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弁護士コラム
火災保険でトイレのつまりによる汚損は補償される?適用されないケースと請求の流れ
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
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この度、トイレの水漏れにより壁紙が汚損されました。
火災保険で補償されますか?
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加入している保険によっては、補償される可能性があります。
しかし、火災保険に入っていればOKということではありません。
保険商品によっては、水漏れの被害を補償しないものもあります。契約している火災保険に「水漏れ被害」が付帯しているかどうかを保険証書で確認しましょう。
目次
火災保険の対象
「火災保険」という名称から、火災事故以外での補償がないように思われがちなのですが、実は火災保険は結構幅広く、自然災害や突発的な事故による被害に対して補償を受けることができるのです。
保険会社によっては、従来の火災保険を「住まいの保険」などという名称に変えて、火災オンリーではないことをアピールしているものもあります。
火災保険の基本補償内容は、
(1)火災(延焼やボヤも含む)、(2)落雷、(3)ガス漏れなどによる破裂、爆発など、(4)落雷、(5)台風などによる暴風、(6)豪雪、吹雪、雹など、(7)台風による豪雨やそれによる洪水、高潮、土砂崩れ、(8)水漏れ、(9)物体の落下、飛来、衝突(例えば、車の飛び込みや岩石の落下など)、(10)騒擾、暴動、デモなどによる暴力、破壊行為、(11)盗難、損傷、汚損、(12)その他の不測の事故、突発的な事故(例えば、子どもが室内でボールを投げて、窓ガラスを破損)です。
こうしてみると、「火災保険」の「火災」は、カバレージのほんの一部だということがわかります。
これらをカバーしてくれる火災保険の対象となるのは、大きく分けて「建物」と「家財」になります。
火災保険を契約するときには、この対象をはっきりとさせる必要があります。
もう一つ重要なことがあります。
地震による損害に対しては、火災保険では補償は受けられません。地震のすべての被害をカバーするのは地震保険だけです。
建物
火災保険で言う「建物」とは、文字通り、家屋などの建物を指しますが、建物そのものではない門、塀、垣、物置、ガレージ、ガレージのシャッター、カーポートなどの建物に付属するものや、建物内部の畳や建具、その他の従物や電気、ガス、冷暖房設備(エコキュートやソーラーパネル)なども含まれます。
一般的な火災保険の約款にも、「その他の付属設備物置、車庫その他の付属建物に収容される家財および宅配ボックス等または宅配物は、特別の約定がないかぎり、家財一式に含まれます」(損保ジャパンの「個人用火災総合保険」の約款より)とあり、「建物」の範囲はかなり広くなっています。
家財
「家財」の方は文字通り家財なのでわかりやすいと思いますが、原則として「建物」内に収容されているものです。
ただし、注意しなければならないのは、保険加入申込書に明記していないと補償されない家財があるのです。これを「明記物件」といいます。
例えば、ボヤになって納戸の一部が焼けた場合、何が焼失したかをあとから申告できたのでは、被保険者が過大に申告して、「焼け太り」になってしまう可能性もあります。
そのため、高額なものに関しては「明記物件」として事前申告が必要になっており、そうすることで本当の被害額を確実に保証することができます。
ただし、一般に以下のようなものは、「家財」に含まれません(参考:損保ジャパンの「個人用火災総合保険」の約款。特約のある場合は除きます)。
自動車(自動三輪車、自動二輪車を含む。総排気量125cc以下の原動機付自転車は例外で家財に含みます)、船舶(モーターボートなど)、航空機、通貨、小切手、有価証券、預貯金証書、印紙、切手、乗車券(定期券は例外)、その他、これらに類する物、商品、製品等、業務用の什器・備品等、コンピュータ用の記録媒体(ディスクやメモリなど)に記録されているプログラム、データなど、貴金属、宝石、書画、骨董品、彫刻などの美術品で、1個または1組の価額が30万円を超えるもの、稿本、設計書、図案、雛形、鋳型、木型、紙型、模型、証書、帳簿その他これらに類する物。
もしも万一の場合にこれらを補償してほしいと思うなら、加入の時点で申告した上で、特約が必要になります。
トイレの水漏れが補償されるケースとは
トイレの水漏れが原因で発生する被害は、以下の3つのケースが考えられるでしょう。
- 1トイレの水漏れの修理費
- 2水漏れで被害を受けたものの修理、修復、買い替えなどの費用
- 3集合住宅の場合、階下の人の「建物」「家財」の被害に対する損害賠償。
このうち、火災保険の「水濡れ補償」で被害額が補填されるのは②だけです。ただし「家財」については、それが保険の対象に含まれている場合だけです。
具体的には、トイレから溢れた水によって、床や壁紙の張り替えが必要になったり、それが原因で使用不能になった電化製品の買い替えが必要になった場合です。
①については、修理費用の特約がなければ、保険金はおりません。
③については、火災保険の「水濡れ補償」ではなく、個人賠償責任保険という別の保険によってカバーされる内容ですが、火災保険の特約としても契約できます。
トイレのつまりによる水漏れが発生した場合
トイレが詰まって水漏れが発生した場合は、前述の②のケースになります。すなわちそれが原因で壁や床などに被害が生じた場合には、火災保険による補償の対象となります。
ただし、先程述べたように、契約内容によっては「水漏れ補償」がない場合もあるので要注意です。
例えば、同じ会社の保険であっても、「住宅総合保険」の場合には、先ほど「火災保険の対象」のところで列挙した基本補償内容の(1)から(12)のすべてがカバーされ、「住宅火災保険」の場合には(7)〜(12)については、オプションやカスタマイズの対象になっている、というような例もあります。
保険証書を確認しておきましょう。
火災保険が適用されない場合
トイレのつまりによる水漏れ被害の場合でも、火災保険が適用されない場合があります。
①トイレの修理費用
トイレがつまったことや故障は、あくまでもトイレそのものの問題であって、トイレの修理費用を 火災保険で保証することはできません。
あくまでも火災保険がカバーするのは「水漏れ」の被害に対するものなので、トイレのつまりが原因で、「建物」に被害が及んだ場合にのみ補償されるものです。
トイレは意外と簡単に詰まるものです。大量のトイレットペーパーや、異物を流さないようにしましょう。
②経年劣化の場合
経年劣化による場合は、水漏れで被害が「建物」に及んでも、火災保険の水濡れ補償の対象にはなりません。
水回りの修理業者の方によると、日頃あまり気にしていない排水管は要注意とのことです。
また、トイレは多くの場合、10年程度が耐用年数と言われています。毎日何度も使うトイレですので、水漏れで被害を起こさないようにメンテナンスはしっかりと行っておきましょう。
③故意に傷つけた場合
あくまでも火災保険の補償の対象となるのは、「偶発かつ突発的」なものに限られます。
そのため、故意に機器を傷つけたり(あまりそういう人はいないでしょうが)、自分で改造したり修理したりしたことが原因で故障した場合や、不注意で起こしたトイレの水漏れで被害が出ても、火災保険で補償されることはありません。
トイレ以外の水漏れ事故でも、洗濯機の排水ホースが外れているのに気が付かずにいたような場合や、お風呂のお湯を溢れさせてしまったような場合には補償されません。
④付属部品が故障した場合
トイレの付属部品とは、具体的には温水洗浄気付き暖房便座(いわゆる「ウォシュレット」など)の装置のことです。最近は一般家庭のトイレにも取り付けられていることが多いです。
スイッチや装置そのものは防水仕様だとは思われますが、万一それが水漏れで故障したり、取り換えが必要になっても、火災保険の補償の対象にはなりません。あくまでも、トイレの「付属品」であるためです。
トイレのつまりの修理時に火災保険の保険金を請求する流れ
トイレにつまりが発生し、水が溢れて「建物」に被害が出てしまった場合、保険金を請求できるかどうかを確かめなければなりません。
まず、保険の補償内容を保険証書などで確認しましょう。
賃貸物件にお住まいの場合、賃借人の方が契約する火災保険は、家財のみであることが通常です。
これは、一般的に火災保険は建物の所有者が加入しますので、通常は賃貸住宅の大家さんが火災保険に加入しているからです。
①保険会社への連絡
まずは、何はともあれ保険会社に連絡しましょう。
加入している火災保険が「水濡れ」被害をカバーしているかどうかを確認することもそうですが、保険商品によっては、補償に条件がついていることもあります。
実際の水漏れ被害に保険が適用されるかどうかを確認する必要があります。手元に保険証書を準備して、電話してください。
②保険金の請求に必要な書類を提出する
必要書類は、保険会社に確認する必要がありますが、一般に以下のものが必要です。
(1)保険金請求書
・被保険者情報(氏名、住所など)、保険金振込先の銀行口座の情報などを記入します。
(2)事故内容報告書
・水漏れによる被害状況や、被害のあった箇所を記入します。
(3)損害明細書
・被害の細かい情報を記入します。
以上の書類は、郵送で請求する場合、保険会社のホームページからダウンロードする場合、オンラインで申請する場合、問い合わせフォームに直接情報を入力して申請する場合など、保険会社によって異なります。
(4)罹災写真
被害状況が写真が必要です。これを罹災写真といいます。
例えば、ボヤを起こしたような場合には、建物全体の写真と、被害を受けた箇所の写真が必要になりますが、水漏れ被害の場合には、水漏れを起こした箇所と、被害を受けた場所の写真を撮っておきましょう。
これは保険金の計算に必要な重要な資料になるので、数枚撮影しておきましょう。
(5)修理の見積書
修理会社が発行した見積書は、(4)と同様に、保険金の計算に必要な資料になります。理想的には、複数の業者から相見積を取り、最適なものを選びましょう。
見積書には、被害を受けた箇所、必要な工事の内容、工事に使う資材の種類や寸法などの詳細情報が明示されているか確認しましょう。
③保険会社による現場調査・審査
被害が大きい場合には、保険会社から派遣された鑑定人が現場に調査に来て、その結果をもとに審査をする場合があります。
被保険者立ち会いのもと、調査は行われます。
鑑定結果によっては、補償請求額を減額されたり、場合によっては、保険金の支払いを拒否される可能性もあります。
万一、鑑定人の調査結果に不満があり、再調査を希望する場合は、保険会社に請求して調査を受け直すことも可能です。
④決定した保険金を受け取り修理する
保険会社によって補償の対象と判断されれば、保険金がおります。
保険金請求書で指定した銀行口座に振り込まれます。
事故の原因が明確で、損害額が少ない場合には、殆どの場合、請求から30日以内に支払われますが、保険金が多額の場合、被害規模が大きい場合は、調査に時間がかかることもあります。
まとめ
トイレのつまりがもとで水が溢れ、壁や床が汚損した場合には、火災保険でカバーされることがあります。ただし、トイレ自体の修理は補償されず、水漏れ被害に限られます。
火災保険は、その名前のイメージとは裏腹に、家庭内で起こる不慮の事故に幅広く対応してくれるものです。
トイレの水を溢れさせる前に、しっかりとメンテナンスすることが大切ですが、ご加入の火災保険の「水漏れ補償」について、ぜひ一度確認してみてください。
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