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地震保険金が支払われるための要件とは?地震保険金の決まり方や具体例をご紹介

対象、補償内容 地震保険
投稿日:2022年03月04日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
地震保険金が支払われるための要件を教えてください。
Answer
地震保険の対象になっている物に、地震等によって保険事故が発生することが地震保険金の支払い要件になります。なお、保険金の金額は保険事故によって発生した損害の程度に応じて決められた割合で支払われることになっています。

災害保険とは

災害保険とは、損害保険のうち地震などの天災によって発生した損害を補償するためにかけられる保険の事をいいます。

生命保険にも災害死亡保険があるため、これに似たものを想像される方がいらっしゃるかもしれませんが、災害死亡保険における災害は日常生活における不慮の事故や感染症などがこれに該当します。

また、災害保険は天災等によって家や家具などの財産に対する損害を生じた場合に補償の対象とするのに対し、災害死亡保険は被保険者の死亡に対して支払われます。

そのため、補償の対象となる原因が全く異なるため、混同しないように注意しましょう。

災害保険には「火災保険」「地震保険」の2種類がある

災害保険には「火災保険」と「地震保険」の2種類があります。

災害保険は東日本大震災をきっかけとして注目を集めるようになりました。というのも、ご存じの通り東日本大震災では、非常に多くの方が家や住まいを地震や津波などで失ってしまいました。

こうした被災者の方のうち、数年たった現在でも家を再建できていない方は多くいらっしゃいますが、その原因のほとんどが資金不足により再建できない方です。

そのため、ご自身で災害に備えるために火災保険や地震保険などの災害保険に注目が集まるようになったのです。

火災保険とは

火災保険とは、主に火災により家財や建物に対して生じた損害を補償する保険です。

火災保険の対象は火災、いわゆる火事だけに限らず、落雷の影響による家電の破損や、台風・竜巻などによる家屋の破損、さらに豪雪や洪水などの水害によって発生した家屋や家財の損傷についても対象となっているものもあります。

そのため、例えば離れた地点に落雷があり、電線などを伝って住居内にある家電が破損したようなケースでも火災保険の対象となる場合があります。

また、その他には火災保険の内容によっては、盗難や排水溝のつまりなど、天災ともよべないものも補償の対象としている保険もあります。

このように、火災保険の対象は必ずしも火災、火事に限定されていないので、加入している火災保険の内容を確認すると良いでしょう。

地震保険とは

地震保険とは、地震や火山の噴火、津波などにより建物や家財に発生した損害を補償する保険です。

主な使用場面としては、地震や噴火、津波によって火災等の被害が発生し、それによって家屋が燃えてしまったような場合や、地震などにより家が倒壊してしまったような場合が典型的な地震保険でカバーされる場面として挙げられます。

火災保険と同様に地震のみが対象となっているわけではない点については注意が必要です。利用する際に損害が生じる原因となった天災や災害が地震保険の対象となっているか確認しておくことが重要です。

また、地震保険は火災保険のように損害が発生したことにより、発生した費用を補償するものではない点にも特徴の保険といえます。

火災保険と地震保険の関係とは

火災保険と地震保険は、相互に補完しあう関係にあります。

というのも、火災保険の補償の対象は、前述の通りいわゆる火事だけに限りません。

ただし、地震や火山の噴火・津波や、地震などによって発生した火事などについては火災保険の対象になりません。

そのため、地震保険は火災保険の補償の対象外となっているものを、火災保険は地震保険の補償の対象外となっているものを補償するという点で、相互に補完関係にあるといえます。

火災保険と地震保険の違い

火災保険と地震保険の違いは、補償対象となる事故が異なる点と保険金の金額の決定方法の2点において違いがあります。

まず、補償の対象となる事故は、火災保険の場合は先ほど挙げた火災や落雷、台風、豪雪といった天災に加えて、第三者による物件の盗難や破損など天災ではないものの、保険をかけた人に帰責事由のないものも補償の対象とするものがあります。

これに対し、地震保険は地震や火山の噴火などの天災に限定されています。

また、火災保険の保険金は発生した損害を填補するためにかかった費用、つまり火事で家具や家電が壊れてしまった場合にはその修理費用等を補償するなど費用補償を行います。

これに対して、地震保険は、損壊の程度を認定し、その程度に応じて定められた割合に応じて保険金が支払われることになります。

以上のような2点が異なる点は押さえておきましょう。

地震保険の加入には火災保険とセット契約が必要

地震保険は火災保険と異なり単独で加入することは原則としてできません。地震保険は火災保険の附帯としての性格を持っているためです。

地震保険がなぜこのような性格を有しているのでしょうか。

これは地震保険の成立となる背景が影響しているといわれています。火災保険はもともと各保険会社が商品として販売していたのに対し、地震保険は1966年に『地震保険に関する法律』が制定され開始されたものであり、政府がバックアップを行っています。

これも地震の発生確率などは統計から予測するのが困難なため保険会社単独でのビジネスとして成立しにくいことが原因とされています。

こうした背景もあって、保険会社が行っている火災保険に附帯する保険という形で地震保険は、原則として単独では加入できないという仕組みになっています。

地震保険の補償内容

地震保険は、地震・噴火・津波を直接または間接の原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償するものです。

したがって、補償の内容はこうした地震や、火山の噴火、津波などによって起こった火災、損壊、埋没や流出などにより家屋が損傷した場合の補償を行うものです。

また、火災保険とセットで契約されるものであるという性質から補償額は火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内で補償額が決まる仕組みになっています。

以下では地震保険の補償内容などについて詳しく解説します。

地震保険の補償内容とは

地震保険の補償内容は、居住の用に供する建物および家財(生活用動産)が対象とされています。つまり、家やその中にある家具などが対象となることになります。

ここでポイントになるのは居住の用に供する建物であるという点が重要です。そのため、工場や事務所専用の建物など住居として使用されない建物については対象から外れます。

また、生活用動産に含まれそうなものであっても、30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手、自動車等といったものについては対象から外れている点については注意が必要です。

こうしたものについては火災保険等、別個の保険を付保しておく必要があります。

地震保険の対象となる損害の例

地震保険の対象となる損害の典型的な例は以下のようなものがあります。

  • 地震によって火災が発生し、家が全焼してしまった場合
  • 地震が原因となって地盤が崩れ、家が倒壊してしまった場合
  • 地震により津波が発生し、津波に飲み込まれて家が流されてしまった場合
  • 火山が噴火し火山から流れてきた土砂などにより家が埋まってしまった場合

この他にも複数考えられますが、典型的な例としては以上のような例が考えられます。

また、地震などが発生し隣家から火災が起きた結果延焼したようなケースでも保険の対象となる損害となります。

家財も対象になるので、地震によって発生した火災によって家具などが壊れたり焼失してしまったような場合にも対象となります。

地震保険の対象とならない損害の例

これに対して以下のような損害は地震保険の対象とはなりません。

  • 地震が起きて避難している間に家具や家電の盗難にあった場合
  • 地震が起きたが住居の建物ではなく、門だけが壊れてしまった場合
  • 地震が発生した翌日から10日経過後に家が倒壊してしまった場合(因果関係がはっきりしなくなるため約款で支払がされないと規定されていることが一般的です)

この他にも、地震が原因となって生じた損壊であっても、一定の程度に達していない損壊の場合には地震保険の対象とはなりません。

注意が必要なのが、地震保険では、建物の一部のように思われるものでも、門、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみに損害があった場合などのように、建物の主要構造部に該当しない部分のみの損害は保険金の対象とならない点です。

保険の対象となるのは、建物の主要構造部(軸組・基礎・屋根・外壁等)に限定される点については注意が必要です。

地震保険の期間

地震保険は原則として5年までの契約期間となっています。火災保険とセットで契約するという地震保険の性質上、契約できる期間も火災保険の保険期間によって異なる点についても注意が必要です。

火災保険の保険期間が10年間である場合には、地震保険が期間を満了した場合には1年等の都度更新を行うか火災保険の契約期間に合わせて契約期間を延ばす必要があります。

なお、2年以上継続する地震保険は長期契約と呼ばれており、あらかじめ保険料を一括で支払うことができる仕組みになっています。一括で支払う場合にはそれぞれの期間に応じた割合で割引がされることになっているため、一括で支払う方が基本的にお得です。

地震保険の保険金額の決まり方

地震保険の保険金額はどのようにして決まるのでしょうか。地震保険の保険金額の特徴として保険対象の損壊の程度に応じてあらかじめ定められた割合で保険金額が決まる点に特徴があります。

そのため、損壊の程度が決められた程度に至っていないと認定された場合には、そもそも保険金が支払われません。では、具体的にはどのような算定方法などで地震保険の金額は決められているのでしょうか。

以下では、その内容を詳しく解説していきます。

地震保険金額は火災保険金額の30%から50%で設定する

地震保険は火災保険の附帯であるという性質から、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額により決められることになっています。具体的には、火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内となっています。

つまり火災保険で2000万円が保険金額となっている場合には、地震保険はその50%、つまり1000万円が上限となるということになります。

このように聞くと、保険金額が低すぎるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、地震保険は最終的には政府のお金によって補償される形式になっており、地震保険が保険の対象とする地震が起きた場合、非常に広範囲に多くの補償を行う必要が生じます。

そのため、保険金額をある程度制限しておかないと、補償を行うこと自体が困難となるため、このような制限が置かれているのです。

損害の程度に応じて受け取る保険金額が決まる

地震保険によって補償を受けられる金額は、損壊の程度によってあらかじめ定められた割合に応じて決まることとなっています。
具体的には、損壊の程度について以下の4つに分類されています。

  • 全損
  • 大半損
  • 小半損
  • 一部損

それぞれの損壊ごとに支払われる金額は以下のようになります。

  • 全損の場合:保険金額の100%
  • 大半損の場合:保険金額の60%
  • 小半損の場合:保険金額の30%
  • 一部損の場合:保険金額の5%


損害の程度は以下のように定義されています。

・全損

地震等により損害を受け、主要構造部(基礎、柱、壁、屋根等)の損害の額が、その建物の時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積がその建物の延床面積の70%以上となった場合

・大半損

地震等により損害を受け、主要構造部の損害の額が、その建物の時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積がその建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合

・小半損

地震等により損害を受け、主要構造部の損害の額が、その建物の時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積がその建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合

・一部損

地震等により損害を受け、主要構造部の損害の額が、その建物の時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を受け、建物の損害が全損、大半損、小半損に至らない場合

具体例①:全損の例

地震によって発生した火事によって、家が燃えてしまい、焼けた後に残っているのは、以前の家屋の居住部分のうち床面積の約20%で、8割がたが焼失してしまった場合です。

この場合には全損に該当することになります。

先程の全損の定義として、「地震等により損害を受け、主要構造部(基礎、柱、壁、屋根等)の損害の額が、その建物の時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積がその建物の延床面積の70%以上となった場合」とされています。

そのため、80%が焼失してしまったような場合には全損として保険金額の100%が支払われることになります。

具体例②:大半損の例

地震によって地盤が緩んで家屋が倒壊してしまい、居住部分の約60%が倒壊してしまい、住めない状態になってしまった場合です。

この場合には大半損に該当することになります。

まず、60%ほどの倒壊ですので、70%には至らないため全損には該当しません。そして、「地震等により損害を受け、主要構造部の損害の額が、その建物の時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積がその建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合」に該当するため大半損に該当することになります。

保険金支払までの対応の流れ

地震保険の保険対象や保険金額などについて解説してきましたが、ここからは実際に保険金を請求する際の手続きを解説します。

保険金請求にあたって注意が必要な点として、地震保険の保険金には請求期間が3年間に限定されている点です。大規模な地震が起きて、落ち着くまでに時間がかかってしまうといったことも考えられますが、地震保険の請求は可能な限り早く行うようにしましょう。

①保険会社への連絡

まずは加入している保険会社へ連絡を行います。これは電話やWebなどで受け付けています。加入している保険会社のホームページなどで受け付け方法を確認すると良いでしょう。

一般的には、契約者の氏名、証券番号、事故の発生日時、発生場所や状況、連絡先などを聞かれることが多いのであらかじめ準備しておきましょう。

また地震などで保険証書や契約書類が無くなってしまう場合も多いため、証券番号が分からない場合には、保険会社に合わせてこの点も確認しておきましょう。

②訪問による被害状況の確認

保険会社から鑑定人が派遣され、実際の被害状況を確認することになります。鑑定人というのは保険会社から委託を受けた鑑定会社から派遣される人間です。

この鑑定人が被害の状況を確認し、損壊の程度を認定していくことになります。

なお、この時に修理にかかった費用の見積書が必要なのかといった疑問をもたれる方がいらっしゃいますが、火災保険と異なり、地震保険は実際にその損害によってかかった費用とは無関係に保険金額が決まるため準備の必要はありません。

③保険金請求書類の確認・保険金の算定

現地の調査が完了すると保険会社は鑑定会社から提出された調査結果に基づき、損壊の程度に応じた保険金額を算定し、契約者に提示します。契約者はこの内容を確認し、了承すれば支払い手続きへ進みます。

こうした調査結果に納得がいかない場合には日本損害保険協会にそんぽADRセンターが設置されており、こうした問題に取り組んでいるため、相談を行うことも検討されるのも一つの方法でしょう。

④保険金のお支払い

契約者が保険金の算定額に了承したのち、指定された口座に保険金が支払われ、保険会社から通知が届きます。
これで保険金の請求手続きは完了です。

まとめ

地震保険は火災保険と異なる点が多数あり、受け取る保険金の額も損壊の程度によって異なるなど他の保険商品にはない特徴を多く持っています。

地震などの天災の増えている現在では、万が一の場合に備えてご自宅などに火災保険だけではなく地震保険もかけておくことがより安心して暮らすために理想的といえるでしょう。

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