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弁護士コラム
地震保険の請求の流れとコツをご紹介!保険金額の決まり方も解説
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
- Q
- 地震で建物が一部損壊しました。地震保険の請求の流れを教えて下さい。
-
地震保険の請求では、まず損害状況を保険会社に伝えて現地まで調査に来てもらうことが必要です。
その際、その場で保険会社に必要書類を提出します。
保険会社は、提出された書類や現地調査を踏まえて保険金額などを算定。
保険会社が算定した金額などを確認し、問題がなければ承諾して保険金の支払いを受けます。
地震保険の請求の流れとコツ
地震保険の請求の流れは、以下のとおりです。
- 1損害状況の確認をする
- 2保険会社への連絡
- 3訪問日の調整
- 4訪問による被害状況の確認
- 5保険金の算定・確認
- 6保険金の支払い
ポイントさえ押さえれば各手続きはそこまで難しいものではありません。
それぞれの手続きの詳細やスムーズに行うコツなどについて、一つずつ確認していきましょう。
①損害状況の確認をする
地震保険の請求の際にまずすべきことは、地震などを原因とした建物や家財の損害状況確認です。
詳しい損害の状況は確認できなくても、そもそも損害があったかどうかを、まず確認する必要があるからです。
その際、建物の倒壊などに巻き込まれないように、安全には十分注意した上で行うようにしましょう。
細かい部分の調査まですべて自分でやろうとすると二次災害につながる恐れがあるので、危険を感じる部分の調査は自分でやらないようにしてください。
損害状況を確認する際のポイントは、以下の2つです。
- 片付ける前に写真を撮っておく
- 専門業者に依頼することも可能
それぞれのポイントについて、確認していきましょう。
片付ける前に写真を撮っておく
現地調査の前に損害が生じた場所の応急処置や片付けを行う場合、事前に被害部分の写真を撮っておく必要があります。
現地調査の際にすでに片付けなどが行われていると、地震によってどの程度の損害が生じたのか把握するのが困難になるからです。
被害を受けた建物の損害部分や家財の破損状況が確認できる証拠を、しっかりと残しておきましょう。
現地調査に備え、損害状況が伝わるように損害の全体像やさまざまな角度からの写真を撮っておきましょう。
専門業者に依頼することも可能
損害が判明したら、正確な損害調査を専門業者に依頼することをおすすめします。
目に見える大きな損害は素人でもわかりますが、細かな損害などの発見は専門家でないと困難だからです。
また、屋根の上など危険な部分の調査が必要な場合もあるので、二次災害の恐れもあります。
現地調査の際に損害を見落とされてしまうと、本来受け取れるはずだった保険金が請求できなくなる可能性が出てきます。
事前にしっかりと調査をしておいて、適切な保険金を確実に受けとれるようにしておきましょう。
②保険会社への連絡
損害が確認できたら、加入している保険会社へ被害報告をしましょう。
地震の規模が大きい場合には、保険金請求の申請が集中して対応に遅れが生じる事態が想定されるので、早めに連絡しておくのがポイントです。
インターネット上からの連絡に対応している保険会社は多いので、電話がつながりにくい場合にはWeb申請を活用しましょう。
保険会社に連絡が必要な事項は、基本的に以下のとおりです。
- 契約者氏名
- 保険証券番号
- 被害の日時や損害の状況
- 連絡先など
保険金の請求は、保険法によって損害の発生から3年以内と決められています。
損害発生から時間が経てば経つほど、被害状況の把握や損害の適正な評価などが困難になるからです。
うっかり申請期間をすぎてしまわないように、損害の発生に気づいたらすぐに保険会社に連絡をしましょう。
③訪問日の調整
損害発生の連絡後、保険会社から委託を受けた鑑定人が現地調査に来る訪問日の調整を行います。
訪問の際には立ち会いが必要ですので、自分が同席できる日を相手方と調整をしてください。
保険会社によって異なりますが、おおむね1週間程度で相手方から訪問日調整の連絡がきます。
大規模な地震の場合には1週間が経過しても連絡がないケースもあるので、あまりに遅いようでしたら、一度保険会社に進捗の確認をしてみるのをおすすめします。
④訪問による被害状況の確認
保険金を算定するため、保険会社から委託を受けた鑑定人が被害状況の現地調査に来ます。
訪問による被害状況の確認の際、押さえておきたいポイントは以下の2つです。
- 地震によって発生した損害を説明できるようにしておく
- その場で必要書類を作成する
それぞれについて、確認していきましょう。
地震によって発生した損害を説明できるようにしておく
現地調査の際、地震によって生じた損害である旨の説明を鑑定人にできるようにしておく必要があります。
地震によって発生した損害部分はどこなのか、経年劣化によるものではないなどの説明ができなければ、地震以外の原因によって生じた損害であると判断されてしまう危険があるからです。
現地調査の段階でおおむねの保険金が算出される場合もあるので、損害状況の説明ができるように、事前にしっかり準備しておきましょう。
その場で必要書類を作成する
現地調査の段階で、必要書類の作成が行われることが多いです。もちろん、後日送付されるケースもございます。
必要な書類は相手方が持ってきてくれるので、当日準備しておかなければならない書類は基本的にありません。
しかし、以下の4つの資料は事前に用意しておくのをおすすめします。
- 印鑑
- 通帳
- 建物の平面図
- 被害状況がわかる資料
特に被害状況がわかる資料を用意しておくと、鑑定人への説明漏れを防止できるのでできるかぎり準備しておきましょう。
現地調査の際に必要書類の作成ができるように、心構えをしておくようにしてください。
⑤保険金の算定・確認
現地調査後、保険金請求書や現地確認などを踏まえて算定した保険金額の連絡が、保険会社から入ります。
その際に、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」などの判定区分も知らされます。
保険金額や判定区分を確認し、問題がなければ承諾をしましょう。
承諾をする際、損害の見落としがある可能性なども考慮した上で、慎重に判断するようにしてください。
とくに大規模な地震が生じた際には、通常より少ない時間と人員で損害認定を行っている場合もあるので、見落としの確率は高くなると考えていいでしょう。
支払金額に納得がいかない場合
支払い金額に納得がいかない場合には、以下の2つの手段をとることが考えられます。
- 再鑑定依頼
- そんぽADRセンター
上記の手段のうち、まずは具体的な理由を示して、再鑑定依頼をしてみましょう。
保険会社に再度確認してもらう手続きなので、一回目よりも慎重に判断をしてくれます。
再鑑定結果にも納得がいかない場合には、日本損害保険協会のそんぽADRセンターへ相談してみましょう。
専門の相談員に相談できるだけではなく、弁護士などの紛争解決委員が中立的な立場からトラブルの解決を支援してくれます。
⑥保険金の支払い
保険金の支払いは、請求書や必要書類を提出した日から原則として30日以内に支払われます。
しかし、大規模な災害が生じた場合には、保険金の支払いが通常より遅れるケースがあるので注意しましょう。
地震保険は現地調査により被害状況の確認を行うので、保険金の請求があまりにも増えてしまうと、保険会社が対応できる限界を超えてしまう場合があるからです。
また、以下のような場合には、支払いが30日をすぎるケースもあるので注意しましょう。
- 警察・検察・消防などの機関による捜査・調査結果の照会を行う場合
- 専門機関による鑑定などの結果の照会を行う場合
できる限り早く保険金を受け取りたい場合には、早めの申請を心がけましょう。
地震保険の補償内容
地震保険は、政府と民間の損害保険会社が共同で補償する保険ですので、保険会社によって補償内容や保険料などは変わりません。
地震保険の補償内容で押さえておくべきことは、以下の4つです。
- 地震保険の補償内容
- 地震保険の対象となる損害の例
- 地震保険の対象とならない損害の例
- 地震保険の期間
地震保険の対象となる具体的な損害や、地震保険の有効期間などを詳しく確認していきましょう。
地震保険の補償内容とは
地震保険は、火災保険が補償の対象としていない、地震を原因とした火災や損壊などで損害を受けた際に適用される保険です。
地震保険の対象となるのは「居住用の建物」と「家財」のみ。
以下のものは、補償対象外です。
- 1個30万円を超える貴金属、宝玉、宝石、骨董など
- 稿本、設計書、図案、証書、帳簿その他これらに類するもの
- 通貨
- 有価証券(小切手、株券、商品券など)
- 印紙や切手
- 自動車
火災保険では補償を受けられるものもありますが、地震保険では補償の対象外なので注意しましょう。
また、以下の場合にも保険金の支払いを受けることはできません。
- 故意もしくは重大な過失または法令違反による損害
- 地震の発生日から10日以上経過後に生じた損害
- 戦争や内乱などによる損害
- 地震の際の紛失・盗難の場合
補償されるものや補償される場合を、災害が生じる前に把握しておきましょう。
地震保険の対象となる損害の例
地震保険の保険金支払いの対象となる損害には、具体的には以下のようなものがあります。
- 1地震で倒れた物が電気配線を損傷したのが原因で家が火事になった
- 2地震でテレビや棚などが倒れて破損した
- 3地震によって起きた津波で家が流された
- 4噴火で飛んできた岩石で自宅が損壊した
①について、地震を原因とした火災で住居に損害が生じた場合、火災保険ではなく地震保険の対象です。
そのため、地震保険に入っていなかった場合は補償されないので注意しましょう。
次に②についても、地震が原因で家財が壊れているので、地震保険の対象です。
また③や④も、津波や噴火を原因とした流失や損壊ですので、地震保険の対象となります。
地震保険の対象とならない損害の例
地震保険の保険金支払いの対象とならない損害には、たとえば以下のようなものがあります。
- 1地震によって、業務のみに使用している事業所や店舗が損壊した
- 2地震によって、建物自体ではなく門・塀・垣に被害があった
- 31個30万円を超える貴金属に被害が生じた
- 4地震の際に盗難にあった
①について、事業所や店舗など、住居として使用しない建物は地震保険の対象外です。
次に②について、建物の補償対象は基本的に外壁・屋根・柱などの主要構造部のみですので対象外になります。
また③について、補償対象外のものにあたるので地震保険では補償されません。
最後に④についても、地震などの際の盗難などについては補償の対象外の場合にあたります。
地震保険の期間
主契約である火災保険の期間や支払い方法によって異なりますが、地震保険で契約できる最長の保険期間は5年間です。
たとえば、保険期間が10年の火災保険を一括払いで契約した場合、以下の2つのいずれかを選択できます。
- 地震保険を1年ごとに自動継続する
- 地震保険を5年後に自動継続する
地震保険は単独で加入ができず、火災保険に付帯されています。そのため、契約できる期間も火災保険の影響を受けるのです。
地震保険の保険金額の決まり方
地震保険の保険金額の決まり方として重要なポイントは、以下の3つです。
- 地震保険金額は火災保険金額の30%から50%で設定する
- 損害の程度に応じて受け取る保険金額が決まる
- 保険金額が決まる具体例
地震保険による補償は、損害額をそのまま保険金として受け取れるというものではありません。
少し複雑な仕組みになっていますので、それぞれ詳しく確認していきましょう。
地震保険金額は火災保険金額の30%から50%で設定する
地震保険の金額は、火災保険金額の30%〜50%の範囲内で設定することが可能です。
ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限になります。
全額の補償ではない理由として、地震保険は被災者の生活の安定に貢献することを目的としている点が挙げられます。
生活の安定を守るための制度ですので、建物の建て直しをするための費用や失った家財を再購入する金額が、すべて補償されるわけではありません。
また、損害が生じたとしても、一定基準を超えない限り地震保険の補償対象とはならないという点も押さえておきましょう。
一定の基準に達しない損害は、生活の安定を壊すほどのものではないと考えられるからです。
損害の程度に応じて受け取る保険金額が決まる
地震保険によって支払われる保険金額は、損害の程度によってわけられる「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階の区分によって変わります。
どの程度の損害によって区分がわけられ、保険金が支払われるかについては以下の表のとおりです。
損害の程度 | 支払われる保険金額 | 建物の認定基準 | 家財の認定基準 |
全損 | 地震保険の 保険金額の100% (時価額が限度) | 主要構造部の損害額が 時価額の50%以上 または 焼失・流失した床が 延床面積の70%以上 | 家財の損害額が 時価額の80%以上 |
大半損 | 地震保険の 保険金額の60% (時価額60%が限度) | 主要構造部の損害額が時価額の40%以上50%未満 または 焼失・流失した床が延床面積の50%以上70%未満 | 家財の損害額が 時価額の60%以上80%未満 |
小半損 | 地震保険の 保険金額の30% (時価額30%が限度) | 主要構造部の損害額が 時価額の20%以上40%未満 または 焼失・流失した床が 延床面積の20%以上50%未満 | 家財の損害額が 時価額の30%以上60%未満 |
一部損 | 地震保険の 保険金額の5% (時価額5%が限度) | 主要構造部の損害額が 時価額の3%以上20%未満 または 全損・大半損・小半損に該当しない 建物が床上浸水 | 家財の損害額が 時価額の10%以上30%未満 |
損害の程度が上記4つの区分のいずれにも該当しない場合には、実際に損害が生じていたとしても保険金の支払いはありません。
なお、時価とは、同等品を新しく手に入れるために必要な金額から、経年劣化や消耗分を差し引いて計算した金額です。
保険金額が決まる具体例
地震によって建物の主要構造部が壊れた場合に支払われる金額を、具体例で紹介していきます。
保険金額が以下の場合のケースで、考えてみましょう。
- 火災保険の保険金額:建物3,000万円
- 地震保険の保険金額:建物1,500万円(火災保険の50%で契約)
上記のケースにおいて、地震によって建物の主要構造部が、建物時価額の50%の損害を受けた場合、地震保険により1,500万円の保険金が支払われます。
なぜなら、建物主要構造部が時価額の50%の損害を受けているため、損害の程度は「全損」にあたり、地震保険の保険金額の100%が支払われるからです。
地震保険の金額や損害の区分によって、支払われる保険金が決まるという点に注意してください。
まとめ
これまで確認してきたように、保険金を受け取る地震保険の請求は以下の流れで行う必要があります。
- 1損害状況の確認をする
- 2保険会社への連絡
- 3訪問日の調整
- 4訪問による被害状況の確認
- 5保険金の算定・確認
- 6保険金の支払い
保険法によって損害の発生から3年以内と決められているので、保険金の請求もれがないように、損害の発生を確認したらすぐに保険会社に連絡をしましょう。
現地訪問の対応が保険金額に大きな影響を与えるので、地震による損害状況を説明できるように事前に準備しておいてください。
地震保険のポイントを押さえた請求を行い、適切な保険金を受け取れるようにしましょう。
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