保険金レスキュー

columns
弁護士コラム

保険金はどう計算される?被害物品の評価方法について解説

給付金の種類、補償内容 火災保険 地震保険
投稿日:2022年03月28日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
台風でこの度、家屋が一部損壊しました。
工事業者に修理見積を依頼しましたが、保険会社からはどのように被害物品を補償してもらえるのでしょうか。
被害物品の評価方法を知りたいです。
Answer
台風によって生じた損害は、その被害状況に応じて火災保険のうち水災補償、風災補償又は落雷補償によって補償されます。
そして、火災保険の補償対象となるものは、「建物」と「家財」があり、それぞれ保険金の上限を算出する基礎となる保険価額の評価方法が異なります。

また、建物は、一戸建ての新築物件の場合や一戸建ての中古物件の場合、マンションの場合によって、それぞれ、その評価方法が異なります。そして、火災保険で補償される「建物」と「家財」といっても、補償される範囲が決まっています。

本記事では、保険価額の評価方法と火災保険で補償される範囲について詳しくご説明します。

火災保険の対象物の範囲

まず、火災保険で補償される対象物は、「建物」と「家財」に分けられます。

建物の範囲

火災保険で補償される対象物である「建物」の範囲は、建物本体のみならず、畳やふすま、備え付けてある収納、建物に取り付け済みの浴槽・ガス台・調理台・流し台・エアコン等の設備、門、塀、垣、車庫などが挙げられます。

他方で、一戸建てであれば庭木は「建物」に含まれず、また、マンションであればバルコニーや廊下、エレベーターなどの共用部分は「建物」の範囲に含まれません。

家財の範囲

火災保険で補償される「家財」の範囲は、一般に、被保険者または被保険者と生計をともにする親族が所有するものであって、かつ、保険証券に記載の建物内に収容されているもの、および物置や車庫その他の付属建物に収容されているもの、宅配ボックス等又は宅配物に限られます。

家財は例えば、家具や家電、衣服、日用品、宝石、美術品、貴金属、趣味の品などが挙げられます。
なお、保険契約締結時には建物内に収容されていた美術品を、その後建物敷地外の賃貸借倉庫に保管するなどして建物外に持ち出した場合には、火災保険で補償される家財に含まれなくなります。

家財保険における補償対象や内容などについては、別記事「「家財」とは?家財保険の対象についても解説」で詳しくご説明していますので、ご参照ください。

なお、火災保険の加入方法としては、持ち家であれば、「建物」のみを対象とする、もしくは、「建物」と「家財」ともに対象とすることが考えられます。
他方で、借家であれば、賃貸人が「建物」を対象とする火災保険に加入済みであることがありますので、その場合は「家財」のみを対象とすることになります。賃貸人が「建物」を対象とする火災保険に加入済みであるか否かを確認する必要があるでしょう。

評価基準の種類

評価とは、「その評価対象物について評価目的に適合した基準によりその価額を判定し、価額として表示すること」をいいます。

火災保険における評価とは、その火災保険で補償の対象となる被害物品(建物・家財)の評価額を算定することをいいます。この評価額を金銭的に表すと保険価額となります。そして、保険価額は、火災保険契約を締結する際の保険金額の設定基準となり、同時に、実際に受け取ることができる保険金の上限金額となります。具体的には、評価額に基づいて表された保険価額が1000万円であれば、火災保険の保険金額は最大で1000万円まで設定できることになります。

評価額の算定基準は「新価」と「時価」の2種類があります。

新価」とは、「再調達価額」を基礎として保険金が定まるものをいいます。
この「再調達価額」とは、損害が発生した場所および時点において火災保険の対象となる建物・家財と同一の構造・質・用途・規模・型・能力のものを再取得するのに要する価額をいいます。したがって、受け取った保険金のみで被害物品と同等のものを再取得できることになります。
一方、「時価」とは、再調達価額から使用による損耗および経年年数に応じた経年減価額を差し引いた価額をいいます。
したがって、保険金のみでは、被害物品と同等のものを再取得することは困難でしょう。

時価」を基準とすると、保険料は比較的安くなりますが、保険金の上限も低くなるので、家屋の損壊した部分を修理したり、全壊の場合に建て直したりすることが困難になります。

よって現在、家計分野の火災保険においては、別記事(「家財保険」)で紹介している明記物件を除いては、「新価を基準とするのが主流です。

建物と家財それぞれの具体的な評価方法

建物の評価方法

建物については、

  1. 1一戸建ての新築物件の場合
  2. 2一戸建ての中古物件の場合
  3. 3マンションの場合

で評価方法が異なります。
以下で順にご説明します。

一戸建ての新築物件の場合

土地代や諸経費を除いた建物の建築価額が、建物評価額になります。

なお、建物を土地とともに購入した場合には、建物の建築価額が不明とも思われますが、土地代に対しては消費税が課されないので、売買契約書に記載されている消費税額から建物の建築価額を算出することができます。

消費税額÷0.1=建築価額

例えば、消費税額が400万円の場合には、400万円÷0.1(消費税率10%で計算)=4000万円が建物の建築価額(=建物評価額)です。

一戸建ての中古物件の場合

建築年と建築価額が判明している場合

「年次別指数法」を用いて算出することが可能です。「年次別指数法」とは、建築価額に価格変動率(建築費倍率)を乗じて算出する方法をいいます。すなわち、現在の建築価額が建築当時と比べてどの程度変動しているかを倍率で示した数値を意味しています。

建物の建築価額×建築費倍率=建物評価額

例えば、建築時の建物価格が2000万円で、建築費倍率が0.95である場合は、2000万円×0.951900万円が建物評価額です。

なお、建築費倍率は構造等級や建築年、保険会社によって異なりますが、建設物価調査会総合研究所が、建築費倍率について資料を定期的に公表していますので、こちらを参考にしてください。

建築年と建築価額が判明していない場合

「新築費単価法」を用いて算出することが可能です。
「新築費単価法」とは、建物の構造や都道府県、建築に使用されている材料などにより定められた1平方メートルあたりの標準的な単価(新築費単価)に、建物の延床面積を乗じて概算金額を算出する方法です。

また、一戸建ての場合は、保険の対象とした建物の敷地内に存在する門や塀、物置を含みます。
ただし、補償の対象となる延床面積について制限が付されている場合もあるため、注意が必要です。

新築費単価×延床面積=建物評価額

例えば、新築費単価が20万円で、延床面積が300平方メートルである場合は、20万円×300平方メートル=6000万円が建物評価額です。
もっとも、新築費単価法は、あくまで概算金額を算出するものですので、契約者本人の希望によって建物評価額前後30%の限度で増減することができます。

上述の例の場合は、建物評価額の下限は4200万円、上限は7800万円となります。

マンションの場合

上述の新築費単価法と、分譲価額を基礎にする方法の2種類があります。

分譲価額が判明していない場合

分譲価額が判明していない場合は、新築費単価法が用いられます。

新築費単価・区分所有建物(専有部分)×専有面積(m²)=再調達価額

分譲価額が判明している場合

販売時の建物の価額に年次別指数票の係数を乗じて算出することになります。
ここにいう建物の価額は、専有部分のみとするか、または、共有部分の共有持分も含めるか選択できます。
火災保険の対象を専有部分のみとする場合には、専有部分の面積の明示方法が上塗基準の場合は40%、壁芯基準の場合は60%を建物の価額に乗ずる必要があります。

上塗基準は、住戸同士の境界などはすべて共有部分とし、専有部分側の上塗り部分のみを専有部分とする基準です。
また、壁芯基準は、住戸同士の境目などは中央部分までを専有部分とする基準です。壁芯基準によれば、専有部分が広くなるため、評価額も高くなります。いずれを基準とするかは、契約書や規約に記載されています。

建物の価額×0.4又は0.6×年次別指数票の係数=再調達価額

家財の評価方法

家財の評価方法は、「積算評価」と「簡易評価」の2種類があります。

積算評価とは、家財全ての正確な価格を判定し、これを合計して行う評価方法です。
もっとも、家屋内にあるすべての家財の価格を正確に判定することは事実上不可能なので、もっぱら家計分野の火災保険においては、簡易評価がよく用いられます。

具体的には、世帯主の年齢や家族構成に基づき、保険会社が算出した家財金額を目安にして評価することになります。保険会社ごとにこの基準による目安は異なりますが、あくまで目安なので、契約者本人の実情に合わせて家財の評価額を算出することになります。

家財保険における家財の評価方法などについても、別記事「「家財」とは?家財保険の対象についても解説」で詳しくご説明していますので、ご参照ください。

まとめ

以上のように、火災保険の補償対象となるものには、「建物」と「家財」があり、それぞれ保険金の上限を算出する基礎となる保険価額の評価方法が異なります。

また、建物の評価方法は、一戸建ての新築物件の場合、一戸建ての中古物件の場合、マンションの場合で異なります。そして、火災保険で補償される「建物」と「家財」に含まれる物品の内容も保険契約において決まっています。

保険価額は、実際に支払われる保険金や、支払うべき保険料に関連する一方で、実情によって評価方法が異なる上に、保険会社によって評価基準に差異があるため、算出するのが大変です。
お困りの際には、当事務所にご相談をいただければと思います。

保険金の不払いに
お悩みの方へ

保険会社への対応に疑問を感じた時は、交渉のプロである弁護士にお任せください。
ご相談内容に応じて、代理請求・示談交渉、そんぽADRセンターへの申立て、訴訟提起をいたします。
時効で権利が消滅することもあるので、ご連絡はお早めに。

Contact


ご相談はお気軽に

当事務所では、「保険金の不払い」に限りご相談をお受けしております。

キーワードから探す

トップへ戻る