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弁護士コラム
火災保険でクロス(壁紙)のひび割れは補償できる?適用の条件から保険金の受け取り方まで
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
- Q
- 風災や、家具の移動などが原因でクロスがはがれてしまいました。これは、火災保険で補償されますか?
-
風災や家具の移動などが原因でクロスがはがれた場合には、ほとんどのケースでは火災保険の対象になります。
ただし、実際に補償されるかは加入している火災保険の補償内容や実際の状況によっても異なるので、加入している保険会社に一度確認してみることをおすすめします。
目次
クロス(壁紙)にひび割れ・はがれが起こる主な原因
クロスのひび割れ・はがれの主な原因は、以下の4つです。
- 1クロスの縮み
- 2地震や地盤沈下
- 3日々の振動
- 4建物の構造上の問題
①「クロスの縮み」について、クロスに利用されることの多い塩化ビニールには、熱さや寒さで伸縮するという性質があります。
そのため、寒暖差の繰り返しによって、少しずつ劣化して縮んでしまうのです。
早い場合には1〜2年程度で、クロスの縮みによるひび割れが起きてしまうケースもあります。
また、②「地震や地盤沈下」については、地震や地盤沈下などの自然災害によって地盤が弱くなったため、建物が傾いてクロスにひび割れを生じさせる場合があります。
地盤の修復工事には多額の費用が必要になるケースが多いですが、状況によっては建物の倒壊を生じさせる危険なひびですので、早めの対処が必要です。
③「日々の振動」については、ドアや窓などの開け閉めなどの小さな振動でも、継続的に生じることによってひび割れにつながるケースがあります。
構造部分ではないので緊急を要する場合は多くないですが、放っておくとひびが広がり基礎部分にまで影響を及ぼす可能性もあるので、注意しましょう。
④「建物の構造上の問題」については、建物の構造上の問題でひび割れが生じるケースもあります。
つなぎ目ではない部分や広い範囲に生じたひびは、危険なひび割れの可能性があるので、早めの修復作業が必要です。
クロスのひびやはがれが生じた原因によって、火災保険の対象になるかどうかが決まるので、現状をよく確認しておくといいでしょう。
また、火災保険の申請には期限があるので、クロスにひびやはがれが生じた場合には、早めに保険会社に相談してみることをおすすめします。
クロス(壁紙)ひび割れに適用できる2つの保険
クロスのひび割れに適用できる保険は、下記になります。
- 火災保険
火災保険は、多種多様な原因にもとづく損害を補償対象にできる保険です。
具体的な補償内容や保険料は、各保険会社のプランによって異なるので、事前によく確認しておきましょう。
ちなみに地震保険は、通常の火災保険では補償されない地震や津波を原因とした火災・損壊を補償します。
地震などによる被災者の生活の安定を目的としており、国と保険会社が共同で運営している制度です。
地震保険は、建物の主要構造部に損害が生じた場合に適用されるため、クロス(壁紙)のみのひび割れには適用されません。
こちらについては後述します。
火災保険
前述のとおり火災保険は、火災以外にも、落雷や台風などの自然災害や破損・盗難など幅広い損害に対応できる保険です。
火災保険でクロスのひび割れの補償を受けるには、以下の2つの条件を満たしている必要があります。
- 1火災保険契約で補償対象とされた原因にもとづく損害
- 2損害発生から3年以内に申請
①については、火災保険は保険会社ごとに独自の商品が用意されているので、補償内容が一律ではありません。
補償対象とされた原因にもとづく損害でなければ、火災保険の補償対象外になるので、契約時にしっかり確認しておきましょう。
たとえば、地震保険でカバーされる地震や噴火などが原因の火災による損害は、火災保険では補償対象から除かれています。
また、自然災害以外による予測できない事故によるクロスのひび割れの補償を火災保険で受けるには、「不測かつ突発的な事故」もしくは「破損や汚損」などの特約に加入していなければなりません。
次に、②について、火災保険の申請は損害発生から3年以内という期限が定められています。
そのため、うっかり申請期間を過ぎてしまわないように、クロスのひび割れに気づいたらすぐに保険会社に相談しましょう。
地震保険について
地震保険は、地震を原因とした火災や損壊などで損害を受けた際に適用される保険です。
地震保険には、以下の3つの特徴があります。
- 1地震保険単独では契約できない
- 2実際の損害を補償するわけではない
- 3補償内容や保険料はどこの保険会社でも同じ
①については、通常の地震保険は火災保険に付帯されているので、単独で加入はできません。
また、②について、火災保険は実際の損害を補償しますが、地震保険の法的性質は、実際に発生した損害の割合に応じて、下記の支払基準に従い一定額の保険金が支払われます。
全損 | 保険金額の100% |
大半損 | 保険金額の60% |
小半損 | 保険金額の30% |
一部損 | 保険金額の5% |
損害の程度の認定基準は、次の通りです。
※建物の場合 (クロスは「建物」「家財」のうち、「建物」に該当します)
基準 | |
全損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合 |
大半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合 |
小半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合 |
一部損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合 |
よって、明らかに地震を原因として、壁も含むクロスに大きくひび割れが生じた場合でも、クロスは「主要構造部」とはいえないため、クロス単体では地震保険の損害認定の対象にはなりません。
最後に、③について、地震保険は政府と民間の損害保険会社が共同で補償する形になっているので、各保険会社によって保険料などは異なりません。
火災保険はクロス(壁紙)の張り替え時にも使えるのか
前述のとおり、火災保険でクロスのひび割れ補償を受けるには、以下の2つの条件を満たしている必要があります。
- 1火災保険契約で補償対象とされた原因にもとづく損害
- 2損害発生から3年以内に申請
火災保険は自然災害によって生じた損害以外にも、「不測かつ突発的な事故」によって生じた損害を補償対象にできます。
「不測かつ突発的な事故」や、火災保険の補償が受けられる事例・受けられない事例にどのようなものがあるかについて、具体的に確認していきましょう。
補償が受けられる「不測かつ突発的な事故」
「不測かつ突発的な事故」で補償を受けるためには、通常予測できない突発的な事故によって生じた損害が必要です。
たとえば、転倒した拍子にコーヒーを壁にかけてしまい、壁一面にシミができてしまったような場合には、予測ができない突発的に生じた事故といえるので補償が受けられます。
「不測かつ突発的な事故」でクロスのひび割れの補償を受けるには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
- 1「不測かつ突発的な事故」または「破損・汚損」などの特約に加入
- 2「不測かつ突発的な事故」による損害
- 3損害発生から3年以内に申請
①については、「不測かつ突発的な事故」または「破損・汚損」の特約は、保険会社によっても名称が異なりますが、基本的に同一の補償内容であると考えていいでしょう。
補償が受けられる事例
以下のような事例の場合は、原則として火災保険の補償が受けられます。
- 1家具の配置換えをしたときにぶつけてクロスがやぶれた
- 2子どもがクロスに落書きをした
- 3自然災害が原因でクロスにカビが生えた
もっとも、一定の場合には、火災保険の補償が受けられないケースもあるので補足していきます。
①について、予測できない突発的な事故によりクロスがやぶれているので、契約で「不測かつ突発的な事故」などが対象と定められていれば補償されます。ただし、3年の申請期限を過ぎないように気をつけましょう。
また、②についても、「不測かつ突発的な事故」として基本的に認められます。子どもの動きは予測ができないため、クロスへの落書きは予測できない突発的な事故であるといえるからです。
ただし、軽微な落書きの場合は、クロスを取り替える必要がないと保険会社に判断されて補償を受けられない可能性があるので、注意しましょう。
最後に、③について、自然災害が原因でカビが生えた場合には火災保険が適用されます。
しかし、湿気がこもりやすいなど建物自体の構造上の問題や、換気をしないなど不適切な管理によってカビが生えた場合には、補償の対象外です。なぜなら、自然災害が原因で生じた損害ではなく、「不測かつ突発的な事故」ともいえないからです。
クロス(壁紙)の張り替えに保険が適用されないケース
クロスの張り替えに保険が適用されないケースとして、以下の3つが挙げられます。
- 1猫などのペットが傷つけた場合(例外あり)
- 2経年劣化の場合
- 3故意に傷つけた場合
保険が適用されない理由としては、「不測かつ突発的な事故」と判断できないことや、補償するに値しない軽微な傷であることが挙げられます。
もっとも、例外的に火災保険の対象になる場合もあるので、一つずつ詳しく確認していきましょう。
①猫などのペットが傷つけた場合(例外あり)
猫などのペットが、クロスをひっかいたりかじったりして傷をつけたとしても、火災保険の補償は受けられないのが通常です。
ペットがひっかいたりした程度では、クロスの機能の喪失や低下をさせるような傷だとは通常認められないからです。
また、猫などのペットを室内で飼っていた場合、クロスを傷つけられるのは日常的にあり得ることであり、「不測かつ突発的な事故」とはいえないでしょう。
もっとも、ペットの行為によるすべての損害が、火災保険の対象外になるわけではありません。
たとえば、ペットが何かのはずみで棚を倒してクロスに大きな傷をつけた場合には、クロスの機能の喪失や低下をさせる傷であると判断されて、対象になる可能性があります。
また、ペットが重い電化製品を何かの拍子で落として壊してしまった場合には、不測かつ突発的な事故であると判断されて、火災保険で補償される場合があります。
具体的な状況や各保険会社によっても火災保険の対象になるかの判断は異なるので、まずは保険会社に連絡して相談してみるのがいいでしょう。
②経年劣化の場合
経年劣化で生じたクロスの損壊によるクロスの張り替えは、火災保険の対象外になります。なぜなら、経年劣化は日々の利用により当然発生するものであり予測が可能で、突然生じるものでもないので「不測かつ突発的な事故」とはいえないからです。
もっとも、経年劣化の損害に見えて、実は自然災害が原因だったという場合もあります。
たとえば、雨漏りや水漏れが生じた場合、経年劣化だと思っていたら、実は過去の台風などの自然災害が原因であったというケースは多いです。
もし雨漏りや水漏れの原因が経年劣化であれば火災保険の対象外ですが、過去に起きた自然災害が原因だった場合には、火災保険の対象になります。
雨漏りなどの場合には高額な補償が受けられるケースも多いので、損害の原因を素人の判断でするのではなく、一度保険会社や専門のサポート業者などに相談してみましょう。
③故意に傷つけた場合
故意に傷つけた場合のクロス張り替えにかかる費用は、火災保険の補償対象外になります。
わざと傷つけた場合には、「不測かつ突発的な事故」とはいえないからです。
また、故意に傷つけた場合にまで補償を認めると、不当請求などの悪質な案件につながるケースも想定されます。
故意に傷つける場合の具体例としては、壁を殴って穴ができた場合や、自宅を放火するような場合があります。
壁に穴ができた場合や放火された場合は、火災保険で補償されるケースがほとんどですが、故意にやってしまった場合には補償は一切されませんので注意しましょう。
クロス(壁紙)の張り替え時に火災保険の保険金を請求する流れ
クロスの張り替え時に火災保険の保険金を請求する流れは、以下のとおりです。
- 1保険会社への連絡
- 2保険金の請求に必要な書類を提出する
- 3保険会社による現場調査・審査
- 4決定した保険金を受け取り修理する
火災保険の保険金は、申請者からの請求がなければ支払われません。
保険金の請求期間は3年間しかないので、手続きの流れを把握して、早めに行動していくようにしましょう。
一つずつ詳しく確認していきましょう。
①保険会社への連絡
クロスの張り替えが必要になる損害を発見したら、早めに保険会社などに連絡をしましょう。
連絡先は保険証書や契約のしおりに記載されている場合が多く、保険会社によっては事故受付用の専用Webサイトが用意されています。
連絡の際に必要となる主な情報は、以下のとおりです。
- 契約者名
- 保険証券の番号
- 事故の日時・場所
- 事故の状況や原因
- 損害の程度
事故の原因や損害の程度が把握できていない場合でも、まずは被害状況などの現状を伝えましょう。
保険会社の担当者は対応に慣れているので、今後の動きなどを丁寧に説明してくれます。
②保険金の請求に必要な書類を提出する
各保険会社からの案内に沿って、保険金の請求に必要な書類一式を準備して提出する必要があります。
保険会社や状況によって異なりますが、主な必要書類は以下のとおりです。
- 保険金請求書
- 修理会社からの見積書
- 被害箇所の写真
- 罹災証明書(損害状況によっては不要)
被害箇所は高所であったり、素人にはわかりにくい部分であったりするケースが多いので、修理会社から見積もりをとる際に、写真撮影まで依頼しておくとスムーズです。
罹災証明書とは、暴風・豪雨などの自然災害による住居の被害の程度について証明するもの。
保険会社から求められた場合には、市町村に申請して発行してもらう必要があります。
③保険会社による現場調査・審査
提出書類や申請金額などから必要と判断された場合、保険会社から「損害保険登録鑑定人」と呼ばれる住宅の損害を鑑定する専門家が現地調査に来ます。
現地調査によって、損害額の算定や事故の原因・状況の調査が行われます。
現地状況と見比べて、提出された被害状況や見積り金額などに問題がないかの確認がされるのです。
損害保険登録鑑定人による現地調査が行われる明確な基準はありませんが、提出した書類で被害状況がわかる場合や、損害規模が少ない場合には省略されるケースも多いです。
逆に、申請金額が100万円以上と高額な場合や、提出した書類に不備などがあった場合には、現地確認の必要ありと保険会社に判断される可能性が高くなります。
④決定した保険金を受け取り修理する
提出した資料や現地での調査結果を踏まえて、保険会社が保険金の額を確定します。
その後、契約者の了解を得た上で、保険金額が入金されるという流れです。
火災保険の保険金支払い期限は保険法によって明示されており、保険金請求が完了してから原則30日以内に支払われます。
必要書類で被害状況の把握が十分にできた場合には、早ければ2日程度で支払われるケースもあるようです。
現地調査が行われた場合には、原則の支払期限である30日を超える場合もあります。
もし大幅に期限を超過しているような場合には、どこかで手続きがとまっている可能性もあるので、一度保険会社に確認してみることをおすすめします。
保険金を受け取ったら、見積もりをとった業者などに、クロスのひび割れの修理を依頼しましょう。
まとめ
風災、家具の移動などが原因でクロスにひびやはがれが生じた場合、契約や状況にもよりますが、火災保険で補償が受けられます。
火災保険という名称ではありますが、火災以外のさまざまな場面で補償が受けられる保険です。
火災保険は申請をしないと3年で補償が受けられなくなるので、適用条件を把握し、火災保険の保険金をしっかり受け取っていきましょう。
クロスの張り替えが必要になる損害を発見したら、早めに保険会社などに相談や連絡するのをおすすめします。
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