいでしょう。
一方で、若干わかりにくい経年劣化という考え方について、以下でご説明します。

経年劣化による損傷

火災保険とは、火災や風水害などによる損害を補填するために用意されているものです。
つまり、雨樋を使用しているうえで当然に想定されるダメージ、つまり経年劣化による損傷には適用されません。

経年劣化とは読んで字のごとく、時間の経過によって問題が生じている状態をいいます。

例えば、長く使用したために傷がついた、穴が開いたといった損傷は経年劣化に該当します。
火災や台風など何らかのきっかけがあり損傷したわけではなく、“何もしていないけれど”、“徐々に”傷んだ場合と考えると良いでしょう。

しかし実際には、雨樋のように常に雨風にさらされているような部分については、経年劣化による損傷なのか、あるいは自然災害による損傷なのか区別がつかないことも多々あります。
そのような場合には、信頼できるリフォーム会社や工務店などに相談し、調査してもらうと良いでしょう。

調査の結果、雨や風などの影響による損傷だと確認されれば、火災保険を適用しての修理が可能だと考えられます。

雨樋の破損で請求する場合の申請の流れ

雨樋の破損・損傷が自然災害によるものであった場合の火災保険申請の流れを確認していきましょう。

始めにざっくりとした流れをお伝えすると、以下の通りです。

  1. 1保険会社へ連絡をする
  2. 2必要書類を取り寄せ、提出する
  3. 3保険会社・鑑定会社による現場調査を受ける
  4. 4(申請が通ったなら)保険金を受け取る

それぞれの段階における手順や注意点などをご説明します。

①保険会社への連絡

保険金の請求を行うために、まずは、自身が加入している保険会社に電話などで連絡をします。この時、契約者の情報を聞かれますので、保険証券を手元に用意しておきましょう。

また、損害が発生した日時や原因なども聞かれます。いざとなると上手く説明できなくなることもありますから、わかる範囲で構いませんので状況を整理したメモなどを用意しておきましょう。

保険会社への連絡は電話で行うのが一般的ですが、中にはインターネットでの受付を行っている保険会社もありますので、その場合にはフォームへの入力を行います。

なお、わからないことや不安なことがある場合には、この時点で聞いておくと良いでしょう。

②保険金の請求に必要な書類を提出する

電話などでこちらから必要な情報を伝えると、保険会社から保険金の請求に必要となる書類が送られてきますので、それらに記入をし提出します。

保険金の請求をするために必要となる書類は保険会社によって異なることもありますが、代表的なものとしては以下の4つがあります。

「保険金請求書」……文字通り「保険金を請求します」という意思を示すための書類です。
                                  契約者本人が記入します。

「事故状況説明書」……事故(雨樋の損害)が発生したときの状況を記載した書類です。
                                     こちらも契約者本人が記入します。

「修理費用の見積書」……リフォーム会社などの修理会社に破損した雨樋の調査を依頼し、見積書を作成してもらいます。

「被害個所の写真」……破損した雨樋の写真を複数枚用意します。本人あるいは修理会社が撮影します。
             危険な場所の撮影は自身で行わず、修理会社に依頼したほうが良いでしょう。

以上の必要な書類をすべて揃え、保険会社に申請・請求を行います。

なお、「修理費用の見積書」をとるにあたっては、1社ではなく複数の業者に見積もりを出してもらい比較することが大切です。
見積もり金額の妥当性や業者の対応などを比較したうえで1社に決め、修理工事のための契約を行います。

数ある修理業者の中には悪徳業者と呼ばれるものも存在しますから、そういった会社による被害に合わないように注意しましょう。

③保険会社・鑑定会社による現場調査・審査

被害額が大きい場合には、保険会社から派遣された鑑定人が現場に調査に来て、その結果をもとに審査をする場合があります。被保険者立ち会いのもと、調査は行われます。

鑑定結果によっては、補償請求額を減額されたり、場合によっては、保険金の支払いを拒否される可能性もあります。
写真を残しておくことはもちろんですが、被害の証拠となりうるものは保管しておきましょう。

万一、鑑定人の調査結果に不満があり、再調査を希望する場合は、保険会社に請求して調査を受け直すことも可能です。

まとめ

雨樋の修理は火災保険で補償される場合があります。これまで解説したとおり、条件によっては修理不可の場合があります。

条件の中でも難しいのは、自然災害による損傷であると保険会社に認めてもらうことでしょう。
そのためには、事故の状況を詳細にメモに残し、証拠写真も揃えておくことが大切です。

期間制限もありますので、早めに保険会社に連絡し、対応するようにしましょう。

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