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【免責事由】生命保険金が支払われない場合とは?

給付金の種類、補償内容 生命保険
投稿日:2023年06月14日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

はじめに

生命保険は、加入者が亡くなったり、病気やケガで働けなくなった場合に、家族や受取人に給付金を支払う保険です。生命保険契約で定めた保険事故(例えば、死亡保険では保険期間中の死亡、生存保険では満期における生存など)が発生した場合、給付金が支払われます。

しかし、保険事故が発生したからと言って、すべての状況で給付金が支払われるわけではありません。保険契約には、免責事由と呼ばれる条件があり、これらの条件に該当する場合には保険金が支払われないことがあります。

この記事では、生命保険における免責事由について解説します。

免責事由の一般的な例

被保険者の故意による自殺

生命保険では、契約者が加入後一定期間内(通常は2~3年、 ※1)に自殺した場合、故意に保険金を受け取る目的で契約したとみなされることがあります。この期間内に自殺した場合は、免責事由となり保険金が支払われません。

自殺に関する免責事由

  1. 1被保険者の自殺が免責事由とされる場合、保険者(保険会社)は保険給付を行う責任を負いません。
  2. 2自殺であることの主張立証責任は保険者にあります。
  3. 3精神障害等により自由な意思決定ができない状態での被保険者の死亡は免責になりませんが、これについて保険金請求者が主張立証責任を負います(再抗弁)(※2)。

※1 一定期間経過後の自殺

保険契約において、責任開始の日から一定期間内の自殺について保険金を支払わないという約款がある場合、当該期間経過後の自殺については、保険金取得目的の自殺であっても特段の事情がない限り免責の対象になりません。

※2 精神障害等による再抗弁

具体的に考慮すべき事情は以下の通りです。

  • 精神障害罹患前の行為者の性格・人格
  • 自殺企図行為に至るまでの行為者の言動及び精神状態
  • 自殺企図行為の態様
  • 他の動機の可能性

保険金請求における免責事由としての被保険者の自殺について理解することは重要です。

自殺が免責事由となるかどうかは、契約で定めた期間経過後の自殺であるか否か自殺であることの保険会社による立証の成否自殺が精神障害等によるものであること(再抗弁)の保険金請求者による立証の成否等の要素によって判断されます。保険契約者や被保険者は、これらの要素を考慮して適切な保険契約を締結することが求められます。

また、貸金業者は、借り手の自殺により保険金が支払われる保険契約を締結することができないことに留意しましょう。

裁判例について

  1. 1自殺と認めた最近の例:
    • 1.札幌地判平成24年4月12日判タ1386号284頁
    • 2.名古屋高判平成21年11月18日判時2072号146頁
  2. 2再抗弁を認めた例
    • 1.奈良地判平成22年8月27日判タ1341号210頁
    • 2.甲府地判平成27年7月14日判時2280号131頁
  3. 3再抗弁を認めなかった例
    • 1.東京地判平成27年11月16日判タ1425号304頁
    • 2.大阪高判平成15年2月21日金判1166号2頁(うつ病だが軽度)

保険契約者又は保険金受取人が被保険者を故意に死亡させた場合

保険契約者又は保険金受取人が被保険者を故意に死亡させた場合、保険者(保険会社)は保険給付を行う責任を負いません。
この理由は、保険契約者による故殺の場合、信義則に反するからであり、保険金受取人による故殺の場合、保険金取得を目的にした殺人が誘発される危険が大きくなり、公益に反するからです。公益が主たる理由であるため、実際の殺害時に保険金取得の意図がなくても、保険者は免責されます。
ここでいう保険金受取人とは、保険金を取得し又は保険金請求権を行使することができる者を広く含みます。例えば、相続や保険金請求権の譲渡・質入れなどにより法的に保険金を受け取る地位を有することになった者も含まれると考えられます。また、故殺行為の当時に保険金受取人であれば、その後に死亡するなどして同人が現実には保険金を受け取れない場合でも保険者は免責されます。

第三者による被保険者故殺

第三者による被保険者故殺であっても、それが保険契約者又は保険金受取人の行為と同一と評価されれば、保険者は免責されます。
会社が保険受取人である場合の、その会社の取締役による被保険者故殺などが該当します。
取締役の行為が保険受取人である会社の行為と同一と評価されるのは、当該取締役が会社を実質的に支配し若しくは事故後直ちに会社を実質的に支配し得る立場にあるか、又は、保険金の受領による利益を直接享受し得る立場にある場合です。
保険金受取人が複数いる場合、殺害をした保険金受取人が受け取る部分についてのみ免責の効果が生じます。そのため、殺害をした保険金受取人が、他の保険金受取人の保険金請求権を相続してしまうこともあります。この点、公益の見地から相続した保険金請求権の行使を原則として認めるべきではないとする意見も存在します。
要点を整理すると以下の通りです。

  1. 1保険契約者又は保険金受取人が被保険者を故意に死亡させた場合、保険者は保険給付を行う責任を負わない。
  2. 2保険金受取人とは、保険金を取得し又は保険金請求権を行使することができる者を広く含む。
  3. 3第三者による被保険者故殺であっても、それが保険契約者又は保険金受取人の行為と同一と評価されれば、保険者は免責される。
  4. 4保険金受取人が複数いる場合、殺害をした保険金受取人が受け取る部分についてのみ免責の効果が生じる。

被保険者の犯罪行為による死亡・傷害

生命保険会社の約款によっては、被保険者が犯罪行為に関与した結果、死亡や傷害が生じた場合等に、保険金の支払いが免責されるとしている場合もあります。

例えば、強盗や暴力団関連の犯罪により死亡した場合などです。

被保険者の過失による死亡・傷害

過失による死亡や傷害があった場合、保険金が支払われないことがあります。

例えば、無免許運転や酒気帯び運転による交通事故などが該当します。

戦争・暴動等による死亡・傷害

戦争や暴動、テロ行為などによって被保険者が死亡・傷害した場合、免責事由となることがあります。

契約者の申告漏れ・虚偽申告

契約者が加入時に重要事項を申告しなかったり、虚偽の申告を行った場合、保険金が支払われないことがあります。

例えば、既往症や持病、喫煙歴などの健康状態に関する情報が該当します。ただし、保険会社が契約時に十分な説明を行っていない場合や、申告漏れが故意でない場合は、保険金が支払われることもあります。

まとめ

生命保険における免責事由は、保険契約の成立や保険金の支払いに影響を与える重要な要素です。

契約者は、保険に加入する際に免責事由を十分に理解し、適切な申告を行うことが重要です。

また、保険会社は、免責事由に関する説明を十分に行い、契約者に対して適切な情報提供を行うことが求められます。

保険加入者は、免責事由について十分理解し、契約内容を慎重に検討することが大切です。

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