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弁護士コラム

火災保険金請求の消滅時効は何年か?注意点と申請の仕方を解説

その他
投稿日:2022年03月22日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
台風被害に基づく住宅被害について、火災保険を利用したいのですが、既に台風が発生してから2年が経過しています。
既に時効期間が経過しているのか、知りたいです。
Answer
保険金請求をする権利は、まだ時効によって消滅していません。
火災保険の保険金の請求期限は保険法第95条によって3年間と定められています。

火災保険の請求期限は3年

火災保険を含む保険全般には、保険金などを請求する権利に時効が設けられています。
これは、保険法第95条「保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する」によるものです。
そのため、基本的に火災保険の請求期限は3年間となります。

ただし、保険会社によっては保険法の規定とは別に、独自の請求期限を設定していることもあります。
念のため、契約書類を確認しておくと良いでしょう。

そもそも火災保険とは?

保険にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると「人」に対する保険と、「人以外」に対する保険とに分類されます。

「人」に対する保険は、生命保険や傷病保険、「人以外」に対する保険は、自動車保険や火災保険が該当します。

火災保険は、住居などの「建物」と、その建物内にある家具や家電などの「家財」を対象にした保険です。

「火災」保険という名称ですが、火災だけでなく落雷や大雪などの自然災害による損害も補償の対象となります。
また、突発的な事故によって生じた損害も対象となることがある他、オプションで盗難事故補償を付加できることもあります。

住まいや生活にまつわるものに密接に関わっており、火災保険という名称からはイメージが付かない範囲まで補償している重要な保険であると言えます。

一方で、自然災害の中でも地震が原因の損害は補償対象外のため、地震による損害をカバーするためには火災保険のオプションとして提供される地震保険に加入する必要があります。

消滅時効の起算点

損害保険金を請求する権利が消滅する「三年間行使しないとき」について、どのタイミングが「三年間」の開始日(起算点)となるのでしょうか。

保険法第95条では「(権利を)行使することができる時から」とあります。
そのため、損害保険金を請求する原因となる「災害により損害が生じた日」が、原則として起算点となると言われています。

なお、保険法第95条は2020年4月に改正されています。
以前は、保険法において上記消滅時効の起算点が明文化されていませんでした。

保険会社は改正に伴う対応を各社で実施しているため、基本的には問題ありませんが、インターネットなどに掲載されているQ&Aや記事を閲覧する際には、情報が古い可能性があるため注意が必要です。

修繕済みでも3年以内であれば請求できる

火災保険契約の存在を認識しておらず、火災や台風の被害に遭ったのち修理・修繕を終えてしまった場合でも期限内であれば損害保険金の請求は可能です。

ただし当然ながら、災害が原因で損害を受けたことを証明する必要があるため、修繕前の被害箇所の写真や罹災証明書、修繕業者からの見積もりなどを保険会社に提示することになります。

火災や台風などが原因で対象となる損害が生じたことの証明は、損害を受けてから年数が経過するにつれて難しくなります。
災害ではなく経年劣化による修繕を疑われ、損害保険金の支払いがなかなか認められないということも起こり得ます。
そのため修繕前・後問わず、損害保険金請求の手続きは可能な限り早く進めておいた方が安心です。

災害の規模によっては期限を超えて請求できる可能性がある

3年の期限がある損害保険金請求ですが、例外的に請求期限経過後も申請が可能になることがあります。

大規模災害などの場合、仮設住宅での生活により申請が難しかったり、被害が広範囲に及ぶため手続きが遅延したりということが起こるためです。

東日本大震災のケース

具体的な事例として、地震保険については2011年の東日本大震災が挙げられます。
東日本大震災では保険金の請求期限の延長の他、継続契約の締結手続きおよび保険料払込みの猶予措置が取られました。

この震災では、地震発生から1ヶ月後の4月時点でも損害会社への問い合わせが1日あたり1000件を超えており(※)、大変な混乱が生じました。

生活再建の優先度が高く、保険証書の消失も考えられる状況下においては、スムーズな申請が難しいため、特別な措置が取られることもあります。

かなり例外的ではあるものの、大規模災害による損害を受けた場合は、3年が経過していたとしても損害保険金請求できるか保険会社に問い合わせすると良いでしょう。

(※)一般社団法人日本損害保険協会「東日本大震災に対する損害保険業界の対応」

3年以内でも保険金が支払われない3つのケース

損害が生じたのが起算点から3年以内であっても、損害保険金が支払われない場合があります。
主に、経年劣化の場合、故意あるいは重大な過失がある場合、地震・津波・噴火による災害の場合がこれに該当します。

経年劣化の場合

火災保険は、火災だけでなく台風や大雪などの自然災害や突発的な事故による損害も補償対象です。
しかし経年劣化による損害は火災保険の対象にはならないため、損害保険金は支払われません。

一方で、経年劣化か自然災害による損害か区別がつかない場合もあり、プロでない人間が判断するのは難しいこともあります。
気になることがあれば、弁護士や建築士等に問い合わせることが重要です。

また近年では、経年劣化による損傷に対して損害保険金で修繕が可能と説明し、契約を促す悪質な勧誘も起きています。
悪質な修繕業者や保険金請求代行業者と契約をし、結果損害保険金請求が認められず自己負担となる・高額な解約金を業者から請求されるというトラブルは少なくありません。

具体的には「契約者の負担額なく屋根の修理ができる」「火災保険の保険金を利用して老朽化した壁の損傷を修繕できる」という言葉で契約を促されることがあります。

このようなトラブルは年々増加しており、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)によると、2019年から2020年にかけての相談件数は約2倍(※)に急増しています。
経年劣化が原因にもかかわらず、自然災害による損害だと申告し損害保険金を受け取ることは、保険金詐欺に加担していることにもなりかねません。不審な点があれば、国民生活センターなどに問い合わせするようにしましょう。

(※)独立行政法人国民生活センター「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!」

故意あるいは重大な過失がある場合

故意あるいは重大な過失がある場合は免責事由(保険会社が保険金の支払責任を免れる事由)となるため、損害保険金は支払われません。
過去、故意あるいは重大な過失として認定された事例は下記のようなものがあります。

  • 過去に二度出火した経験があるにも関わらず火のついた煙草を故意に放置 (東京高等裁判所昭和59・10・15)
  • ガスコンロに天ぷら油の入った鍋をかけたまま台所を離れ、過熱された油に引火 (東京地裁昭和57・3・29)

故意・重大な過失に該当するか否かは、基本的に保険会社が総合的に判断します。
ただ、どのような場合が「重過失」に当たるのかは慎重な見極めが求められるため、時には裁判にまで発展することもあります。

地震・津波・噴火による災害の場合

自然災害のなかでも地震・津波・噴火による損害は、火災保険の対象となりません。
これらは火災保険ではなく地震保険で補償される内容です。

また、火災による損害であってもその原因が地震の場合、火災保険による損害保険金の申請は認められません。
地震が理由で発生した火災により、数キロメートル離れた住宅が延焼した場合でも地震との相当因果関係が認められれば火災保険による保険金を受け取ることはできません。

基本的に、地震保険は火災保険に付帯するかたちで加入することになります。
地震・津波・噴火による災害の場合は、火災保険のオプションとして地震保険に加入していないかを確認することが重要です。

近年では火災保険のオプションとしてではなく、地震保険単体で契約できるプランを提供している企業もあります。
火災保険ではカバーできない地震に対しては、地震保険の加入を検討する必要があります。

火災保険金請求の申請の仕方

火災による損害保険金の請求は何度も経験するものでもありません。
初めての場合、どのように進めて良いか分からず申請がスムーズに行えないことも考えられます。

災害などによる損害が生じる前に、あらかじめ申請の方法を確認しシュミレーションしておくことが重要です。

また、火災保険の契約内容や保険証書の保管場所を家族と共有しておくことで、もしもの際の対応がスムーズになります。

保険会社への連絡

契約先である保険会社のサポートデスク・申請窓口に連絡をします。
連絡は基本的に契約者本人がすることになり、生年月日などの本人確認が実施されることもあります。

証券番号も聞かれるため、手元に保険証書を用意しておきます。
また、災害の日時・場所、被害状況などを伝える必要があるため、連絡前に簡単にまとめておくとスムーズです。

保険金請求に必要な書類の提出

損害保険金の請求に必要な書類を準備し、保険会社に提出します。
必要書類については保険会社から説明があります。

修繕済みの場合は、特に被害状況を説明するための資料収集が難航することが想定されます。
どのような情報があれば手続きがスムーズかを確認するとともに、当時の修繕業者に知見を借りるのも良いでしょう。

損害保険登録鑑定人による現場調査

保険会社から依頼された損害保険登録鑑定人による現地調査が行われます。
これは必ず実施されるものではなく、損害保険金の請求金額や周囲の被害状況によると言われています。

損害保険登録鑑定人による被害状況調査は、損害保険金の金額に大きく関係します。
調査時の説明に疑問点や納得できない点があるときは、その場で速やかに確認しましょう。
損害保険登録鑑定人の派遣は、災害発生から期間が空きます。
災害直後の状況を証拠として残しておくためにも、写真や動画の撮影をしておくことが重要になります。

保険金の受領

保険会社が調査結果と申請書類を元に損害保険金支払いの対象か判断し、結果に基づき保険金の支払いがされます。
火災保険の損害保険金は特別な照会や調査が必要な場合を除き、原則請求手続完了から30日以内に支払われます(保険法第21条「相当の期間」)が、約款で別途定義されていることもあるため、確認が必要です。

火災保険によって受け取った損害保険金は、非課税となります。
なお、受領した損害保険金は必ずしも修理・修繕に充当しなければいけないということはありません。

まとめ

火災保険について損害保険金請求の消滅時効は3年ですが、大規模災害の場合例外的に3年経過後も損害保険金の請求ができることがあります。
一方で、時間が経過するほど損害の証明は難しくなります。
損害が発生した場合は、可能な限り速やかに保険会社に対して申請をすることが重要です。

火災保険の補償の対象は広く、火事だけではなくその他の自然災害による損害や、ほとんどの場合突発的な事故による破損・汚損も含まれます。
しかし、これらの補償は意外と見逃されがちであるため、補償対象だと思わなかった・申請を失念していたということも十分起こりえます。

過去の自然災害による損害や破損・汚損に気づいた際には諦めず、3年の請求時効に気をつけながら申請を試みることをおすすめします。
ただし前述の通り、故意または重大な過失がある場合、原因が地震・津波・噴火による損害、経年劣化による損害は火災保険の対象となりません。

滅多に使用することがないため失念してしまいがちな火災保険の補償ですが、いざというときには重要となる保険です。
改めて契約内容をチェックしておくと、有事の際にも慌てずに対応することができます。

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