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弁護士コラム

水災、風災の補償範囲は?保険適用の条件や申請の仕方について解説

対象、補償内容 火災保険
投稿日:2022年03月28日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
火災保険で補償される水災とはどのような事故ですか?
具体的に補償される範囲を含めて教えてください。
Answer
火災保険で補償される水災は主に大雨や、河川の氾濫で住宅が浸水した場合や土砂崩れ、落石なども水災の補償が適用されます。

また風災とは台風や竜巻、突風が起こった際に適用される補償で水災と同じく、火災保険に含まれているケースが多いです。

台風の暴風雨による直接の建物・家財への被害は水災ではなく風災扱いになることにも注意しましょう。

水災補償の対象になる3つのケース

火災保険で水災補償の対象となるのは、自然災害が原因の水による損害です。
具体的には、台風・暴風雨・豪雨などによる洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ・落石などの損害が当てはまります。
ただし、台風による損害の中でも、水による損害は水災風による損害は風災となる点には注意が必要です。

水災補償の対象となる主なケースとして、以下の3つが挙げられます。

  • 豪雨で自宅が床上浸水した場合
  • 豪雨での土砂崩れが原因で自宅が押し流された場合
  • 台風による河川の氾濫で自宅が床上浸水した場合

火災保険の水災補償を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 1火災保険に加入している
  2. 2火災保険に水災の補償が含まれていて、「建物」や「家財」を対象としている
  3. 3損害の程度が保険会社の支払い条件を満たしている

について、台風などによる損害に対して補償を受けるには、加入している火災保険に水災補償が含まれていることが要件になります。
また契約時には補償対象を「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」のいずれかから選択しますが、選ばなかった対象は損害が発生しても補償されません。
たとえば、補償対象を「建物のみ」とした場合は、家具や家電・自転車などの家財に対する損害は対象外となるので注意が必要です。

について、水災補償には、保険会社による支払いに関する条件が通常は定められています。
支払い条件は保険会社によって異なりますが、おおむね共通している条件は以下2つのいずれかを満たしている場合です。

  • 対象の建物・家財に、保険価額30%以上の損害が発生した場合
  • 床上浸水、または地盤から45cm以上の浸水の損害が発生した場合

とくに限定なく補償対象となる床上浸水に対して、床下浸水は地盤から45cmを超えているという条件を満たさなければ補償が受けられないので注意しましょう。

豪雨で自宅が床上浸水した場合

豪雨で自宅が床上浸水した場合には、水災補償が受けられます。
豪雨を原因とした浸水などによる損害であり、損害状況が支払い条件の基準を超えているためです。床上浸水は、住居の床の上まで浸水してしまい、一時的に生活することが困難な状態をいいます。

建物や家財に対する損害が大きいので、損害金額が高額になるケースが多いです。45cm未満の床下浸水である場合には、損害額が大きくても支払い条件の基準を満たさないため、水災補償の対象には基本的になりませんので注意してください。

床上浸水後は、清掃や消毒、損害部分の修理・リフォームなども必要になってきますので、必要な保険金を受け取るために、早めに保険会社へ連絡をしておきましょう。

豪雨での土砂崩れが原因で自宅が押し流された場合

豪雨による土砂崩れが原因で自宅が押し流されてしまった場合、水災補償が受けられます。
豪雨を原因とした土砂崩れによる損害であり、保険価額の30%以上の損害が生じたといえるためです。
保険価額とは、保険の対象である建物や家財の、価値を示した金額をいいます。
価値を評価する基準は「新価」と「時価」の2通りありますが、現在は新価で算出するのが主流です。

新価(再取得価額/再調達価額)新しく建て直す際にかかる価額
時価新価から時間経過による消耗分などを引いた価額

新価の算出方法は、建物が新築か新築以外かで異なります。
火災保険料を算出する際は、建て替えの費用がまかなえる「新価」で計算するのがおすすめです。

なお、土砂崩れによる損害は地震が原因のケースもありますが、その場合は地震保険の対象となるため、火災保険の水災補償は受けられません。損害が発生した原因によっては、水災補償の対象外となる場合もあるので注意してください。

台風による河川の氾濫で自宅が床上浸水した場合

台風による河川の氾濫で自宅が床上浸水した場合、水災補償が受けられます。台風を原因とした河川の氾濫による損害であり、損害状況が支払い条件の基準を超えているためです。
床上浸水によって発生する床の張り替えや家具の買い替え、清掃にかかる費用などが補償の対象となります。

前述した「豪雨で自宅が床上浸水」のケースと同じ床上浸水した事例ですので、高額な損害金額を補うためにも、保険会社への連絡を忘れないようにしましょう。

火災保険で水災を申請する手順

火災保険で水災補償の申請をする手順は、以下のとおりです。

  1. 1水災の被害状況を確認し、保険会社へ連絡する
  2. 2修理会社へ問い合わせて見積書をもらう
  3. 3申請書類を作成し、提出する
  4. 4保険会社による現地調査、保険金の決定

について、水災による事故や損害があったら、まずは保険会社へ連絡しましょう。
水災は発生すると生活に甚大な被害をもたらすので、適切な保険金を受け取るために早めの手続きが必要です。

保険会社から損害状況について聞かれますが、わかる範囲での状況説明で問題ありません。
加入している火災保険に水災補償が含まれているかは、事前に確認しておきましょう。

について、火災保険金の請求をするためには、いくつかの書類を用意する必要があります。
以下は、提出が必要となる書類の具体例です。

  • 火災保険金請求書
  • 修理会社の見積書
  • 水災による損害箇所の写真
  • 罹災証明書

罹災証明書は、損害状況によっては不要になります。
保険会社からの案内に従って、必要書類の準備を進めましょう。

について、必要に応じて保険会社が派遣する「損害保険登録鑑定人」による現地調査が行われます。現地調査は、鑑定人が現地で水災による損害の原因や状況を確認し、申告された内容との整合性などを確認するために必要な手順です。

現地調査などによって決定された保険金は、契約者の了解を得た上で入金されます。
大規模な水害が発生した場合は、現地調査が予定より遅れてしまうこともあるので注意しておきましょう。

風災補償の対象になる3つのケース

火災保険で風災補償の対象となるのは、台風や竜巻などの強い風を原因とした損害です。
たとえば、強風により窓ガラスが割れてしまい、雨風が吹き込んだことで家電製品が壊れた場合には、風災補償の対象となります。

風が原因でない損害に対しては、風災補償を受けることができません。
たとえば、窓の閉め忘れが原因で家具に損害が生じた場合などは、風が原因ではないので風災補償の対象外です。

風災補償の補償が受けられる主なケースは、以下の3つになります。

  • 台風などの強風による飛来物が原因で窓にひびが入った場合
  • 台風などの強風で車庫が破損した場合
  • 台風などの強風で屋根瓦が破損した場合

火災保険の風災補償を受けるには、以下3つの要件を満たしている必要があります。

  1. 1火災保険に加入している
  2. 2火災保険に風災の補償が含まれている
  3. 3水災補償が「建物」や「家財」を対象としている

について、風が原因による損害に対して補償を受けるには、加入している火災保険に風災補償が含まれていることが条件です。

保険会社が提案するパッケージプランの中には風災補償が含まれているのが一般的ですが、補償内容を自由に選択できるプランなどでは、風災補償が含まれていないケースも考えられます。契約した火災保険の補償対象に風災が含まれているかは、保険証券などの書類で確認しておきましょう。

について、火災保険の契約時には補償対象を「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」のいずれかから選択します。

補償される対象の一例は、次のとおりです。

建物の補償対象・畳やふすま、備え付け収納などの建具
・電気、ガス、暖房など備え付けの設備
・流し台、ガス代、調理台
・門、塀、垣
・車庫、カーポート、物置など
家財の補償対象・家具、家電製品
・食器、衣類、日用品
・自転車
・貴金属、宝飾品

保険会社によっては、特約で補償対象を追加できる場合もあります。
契約している火災保険でどこまでが補償対象とされているかは、よく確認しておきましょう。

台風などの強風による飛来物が原因で窓にひびが入った場合

台風などの強風による飛来物が原因で窓にひびが入った場合は、風災補償の対象となります。台風の強風という自然災害によって、窓にひびが入るという損害が発生しているためです。ひびが入った窓の交換にかかる費用は、「建物」を対象にしていれば補償されます。

台風の強風で看板などが飛んできて窓が割れてしまった場合、窓は「建物」、割れた窓から吹き込んだ雨風によって破損した家電製品などは「家財」として補償されるという点は押さえておきましょう。

風による損害でなければ風災補償の対象にならないので、地震による落石で窓にひびが入った場合などは風災補償の対象外です。
飛来物が原因の損害でも、飛んできた原因によって補償されないケースがあるので注意しましょう。

台風などの強風で車庫が破損した場合

台風などの強風で車庫が破損した場合は、修理費用に対して風災補償を受けられます。台風などの強い風によって、車庫が破損したという損害が発生しているためです。

車庫やカーポートなどは付属建物といって、「建物」の補償対象となります。火災保険の契約後に建てた車庫に対しては補償が受けられない可能性があるので、敷地内に新しく車庫を作ったときには火災保険の見直しを忘れずに行いましょう。

また、風災補償の対象は風を原因とした損害のみなので、大雪や地震によって車庫が破損した場合は対象になりません。雪が原因の損害は火災保険の雪災補償、地震による損害は地震保険の対象となります。

なお、強風によって車庫内の車に損害が発生した場合でも、車は風災補償の対象外なので注意しましょう。なぜなら、車は「建物」にも「家財」にも含まれていないからです。
車の損害については自動車保険で補償される可能性があるため、損害が出た場合には自動車の保険会社に問い合わせてみるのをおすすめします。

台風などの強風で屋根瓦が破損した場合

台風などの強風で屋根瓦が破損した場合、風災の補償を受けられます。屋根瓦の破損という損害が発生した原因は、台風の強風であるからです。

屋根瓦の交換費用などは「建物」の補償対象となり、屋根の破損による雨漏りでテレビが壊れてしまった場合などは「家財」の補償対象となります。

雨漏りの損害は水災補償と勘違いするケースが多いようですが、強い風によって屋根が破損して雨漏りが発生した場合であれば、風災補償の範囲内です。

なお、台風がくる前から屋根がボロボロで修理が必要な状態だった場合、風災補償を受けられない可能性があります。台風以外を原因として生じた損害や、経年劣化による破損であると判断されてしまうおそれがあるからです。

台風がなければ破損しなかったという状況であれば、その旨を保険会社に伝えてみましょう。原因が特定できないと保険金を受け取れないケースもあるので、破損を発見したら早めに法律事務所に連絡して相談することが重要です。

火災保険で風災を申請する手順

火災保険で風災補償の申請をする手順は、以下のとおりです。

  1. 1風災の被害状況を確認し、保険会社へ連絡する
  2. 2修理会社へ問い合わせて見積書をもらう
  3. 3申請書類を作成し、提出する
  4. 4保険会社による現地調査、保険金の決定

について、風災による事故や損害があったらまずは被害状況を確認し、保険会社へ連絡しましょう。
台風などの自然災害の場合、すぐに外に出るのは危険がともなうので、安全の確保ができてから確認を行ってください。

について、風災補償の請求をするためには、水災補償と同様の申請書類を用意する必要があります。
風災による損害は目視で確認しやすいケースも多いですが、屋根などの高所で写真を撮るのが難しい場合は、修理会社から見積もりを取る際に写真も依頼しておくのがいいでしょう。

について、必要があれば「損害保険登録鑑定人」による現地調査が行われます。
立ち合いをスムーズに進めるために、必要書類は早めに準備しておきましょう。
現地調査などによって決定された保険金は、契約者の了解を得た上で入金されます。

火災保険で補償の対象外になるケース

火災保険で補償の対象外となる代表的なケースは、以下の2つです。

  • 損害が生じてから3年が経った場合
  • 経年劣化が原因の場合

上記のケースに当てはまる場合、損害が発生しても火災保険の補償は受けられません。火災保険の保険金が支払われる場合と支払われない場合といった内容は、約款や重要事項説明書などの契約書類に記載されています。

損害が発生した際に保険金を受け取れなかったという事態になってからでは遅いので、契約時の書類にはよく目を通しておきましょう。補償の対象外となるケースについて、次に詳しく解説していきます。

損害が生じてから3年が経った場合

建物や家財に損害が生じてから3年の期間が経過した場合は、火災保険の補償は受けられません。火災保険の保険金は、損害が発生してから3年以内に申請しなければならないという請求期限が設けられています。

そのため、火災や自然災害などによって損害が発生した場合は、早めに保険会社へ連絡するようにしてください。月日が経ってしまうと原因の特定も困難になるため、後回しにしないよう気を付けましょう。

なお、すでに損害箇所の修理が完了していたとしても、損害が生じてから3年以内であれば火災保険の申請が可能です。
その場合、火災や自然災害によって損害が発生したことを証明する書類が必要になります。
損害が発生した証明のできる書類の一例は、以下のとおりです。

  • 損害箇所の被害状況がわかる写真
  • 修理した際の見積書、請求書
  • 罹災証明書

上記のような書類があれば保険金を受け取れる可能性があるので、損害発生から期間が空いてしまった場合でも、一度、法律事務所に相談してみましょう。
保険会社によっては3年という期間よりも短い請求期限を定めているケースもあるので、保険会社の約款は事前に確認しておく必要があります。

経年劣化が原因の場合

経年劣化が原因の損害は、火災保険の補償を受けられません。火災保険は、予測できない突然の事故や自然災害による損害に適用されるものです。
経年劣化とは、年月の経過に伴い、建物などの機能が自然に低下(劣化)していくことをいいます。

経年劣化や老朽化は月日の経過で自然に発生するものであり、予測できない突発的な事故とはいえないので補償の対象外です。
そのため、損害が発生した際に保険会社による状況確認で経年劣化と判断されると、火災保険の保険金を受け取れなくなってしまいます。

よくあるケースとしては、自然災害によって屋根や外壁が破損し雨漏りが発生したと思っていたら、経年劣化が原因であったという事例です。
損害に対して自然災害が原因か経年劣化が原因か特定するのは、素人には非常に難しい判断になります。

損害が発生した際に「築年数が経過しているから経年劣化」と自己判断はせずに、まずは法律事務所や専門のサポート会社に相談しましょう。
必要なときに相応の補償が受けられるよう、日ごろから外壁の剥がれや屋根の損傷など、気づいた時点でその都度対応していくことが重要です。

まとめ

火災保険の「風災補償」は風を原因とする損害、「水災補償」は水を原因とする損害を補償するもので、どちらも自然災害による被害が対象となります。

補償を受ける際は、火災保険の契約で「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」のうち、どの補償対象を選んでいるかによって受けられる補償が異なるので注意が必要です。
また、損害が生じた原因によっても、補償が適用されるケースと適用されないケースがある点も押さえておきましょう。

築年数の経過による経年劣化や、損害発生から3年の期間が過ぎてしまった場合は、火災保険の補償は受けられません。火災保険の補償対象や支払い要件を正しく理解して、必要な保険金の申請を行いましょう。

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