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弁護士コラム
「地震保険」とは?定義や補償対象についても解説
- 給付金の種類、補償内容 地震保険
- 投稿日:2022年03月28日 |
最終更新日:2023年07月03日
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
- Q
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地震保険とはどのような保険でしょうか。
また、火災保険とはどのような関係にあるのでしょうか。
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「地震保険契約」とは、地震、噴火又はこれらによる津波(以下では「地震等」といいます。)を直接あるいは間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害を補償する保険をいいます。
地震等の災害を専ら補償する点で、火災保険とは異なります。
また、「火災保険契約」における、地震免責条項を補うための保険でもあります。
したがって、地震保険単体では加入できず、火災保険に加入したうえで、地震保険に加入する必要があります。
地震保険の定義
地震保険の定義について、「地震保険に関する法律」(以下では、「地震保険法」といいます。)の2条2項各号で、以下のように規定しています。
この法律において「地震保険契約」とは、次に掲げる要件を備える損害保険契約(火災に係る共済契約を含む。以下同じ。)をいう。 |
上記の地震保険法2条2項3号に記載されているように、地震保険契約は、火災保険契約に附帯して締結されることが要件になっているので、火災保険に加入していなければ、地震保険に加入することができません。
では、なぜ「特定の損害保険契約」が「火災保険契約」となるのでしょうか。
火災保険では、地震等を原因とする火災損害は補償されません。一方で地震保険は、地震等を原因とする損壊・埋没・流出による損害や、地震等を原因とする火災(延焼・拡大を含む)損害を補償する保険です。
つまり、火災保険に附帯して締結する地震保険によって、火災保険の対象となっている建物や家財に対して、地震による損害を補償することができるという仕組みになるわけです。
具体的な地震保険加入の方法としては、火災保険契約を締結した際に同時に地震保険契約を締結する方法と、火災保険契約を締結した後に地震保険契約を締結する方法があります。
ただし、大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言が発令された場合には、地震保険契約を締結できない期間及び地域が生じますのでご留意ください(地震保険法4条の2第1項、第2項)。
地震保険の意義
地震保険契約が火災保険契約に附帯して締結される保険契約であるということは、火災保険と地震保険において、それぞれの補償の対象範囲が区分されているということです。そして、その趣旨は以下の通りです。
もともと大規模な地震が発生すると、損害保険会社はその支払能力を超える損害保険金の支払い義務を負うおそれがあり、結果として倒産しかねません。また、損害保険会社が倒産してしまうと、保険に加入していた被害者が保険金を支払ってもらえず救済されなくなってしまいます。
そこで、火災保険に地震免責条項を設け、地震による被害については地震保険契約を締結することで補償されるようにし、火災保険と地震保険で補償の対象範囲を区分することで、保険金の支払いの実効性を確保しました。
もっとも、地震大国である日本においては、地震に伴う損害が発生するおそれが高いため、この損害を補償してもらえる保険契約を締結したいという需要が高いといえます。そこで、政府は地震保険法を施行し 、巨額な損害を伴う地震が起こったような時に、民間の保険会社の資力だけでは支払いきれない保険金を政府が引き受ける仕組みを作りました。
地震保険法1条では、「保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険することにより、地震保険の普及を図り、もつて地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする。」と規定されています。
地震保険の仕組み
損害保険会社が地震保険法に基づいて地震保険を提供していますので、地震保険に加入を希望する際は、火災保険とセットで契約します。
地震保険単体では加入できないため、注意が必要です。
すでに火災保険のみに加入している場合はその損害保険会社で追加加入することができます。そして、このように損害保険会社を通じて締結した 地震保険契約は、政府によって再保険されます(地震保険法1条参照)。この地震保険契約における「再保険」とは、巨大地震によって損害保険会社が、その支払い能力を超える支払い義務を負うことになった場合に、政府が保険責任を負うことを意味します。すなわち、官民一体となって地震に伴う損害の補償の実効性を確保しようとしているわけです。
また、地震保険は地震保険法に基づく保険商品であるため、いずれの損害保険会社と地震保険契約を締結したとしても、原則として再保険制度が採用されます。
したがって、保険料も約款も全ての損害保険会社において共通しています。
政府と損害保険会社が共同で運営する地震保険は、どの損害保険会社で加入しても保険料、補償内容に差はありません。
ただ、地震保険にある、その建物が建築された年代や免震・耐震性能に応じた保険料の割引制度を活用できます。
また、火災保険の特約で地震保険に上乗せした補償を受けられる損害保険会社もあるため、各保険会社での火災保険の特約やサービス内容を比較して検討するのがよいでしょう。
地震保険の補償対象と保険金額
地震保険の補償対象は、建物と家財です。該当のものが建物と家財にあたるか否かは、別記事「「家財」とは?家財保険の対象についても解説」をご参照ください。
地震保険における保険金額は、原則として、火災保険において設定した保険金額の30%~50%の範囲でしか設定することができません(地震保険法2条2項4号)。
地震保険は、「地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的」(地震険法1条)としています。つまり地震保険は、地震の損害を補償することよりは、被災者の生活の立て直しを図るための資金確保をすることが大きな目的になっているということです。
なお、居住用建物の保険金額は5000万円、家財の保険金額は1000万円が上限となります。
地震保険で支払われる保険金
地震保険における保険金は、原則として、保険金の請求書やその他必要な書類を提出した日から30日以内に支払われます。
また、保険金の請求は、「行使ができる時から三年間」で時効により消滅し、行使できなくなります(保険法95条1項)。
なお、東日本大震災の際には、被害規模が甚大だったため、特別に時効消滅しないとして対処しました。
保険会社によって支払われる保険金は、損害の程度によって決定されます。
建物の損害の程度と家財の損害の程度は、別々に認定されます。
建物の主要構造部の損害額 (時価額)※1 | 損失または流出した部分の床面積(時価額) | 家財の損害額 (時価額) | 支払われる 保険金の額 | ||
全損 | 50%以上 | 70%以上 | 80%以上 | → | 地震保険金額の100% (時価額の100%が限度) |
大半損 | 40%以上50%未満 | 50%以上70%未満 | 60%以上80%未満 | → | 地震保険金額の60% (時価額の60%が限度) |
小半損 | 20%以上40%未満 | 20%以上50%未満 | 30%以上60%未満 | → | 地震保険金額の30% (時価額の30%が限度) |
一部損 | 3%以上20%未満 | 床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水※2 | 10%以上30%未満 | → | 地震保険金額の5% (時価額の5%が限度) |
※1 主要構造部とは、建築基準法施工令1条3号の構造耐力上主要な部分をいいます。たとえば、木造の建物の場合には、
柱、基礎、屋根、外壁などが該当します。
※2 主要構造部に損害は生じていませんが、水濡れによる汚損や汚物の流入などの損害が生じうるので一部損と
みなされます。
ただし、以下の場合には、保険金が支払われません。
- 保険金を早期に確定するために、地震等発生日の翌日から起算して、10日間を経過した後に生じた損害については、補償の対象外となります。
- 「地震等による被災者の生活の安定に寄与する」(地震保険法1条)という地震保険法の目的に反するため、故意若しくは重大な過失または法令違反によって生じた損害については、補償の対象外となります。
- 地震等の発生による社会的混乱に乗じてなされた盗難被害については、地震等の発生を間接的な原因とするともいえないため、補償の対象外となります。
そして、上述でご説明したように、保険会社の支払い能力を超える保険金の額になった場合には、再保険制度に基づき政府が保険金支払い責任を負うことになりますが、この責任は無制限ではなく、1回の地震等における保険金の支払限度額(以下では、「総支払限度額」といいます。)があります(地震保険法3条)。
総支払限度額の具体的な額は適時見直されていますが、政府によって実際に支払われる保険金の算出方法は以下の通りです。
支払われる保険金 =支払われるべき保険金 ×(総支払限度額÷支払われるべき保険金の総額) |
地震保険契約に基づく保険金を請求する際の注意点
まず、地震等による損害を受けた場合には、地震保険契約を締結している損害保険会社に、その会社が定める方法に従って連絡をします。
次に、連絡を受けた保険会社は、被害の状況を把握するために現地調査を行います。
現地調査は原則として契約者の立ち会いのもとおこなわれますが、大震災等でより迅速な対応をとるために、自己申告による書面での調査を導入するケースもあります。
調査後、保険金の請求書やその他必要な書類に記入をして提出し、保険金の支払いを待ちます。
防犯や安全上の観点から片付けや修理を行う場合は、被害の状況を写真や動画で撮影して記録することをお勧めします。
撮影時には、被害のある部分を様々な角度から撮影したり、部屋の全体像が分かるように引いて撮影したりして、現地調査による調査と同等に調査してもらえるようにできるだけ多く撮影しておきましょう。
まとめ
地震保険は、火災保険に附帯して加入する保険なので、地震保険単体では加入できず、火災保険に加入したうえで、地震保険に加入する必要があります。
また、地震保険においても、火災保険の場合と同様に、建物と家財は別で補償の対象となるので、それぞれ補償の対象として加入する必要があります。
そして、地震保険において支払われる保険金の額は、建物または家財の損害の程度によって決定されます。
もっとも、この損害の程度の認定が困難な場合もありますので、地震等を危惧して地震保険に加入することを検討されている方や、地震等により被害を受けた方は、当事務所にご相談をいただければと思います。
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