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「生命保険」と「損害保険」の違いとは?「第三分野保険」についても知っておこう

給付金の種類、補償内容 生命保険
投稿日:2023年06月26日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
「保険」と言っても様々な種類があるようですが、生命保険と損害保険では、何が違うのでしょうか?
また、第三分野保険というのはどういうものを言うのでしょうか。
Answer
生命保険は「人」を対象とする保険ですが、損害保険は、「物」や「財産」、「行為」を対象とする保険です。

生命保険は、人の生存や死亡に関して一定金額の保険金が支払われる保険で、生命保険会社のみが取扱うことができます。つまり、保険の対象となるのは「人」です。例えば、病気で人が亡くなった時に、一定額の保険金が支払われるのは生命保険合契約によるものです。

次に、損害保険は、偶然の事故により発生した損害の額に応じた保険金が支払われる保険で、損害保険会社のみが取扱うことができます。つまり、保険の対象となるのは「物」や「財産」あるいは「行為」です。例えば、車を岩にぶつけてしまって車の修理が必要となった場合に修理費が支払われるのは損害保険です。

そして、第三分野保険は、損害保険とも生命保険ともいえない人のケガ(傷害)や病気に関して、定額または実際の出費額等の損害を填補することを約し、保険料を収受する保険です。例えば、病気で入院したときに入院費用が支払われる保険や、けがをした場合に保険金が支払われる保険なども第三分野保険です。

それでは、これから生命保険と損害保険の違い、それから第三分野保険について、詳しく説明していきます。

保険の分野区分

ひとくちに保険といっても、様々な種類の保険が存在しています。

しかし、日本の保険は、大きくわけると、生命保険損害保険、そして第三分野保険の三種類に分けることができます。

ここでは、この三種類の保険がどのようなものか、簡単にみてききましょう。

生命保険

まず、生命保険とは、人の生存または死亡に関して、定められた金額の保険金を支払うことを約し、保険料を収受する保です(保険業法3条4項1号)。

このうち、人の「生存」に関する保険は生存保険死亡に関する保険は死亡保険生存と死亡に関する保険は生死混合保険と呼ばれています。

具体的には、死亡保険としては死亡時に保険金が支払われる「終身保険」や一定の保険期間内に死亡したときに保険金が支払われる「定期保険」等があります。

生存保険としては被保険者が一定年齢に達した時に保険金が年金払いされる「年金保険」や、子供が一定の年齢に達したときに保険金が支払われる「学資保険」等があります。そして、生死混合保険としては満期までに死亡したときは死亡保険金、生存したときは生存保険金が支払われる「養老保険」などがあります。

損害保険

次に、損害保険とは、一定の偶然により生じた損害について、損害を填補することを約して保険料を収受する保険です(保険業法3条5項1号)。

例えば、「火災保険」、「自動車保険」、「自賠責保険」、「地震保険」や「個人賠償責任保険」などがあります。

第三分野保険

第三分野保険は、損害保険とも生命保険ともいえない人のケガ(傷害)や病気に関して、定額または実際の出費額等の損害を填補することを約し、保険料を収受する保険です。

具体的には、「傷害保険」、「医療保険」、「がん保険」や「介護保険」などがあります。

生命保険と損害保険の違い

生命保険と損害保険では何が違うのでしょうか。

生命保険と損害保険の主な相違点は、

  • 保険の対象
  • 保険金の算定
  • 被保険者
  • 保険取扱い会社

です。

では、具体的に見ていきましょう。

保険の対象

まず、生命保険と損害保険で大きく異なるのは、保険の対象です。

生命保険は、「人の生存または死亡」を保障しています。死亡してしまった場合に備える死亡保険や、老後を生きていくために備える個人年金保険など、すべての対象は人の生死に関わるものです。

他方で、損害保険は「物」、「財産」や「行為」を補償しています。火災保険の主な対象は家屋であり「物」あるいは「財産」です。また、自動車保険の対象も自動車であり、「物」あるいは「財産」といえます。

保険金の算定

次に、保険金の算定についての考え方が異なります。

生命保険の場合、人の生死に関して具体的な金銭的損害額を算定することは不可能であるため、原則として、契約時に定めた一定の額の保険金を受け取ることができます。例えば、死亡保険の場合、死亡時に3000万円と定めれば、死亡した場合に3000万円が支払われます。

他方、損害保険では、実際に生じた損害を保障する形で保険金が査定されるのが原則です。例えば、火災保険など、家屋の価値に応じて契約時に保険金額を定めることがありますが、対象となる家屋の価値より不当に高額な金額であれば、保険金額の満額が支払われることはありません。損害を受けた家屋の価値を上限に保障されるのです。

※ただし、家屋の時価ではなく、同等の建物を新しく建てるのに必要な金額である「再調達価格」を保険金額とすることが多いです。

【保障と補償の違い】
「ほしょう」という用語について、生命保険では、リスクがないよう、責任をもって請け合うなどの意味をもつ「保障」が使われています。
他方、損害保険では損害が生じたときに、その損害を金銭で補って埋め合わせるという意味をもつ「補償」を使います。
この点でも、前述の保険金の算定についての考え方が表れています。

被保険者

生命保険でも損害保険でも、被保険者という用語が用いられていますが、その意味は異なっています。

生命保険の場合、その者の生存または死亡に関し保険者が保険給付を行うこととなる者、つまり保険契約時に定めた保障の対象となるのが被保険者です(保険法2条4号ロ)。例えば、Aさんが死亡した場合に保険金が支払われる死亡保険の場合、被保険者はAさんです。

他方、損害保険の被保険者は、保険契約によりてん補される損害を受ける者をいいます(保険法2条4号イ)。例えば、火災保険では家屋が対象とした場合、その家屋の所有者が被保険者となります。また、自動車保険の場合、損害保険契約をした車両を主として使用する人が被保険者となります。

このように被保険者についての考え方が異なってくるのは、保険の対象が異なるためです。

取扱い保険会社

生命保険を取扱うことができるのは、生命保険会社です。

他方、損害保険は、損害保険会社のみが取扱うことができます。

これは、保険会社の免許には生命保険業免許および損害保険業免許の2種類がありますが、同一の者が双方の免許を受けることができない(生損保兼業禁止の原則)とされているためです(保険業法第3条2項及び3項)。一般に、生命保険の場合は長期間にわたる契約が多いのに対し、損害保険は短期の契約が多いことから、生命保険と損害保険を引き受けることによるリスクが異なっており、性質の異なるリスクを遮断する趣旨と言われています。

このように、取扱うことができる会社が区分されていることに注意が必要です。

第三分野保険

生命保険と損害保険の違いについてみてきましたが、この二つの間に位置づけられている第三分野保険という分野も存在します。

第三分野保険は、長生きのリスクに対応し、公的保障の足りない部分を補う保険など、注目されている分野です。

それでは、第三分野保険の特徴についても説明していきましょう。

定義

第三分野保険とは、人の病気やけがなどの一定の事由に関し、損害を填補する額の保険金または一定額の保険金を支払うことを約し、保険料を収受する保険をいいます(保険法3条4項2号)。

第三分野保険における保険事故の種類

第三分野保険において対象となる保険事故は、次のとおりです(保険業法3条4項2号イ~ホ)。

イ 人が疾病にかかったこと

口 傷害を受けたことまたは疾病にかかったことを原因とする人の状態

ハ 傷害を受けたことを直接の原因とする人の死亡

ニ イまたは口に類するものとして、内閣府令で定めるもの(人の死亡を除く)

(規則4条)

① 出産およびこれを原因とする人の状態

② 不妊治療を要する身体の状態

③ 老衰を直接の原因とする常時の介護を要する身体の状態

④ 骨髄の提供およびこれを原因とする人の状態

ホ イ、口またはニに関し、治療を受けたこと

(規則5条)

「治療」には、以下の治療に類する行為を含む。

① 保健師助産師看護師法3条に定める助産師が行う助産

② 柔道整復師法2条に定める柔道整復師が行う施術

③ あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に基づくあん摩マッサージ指圧師、はり師またはきゅう師が行う施術(医師の指示に従って行うものに限る)

保険金の算定

定義にもあるとおり、第三分野保険の保険金の算定は、一定額の保険金を支払うものと、損害を填補する形のものがあります。保険法においては、保険金の支払方法により契約時に定めた一定額を支払う第三分野保険を「傷害疾病定額保険契約」、実際に出費した費用を填補補償する「傷害疾病損害保険契約」の2種類に分類しています(保険法2条7号及び9号)。

被保険者

第三分野保険における被保険者は、傷害疾病定額保険契約と傷害疾病損害保険契約かによって、その意味が異なります。

傷害疾病定額保険契約の場合、生命保険に類するものであることから、被保険者は、その者の傷害又は疾病に基づき保険者が保険給付を行うこととなる者をいいます。

他方、傷害疾病損害保険契約の場合、保険法上では損害保険に分類されており、被保険者は損害保険と同じく、損害保険契約によりてん補することとされる損害を受ける者とされています。

取扱い保険会社

第三分野保険は、前述のとおり生命保険に類似するものと損害保険に類似するものがありますが、いずれの類型についても、生命保険会社および損害保険会社の双方による引受が認められています。

注意点

前述のとおり、公的保障の足りない部分を補って長生きのリスクに備える保険など、注目されていますが、公的保障での不足を補うことを目的に保険契約する場合には、公的保障でどの程度賄えるのかを理解しておくことが大事です。

また、給付を受けるための条件が様々なので、しっかりと確認しておくことが重要です。例えば、(民間の)介護保険などは、公的な介護保険上で要介護状態と認定されても、保険会社が定めた条件を満たした場合でなければ保険金が給付されません。また、がん保険の場合、保険加入後の免責期間がある場合や、給付金の支払い条件などが異るため、どのような条件で険金をもらうことができるのか熟慮し、納得できた場合に加入するようにしましょう。

最後に

このように、保険とひとくちでいっても種類が異なれば保険金の算定方法が異なり、また、取扱うことができる保険会社も異なります。

保険契約を締結しようとする場合には、自分のニーズに合致する保険を取扱う会社がどこなのか、ニーズに合致する条件で保険金が給付されるのかなど、しっかりと確認の上で選択することが大切です。

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