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弁護士コラム
【ケース別】地震保険の査定の流れから保険金の決まり方まで徹底解説
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
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- 地震で建物が傾きました。保険金の支払はどのようにされますか?査定の流れを教えてください。
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地震保険の査定は保険会社の委託する鑑定士によって損害の状況や損傷の程度が確認さ れ、その調査結果に基づいて保険会社は保険金額を決定し支払います。
地震保険は損壊の程度によって支払われる保険金額が変わる仕組みになっており、建物の場合にはその主要部分(建物の基礎部分や屋根、外壁、 軸組 (柱)) がどの程度損壊しているかによって判断されることになります。
そのため、建物が傾いている場合にはそれによって基礎部分や外壁、柱などがどの程度損傷しているかを鑑定士は主にチェックし査定します。
地震保険の補償内容
地震保険は、地震・噴火・津波を直接または間接の原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償するものです。したがって、補償内容はこうした地震や、火山の噴火、津波などによって起こった火災、損壊、埋没や流出などにより家屋や家財が損傷した場合に補償を行うものになります。
また、地震保険の特徴として火災保険とセットで契約されるものであるという性質があります。そのため、補償額は火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内で補償額が決まる仕組みになっています。
以下では地震保険の補償内容などについて詳しく解説します。
地震保険の補償内容とは
地震保険の補償内容は、居住の用に供する建物および家財(生活用動産)が対象とされています。つまり、家やその中にある家具などが対象となることになります。
ここでポイントになるのは、建物は、居住の用に供する建物であるという点が重要で、工場や事務所専用の建物など住居として使用されない建物となるため対象から外れます。
家財については30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手、自動車等といったものについては、地震保険の対象から外れています。
また、火災保険と異なり修理などに要した費用を補填するのではなく、あらかじめ定められた割合での保険金が支払われるという補償内容である点についても特徴があります。
地震保険の対象となる損害の例
地震保険の対象となる損害の主な例には以下のようなものがあります。
- 地震によって火災が発生し、家が全焼してしまった場合
- 地震が原因となって地盤が崩れ、家が倒壊してしまった場合
- 地震により津波が発生し、津波に飲み込まれて家が流されてしまった場合
- 火山が噴火し火山から流れてきた土砂などにより家が埋まってしまった場合
この他にも様々なケースが考えられますが、典型的な例としては以上のような例が考えられます。また、地震などが発生し隣家から火災が起きた結果延焼したようなケースでも保険の対象となる損害となります。
また、家財も対象になるので、地震によって発生した火災によって家具などが壊れた場合や、焼失してしまったような場合にも対象となります。
地震保険の対象とならない損害の例
これに対して以下のような損害は地震保険の対象とはなりません。
- 地震が起きて避難している間に家具や家電の盗難にあった場合
- 地震が起きたが住居の建物ではなく、門だけが壊れてしまった場合
- 地震が発生した翌日から10日経過後に家が倒壊してしまった場合
この他にも、地震が原因となって生じた損壊であっても、一定の程度に達していない損壊の場合には地震保険の対象とはなりません。
注意が必要なのが、建物の一部でも、門、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみに損害があった場合などのように、建物の主要構造部に該当しない部分のみの損害は保険金の対象とならない点です。
なお、建物の主要構造部については建築基準法により以下のように定められています。
<建築基準法施行令第1条第3号>
[構造耐力上主要な部分]
「基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の振動若しくは衝撃をささえるものをいう。」
したがって、これらに該当しないものが損壊したにとどまる場合には、地震保険の対象になりません。
地震保険の期間
地震保険は、保険期間が原則として5年までの契約期間となっています。
また、5年以内の契約期間が具体的にどういった期間設定になるかという点についても、火災保険とセットで契約するという地震保険の性質上、火災保険の保険期間によって異なる点が特徴的です。
例えば、火災保険の保険期間が10年間である場合には、地震保険が5年間で期間を満了した場合には1年等の都度更新を行うか火災保険の契約期間に合わせて契約期間を延ばす必要があります。
なお、2年以上継続する場合には、あらかじめ保険料を一括で支払うことができる仕組みになっており、一括で支払う場合にはそれぞれの期間に応じた割合で割引がされることになっています。そのため、一括で支払う方が基本的にお得です。
【ケース別】地震保険の査定はどうなる?
では、地震保険の保険金額は具体的にはどのように決まるのでしょうか。
前述した通り地震保険の保険金額は、損壊の程度に応じて決められた割合で保険金が支払われることになっていますが、抽象的な損壊の程度だけでは、イメージがつきにくいものです。
そこで、以下 では具体的な計算方法について、ここからは具体例に沿って解説していきます。損壊の程度 や保険金額の計算をする際にご参考ください。
地盤の液状化により建物の傾斜が発生した場合
地震が起きた場合、地盤がゆすられ続けることによって個体であったものが液体化する現象が起きる場合があります。こうした現象を液状化現象と呼び、地震が起きた場合に見られる現象です。
地盤の液状化により、その上に立っている建物が傾斜する被害が生じた場合、地震保険では、傾斜が生じた程度に応じて損壊の程度が決められています。
詳しくは後ほど解説いたしますが、傾斜角度が0.2度~0.5度以下で沈下10cm超~15cm以下の場合には一部損と認定されることになります。
そのため、この場合には保険金額の5%が支払われることになります。
余震で被害が拡大した場合
大規模な地震が起きた場合、地震は一度だけでなく余震が続く例が多く、実際に東日本大震災では発生から約10年が経過した時点までに 14,590回もの余震が続いています。
このように地震が起きた当時は損壊の程度が大した事は無くても、余震が続くことにより被害が拡大してしまうケースはよく見られます。
では、余震で建物が倒壊してしまったようなケースでは、地震保険の補償はどのように考えるのでしょうか。
これについては、地震保険では72時間以内に発生した2回以上の地震等は一括して1回の地震としてみなすというルールがあります。
そのため、余震が72時間以内に起きたもので、 それによって被害が拡大した場合には、 一つの地震から起きた損害として全体が考えられることになり、余震で拡大した損害も含めて損壊の程度により保険金が決定されることになります。
隣の家が倒れてきて損害が発生した場合
隣の家が倒れてきたことにより損害が発生した場合には、そもそも自分の保険を使わないで、隣の家の所有者に損害賠償請求をすればよいのではないかと思われる方もいらっしゃるでしょうが、地震のような天災による家屋の倒壊によって、隣家を壊してしまったようなケースでは、過失が認められないため、原則として損害賠償責任を負いません。
そのため、それぞれの家屋の所有者が自分の費用負担で修繕を行う必要があります。こうした場合には地震により直接または間接的に生じた損害と考えられるため地震保険の補償対象として、損壊の程度に応じた保険金が支払われることになります。
地震でパソコンが壊れた場合
パソコンは家財に該当します。
そのため、地震保険の補償対象になり、損害額が家財全体の時価に占める割合が10%以上の場合から保険金支払いの対象になります。この割合が品目ごとに計算されることになります。
そのため、パソコンのみが壊れた場合には、後述するように家財の損害は2.5%となり10%に満たないため地震保険では補償されないこととなります。
パソコン以外にも例えば、冷蔵庫やテレビ、エアコンなどが壊れた場合には2.5%×4で10%になるため、一部損として保険金支払いの対象となる損壊の程度になります。
注意すべきは同じ分類の中で複数の品目が壊れた場合でも、その分類の最大値が決まって いるため、保険金支払いの対象にならない場合があります。
例えば食器類は最大でも5%となっているため、この分類にカテゴライズされているものがどれだけ壊れても10%に至らないため保険金支払いの対象にはなりません。
津波で家ごと流された場合
津波で家ごと流されたようなケースは、建物が流出した場合に該当します。
そのため、流出した部分の床面積が建物の延べ床面積の何%に該当するかに応じて保険金の金額が算定されることになります。
家ごと流されたようなケースでは建物が丸ごと流されたケース、つまり建物の延べ床面積の100%が流出したような場合になります。
この場合には、「建物の延べ床面積の70%以上」が流出した場合に該当するため、全損に当たります。そのため、家の時価相当額が上限となりますが、地震保険金額の100%が保険金として支払われることになります。
地震保険の保険金額の決まり方
では、地震保険の保険金額はどのようにして決まるのでしょうか。
冒頭で少しご説明した通り、地震保険の保険金額の特徴として保険対象の損壊の程度に応じてあらかじめ定められた割合で保険金額が決まる仕組みになっています。
そのため、損壊の程度が決められた程度に至っていないと認定された場合には、そもそも保険金が支払われません。では、具体的にはどのような算定方法などで地震保険の金額は決められているのでしょうか。以下では、その内容を詳しく解説していきます。
地震保険金額は火災保険金額の30%から50%で設定する
地震保険は火災保険の附帯であるという性質から、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額により決められることになっています。具体的には、火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内となっています。
つまり火災保険で2000万円が保険金額となっている場合には、地震保険はその50%、つまり1000万円が上限となるということになります。
このように聞くと、保険金額が低すぎるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、地震保険は最終的には政府のお金によって補償される形式になっており、地震保険が保険の対象とする地震が起きた場合、非常に広範囲に多くの補償を行う必要が生じます。
そのため、保険金額をある程度制限しておかないと、補償を行うこと自体が困難となるため、このような制限が設けられているのです。
損害の程度と支払われる保険金の割合一覧
地震保険は損害の程度に応じて保険金の割合が変わる仕組みとなっており、損害の程度は全損、大半損、小半損、一部損の4種類に分類されています。
最も程度が重い全損では保険金額の100%が支払われ、大半損では保険金額の60%、小半損では保険金額の30%、一部損では保険金額の5%が支払われることとなります。
具体的にどういった損害であればどの区分の損害に該当するのかについては建物であるか家財であるかによって異なります。
建物の場合
損害の程度 | 認定の基準 | 保険金額 |
全損 | 「建物の時価の50%以上」または 「建物の延べ面積の70%以上」の損害 | 保険金額の100% |
大半損 | 「建物の時価の40%以上50%未満」または 「建物の延べ面積の50%以上70%未満」の損害 | 保険金額の60% |
小半損 | 「建物の時価の20%以上40%未満」または 「建物の延べ面積の20%以上50%未満」の損害 | 保険金額の30% |
一部損 | 「建物の時価の3%以上20%未満」または 「建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を受け、 建物の損害が全損、大半損、小半損に至らない場合」の損害 | 保険金額の5% |
なお、全損の場合は時価が、大半損の場合は時価の60%、小半損は時価の30%、一部損の場合には時価の5%が限度額となっています。なお、一部損に至らない程度の損害や主要部分の損害ではない場合には保険の対象になりません。
家財の場合
家財の場合には少し特殊な計算方法となります。まず、損害の程度と認定の基準については次のようになっています。
損害の程度 | 認定の基準 | 保険金額損害の程度 |
全損 | 家財の損害額が家財の時価の80%以上 | 保険金額の100% |
大半損 | 家財の損害額が家財の時価の60%以上80%未満 | 保険金額の60% |
小半損 | 家財の損害額が家財の時価の30%以上60%未満 | 保険金額の30% |
一部損 | 家財の損害額が家財の時価の10%以上30%未満 | 保険金額の5% |
そして、家財の損害程度の認定は、家財を5つに分類し、各分類ごとに決められた構成割合に応じて家財の損害を品目ごとに算定し、合計した割合が認定の基準を満たしているときに各損害の程度になることになっています。
分類と割合はそれぞれ以下のような分類となっています。
分類 | 品目 | 構成割合(1品目) |
食器陶器類 | 食器、陶器置物、食料品、調理器具等 | 1% |
電気器具類 | 冷蔵庫・洗濯機・パソコン・TV・エアコン等 | 2.5% |
家具類 | 食器棚・タンス・机・椅子・ソファー等 | 4% |
その他身の回り品 | カメラ・靴・鞄・スポーツ用品・レジャー用品等 | 2.5% |
衣類寝具類 | 衣類・寝具等 | 15% |
以上の構成割合に応じて品目ごとに計算していきます。
具体例
家財の計算方法について具体例で見ていきましょう。地震によって発生した津波によりテレビやパソコン、さらに食器とベッドが破損してしまったような場合を考えてみましょう。
この場合には、以下のような計算になります。
食器(1%)+テレビ(2.5%)+パソコン(2.5%)+ベッド(15%)=21%
そのため、10%から30%未満に該当するため一部損に該当し、保険金額の5%が支払われることになります。
保険金支払までの対応の流れ
地震保険の保険対象や保険金額などについて解説してきましたが、ここからは実際に保険金を請求する際の手続きを解説します。
保険金請求にあたって注意が必要な点として、地震保険の保険金には請求期間が3年間に限定されている点です。
大規模な地震が起きて、落ち着くまでに時間がかかってしまうといったことも考えられますが、地震保険の請求は可能な限り早く行うようにしましょう。
①保険会社への連絡
まずは加入している保険会社へ連絡を行います。これは電話やWebなどで受け付けています。加入している保険会社のホームページなどで受け付け方法を確認すると良いでしょう。
一般的には、契約者の氏名、証券番号、事故の発生日時、発生場所や状況、連絡先などを聞かれることが多いのであらかじめ準備しておきましょう。
また地震などで保険証書や契約書類が無くなってしまう場合も多いため、証券番号が分からない場合には、保険会社に合わせてこの点も確認しておきましょう。
②訪問による被害状況の確認
保険会社から鑑定人が派遣され、実際の被害状況を確認することになります。鑑定人というのは保険会社から委託を受けた鑑定会社から派遣される人間です。
この鑑定人が被害の状況を確認し、損壊の程度を認定していくことになります。
なお、この時に修理にかかった費用の見積書が必要なのかといった疑問をもたれれる方がいらっしゃいますが、火災保険と異なり、地震保険は実際にその損害によってかかった費用とは無関係に保険金額が決まるため準備の必要はありません。
③保険金請求書類の確認・保険金の算定
現地の調査が完了すると保険会社は鑑定会社から提出された調査結果に基づき、損壊の程度に応じた保険金額を算定し、契約者に提示します。
契約者はこの内容を確認し、了承すれば支払い手続きへ進みます。
こうした調査結果に納得がいかない場合には日本損害保険協会にそんぽADRセンターが設置されており、こうした問題に取り組んでいるため、相談を行うことも検討されるのも一つの方法でしょう。
④保険金のお支払い
契約者が保険金の算定額に納得し、了承が得られたときは、指定された口座に保険金が支払われ、保険会社から通知が届きます。これで保険金の請求手続きは完了です。
まとめ
地震保険は、火災保険とセットの保険ではありますが、保険金の金額の算定方法は火災保険とは全く異なっています。
また、損害が生じた対象が家財であるか建物であるかによって計算方法が異なります。
本記事を参考に地震保険の保険金を請求する際の金額の見通しを立てた上で手続きを行う事で、地震などの被害から生活を再建するお役に立てることをお祈りしております。
保険金の不払いに
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保険会社への対応に疑問を感じた時は、交渉のプロである弁護士にお任せください。
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