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弁護士コラム

火災保険で屋根修理にかかる費用を補償してもらうには?費用が0円になる条件も

対象、補償内容 火災保険
投稿日:2022年03月18日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
この度、台風で屋根の一部が損壊して、雨漏りが起きるようになりました。
これは、火災保険で補償対象となるのでしょうか。屋根損傷について、火災保険請求の流れを教えてください。

Answer
「風災・ひょう災・雪災」を選んでおけば、補償対象になります。

台風や竜巻などの自然災害が発生した際、屋根瓦が全て吹き飛んでしまうといった、大規模のものでなくとも補償があります。
雨どいの破損など、屋根の一部の損壊でも補償があるのでご安心ください。
壊れていることが分かったら、以下の流れで請求しましょう。

1. 保険会社の連絡し、資料請求
2. 工事会社に見積もりを依頼する
3. 必要書類や写真を用意し、申請する

ただし、保険会社によって保険が適用される前提条件が異なります。
その確認のためにも、迅速な保険会社への連絡を心がけてください。
また、工事会社は、屋根専門の業者への依頼がおすすめです。

屋根修理の基本情報

マイホームの購入から年月が経てば、建物のどこかを修理しなければならないことがあります。
特に屋根は、常に雨や風にさらされている箇所であるため、とりわけ劣化が早い部分です。
修理する際には、もちろん費用がかかります。

ただし、火災保険を適用できれば、費用を無料にできる可能性があります。

火災保険は、火災だけではなく、風水災などの自然災害や、盗難などによって、「建物」や「家財」などに生じた損害を補償する保険です。

補償の内容や注意点、申請の流れについて詳しく解説します。

屋根修理にかかる費用相場

修理をする規模にもよりますが、多くの場合、20万円〜30万円程度です。
下記に、ケース別に修理費用をまとめます。

  • 瓦屋根の部分修理:15万~30万円
  • スレート屋根の部分修理:15万~30万円
  • 屋根棟の修理:20万~35万円
  • 屋根の雨どいの修理:10万~30万円
  • 屋根の雨漏り修理:20万~35万円
  • 屋根の塗り替え:35万~60万円
  • 屋根の全体改修:120万~200万円

全体の修理が必要な場合には、200万程度費用がかかることもありますが、20万円〜30万円程度の相場であると言えます。

屋根の素材や修理工程、屋根の面積によっても金額は前後するため、費用には多少の幅があります。
正確な見積もりを取るためにも、屋根修理の実績がある修理業者に見積もりを依頼するとよいでしょう。

屋根修理にかかる日数の目安

「屋根の修理は時間がかかる」といった印象をお持ちの方も多いでしょう。
しかし、実際には2日〜3日で済んでしまうケースがほとんどです。

もちろん、屋根の全てを修理する場合には工期も長くなりますがその場合でも、長くても2週間程度の短期間で済んでしまうでしょう。
屋根を修理しようか工期で悩んでいるような場合には、参考にしてみてください。

屋根の部分修理や雨どいの修理

2日から3日で終了します。
部分的な修理のため、費用も抑えることができます。

カバー工法(重ね葺き)

5日から1週間程度で終了します。カバー工法は、元々の屋根を活かす工法のため、他の工法よりも短い工期が特徴です。
ただし、古い屋根が傷んでしまっている場合には、カバー工法は使えません。

屋根全体の塗装や葺き替え

10日から2週間程度で終了します。
全体修理の場合は、部分修理よりも工期は長くなります。

以上のように、全体修理が必要なケースでなければ、1週間程度の期間を見ておけば十分でしょう。

部分修理であれば、短期の工期で済みますし、費用も安く抑えられます。
修理が必要な部分を放置し、損傷を大きくしてしまうと、結果的に割高に費用がかかってしまうこともあります。

修理が必要だと感じたなら、できるだけ早く修理してしまうのがおすすめです。
また、火災保険請求に係る法律的観点からも、火災保険を使用する場合には、迅速な対応が求められています。(保険法 第79条(給付事由発生の通知))

火災保険を使って屋根修理の費用を「無料」「0円」にできる条件

屋根を修理する際に保険を利用することができれば、修理費用を「無料」「0円」にできます。
ただし、満たさなければならない条件があります。

  • 「風災・ひょう災・雪災」だと認められること(経年劣化・地震の影響ではないこと)
  • 屋根修理が必要になってから3年以内であること
  • 屋根修理の費用が20万円以上であること(特約次第)

以上の条件を全て満たした場合のみ、屋根修理に火災保険を利用できます。
それぞれについて詳しく解説するので、ご自宅は条件に当てはまるのか、確認してみてください。

「風災・ひょう災・雪災」だと認められること(経年劣化・地震の影響ではないこと)

「災害」とひとくちに言ってもさまざまな種類があります。
とりわけ屋根修理に関連があるものは、「風災・ひょう災・雪災」でしょう。
このいずれかに該当することにより、火災保険を利用できる条件の1つを満たします。

「風災」とは

名前の通り、風による災害です。
台風や竜巻によって、想定される以上の強さの風が吹いた場合、屋根は損傷してしまうことがあります。
その場合、「風災」と認定される可能性があります。

なお、台風で自宅の瓦が飛んでしまい、隣の家を傷つけてしまったという場合には、隣の家の火災保険で補償されることがあります。

自分の家の瓦が原因であっても、台風や突風等の自然現象によるもので管理上の過失がなければ損害賠償責任は生じません(そのため、このような場合、個人賠償責任補償特約が付いていても、その補償の対象にはなりません)。

「ひょう災」とは

ひょうが降ることによる災害を指します。
台風や大雪と比べれば、日本では珍しい災害ですが、起こってしまうと大きな被害をもたらすこともあるのが「ひょう災」です。
ひょうが降ったなら、直ちに屋根に被害がないか確認するようにしましょう。

「雪災」とは

大雪が降ることによる災害です。
大量の雪が降ることによって、屋根がその重さに耐えきれず、損傷してしまうことがあります。
想定以上の積雪によって、屋根の一部や雨どいが曲がってしまったり、割れてしまったりすることはよくあります。

これらの災害が起きた場合、以下のような屋根の損傷が生じることがあります。

  • 雨漏り
  • 棟板金の浮き
  • クギ・ビスなどの浮き
  • 屋根材のズレや割れ
  • 雨どいの破損

例えば、棟板金の浮きがあれば、「風災」と認定されやすいと言えます。
また、雨どいは大雪やひょうによる損傷として認められやすい損傷箇所です。

ただし、入っている保険によって、カバーしている災害も異なるので、改めて契約内容についても確認しましょう。

屋根修理が必要になってから3年以内であること

被災してから3年以内に屋根を修理した場合のみ、火災保険を利用できます。(保険法第95条(消滅時効))例えば、「5年前の大雪によって受けた被害を修理する工事」には、火災保険を利用することはできません。

屋根について心配がある場合には、修理費用を減らすためにも、早めに修理すべきだとお伝えしました。保険適用の観点からも、3年間の期限があるため、早めの修理を検討すべきです。

なお、火災保険の申請前に行った工事に関しても、3年間の期間内であれば、後から申請ができます。

屋根修理の費用が20万円以上であること(特約次第)

火災保険の中には、以上の自然災害が原因であることに加えて、損害の総額が20万円以上であることも条件とされているものがあります。
損害総額が20万円以上の場合、保険金を上限額まで損害額を受け取ることが出来るというシステムです。

そもそも損害総額とは、修理において発生する修理費と全く同じと考えて良いので、「損害総額=修理工事費用の見積もり」と考えて良いでしょう。

例えば、損害額が22万円の場合は保険金として22万円を全て受け取ることが出来ます。
一方で、損害額が20万円に満たない19万円の場合には、保険金を1円も受け取ることが出来ません。

部分的な屋根の工事の場合は20万円に満たないことがあります。
ただ、屋根の修理工事は「足場工事」をする必要がある場合がほとんどであるため、足場工事の費用(10万円程度〜)も含めた屋根修理費用を保険会社に請求するようにしましょう。

これは、火災保険の中でも「フランチャイズ方式」と呼ばれているもので、その他には、損害額があらかじめ設定した自己負担額を超えている場合、その超過分を保険金として受け取ることが出来る「免責方式」もあります。
損傷総額が20万円より低くても保険金を受け取ることが出来るのが特徴です。

例えば、自己負担額を7万円と設定し、実際の損傷総額が19万円だった場合は、「19万円–7万円=12万円」という計算式で、7万円を自己負担した上で残りの12万円を保険金として受け取ることが出来ます。

保険会社によってフランチャイズ方式なのか免責方式なのか異なりますので、自分の加入している火災保険がどちらの方式なのかを確認しておく必要があります。

火災保険の補償対象とするためにも、1つだけではなく複数の修理業者から見積もりを出してもらってどの業者にお願いするかじっくりと考えるのが良いでしょう。

火災保険の補償内容

火災保険が保証してくれる内容について改めて確認します。
最近では、「住まいの保険」と呼ばれることもある火災保険。
前述したように、その補償内容は火災のみならず、さまざまな災害に及んでいます。

実際に火災保険が利用されるケースとしては、火災よりも風災などの自然災害時の方が多いのです。
どんな費用に対して火災保険が利用されているのか、いくつかの例を紹介します。

屋根修理のための諸費用

火災保険の対象となる屋根の修理工事の諸費用に関しては、下記のようなものが挙げられます。(保険法 第23条)

  • 仮修理費用
  • 残存物片付け費用
  • 損害範囲確定費用

直接的な修理に関する費用以外にも、火災保険の対象になる費用があり、申請することができるのです。
申請漏れがないように覚えておくとよいでしょう。

仮修理費用とは

いわゆる「応急処置」にかかる費用です。

例えば、雨漏りしている場合、とりあえず雨漏りを止めなくてはなりません。
本格的な修理に入る前に応急処置をしますが、その費用を申請できます。

残存物片付け費用とは

例えば、台風などの被害を受けた際、瓦などがはがれてしまうことがあります。

その場合には、新しい瓦を取り付けることになりますが、はがれて不要になった瓦については、工事業者が片付けてくれます。その費用も火災保険の対象です。

損害範囲確定費用

工事業者が行う現地調査や、見積もり書の作成に関する費用も火災保険の対象です。

丁寧に現地調査や見積もりを行ってくれる業者を選ぶようにしましょう。

屋根以外の部分の修理費用

屋根修理について解説してきましたが、屋根以外の部分にも火災保険の対象になっているものがあります。
屋根の修理費用とあわせて申請できるので、ここで確認しておきましょう。

  • 外壁のはがれ
  • 窓の割れ 雨どいの歪み
  • 庇板金(ひさしばんきん)のめくれ
  • 破風板(はふいた)の歪み
  • 軒天(のきてん)のめくれ
  • アンテナの破損
  • シャッターや雨戸の破損

上記は、屋根以外に火災保険で申請できる一例です。

前述したように、火災保険の内容によって、フランチャイズ方式があります。
20万円のフランチャイズ方式をクリアするためにも、申請漏れがないようにしましょう。
アンテナの破壊やシャッター等の破損は、漏れやすいものなので、ぜひ覚えておいてください。

建物付属物の修理費用

門や塀などの建物付属物も火災保険の対象になりますが、申請漏れが起こりやすいので、申請の際はご注意ください。
下記に申請漏れが起きやすい建物付属物の例をまとめます。

  • 門の歪み
  • 塀の崩れ
  • エアコンの室外機の凹み
  • 物置きの凹み
  • ベランダやバルコニーの穴あき
  • カーポートの穴あき

門や柄、カーポートに損傷があれば、火災保険の対象として申請できます。
ただしこれらに関しては、全額を保険会社が負担してくれるケースはほとんどありません。

とはいえ、一部負担してくれる可能性があるので、申請漏れがないように十分確認しましょう。

保険会社が保険金を支払わないケース(免責事項)

ほとんどの保険会社において、保険金を支払う対象と判断するための前提条件が設定されています。

以下でそれぞれ詳しく解説しますが、条件に当てはまってしまうと、火災保険の申請が受理されない可能性があります。

①修理費用が20万円以下(特約次第)

前述したように、契約内容によっては、フランチャイズ方式が設定されています。
20万円以下の修理費用だった場合には、保険金を1円も受け取ることが出来ず、自費での工事になります。

ただし、屋根の修理工事の場合は、足場を組むことがほとんどです。
結果として、申請する修理費用は20万円を超えることがほとんどでしょう。

②風速20メートル以上

屋根の損傷が、風速20メートル以上の風が原因であると認められなければ、火災保険が受理されない可能性があります。
ただし、過去に台風が上陸した日を遡れば、風速は20メートルをほぼ超えています。

そのため、風災による損傷だと見込まれるものに関しては、風速20メートルの条件で、保険の適用を認められなかったことが過去にほとんどありません。

③経年劣化

屋根や外壁等の見た目が明らかに劣化している場合、災害による損傷ではなく、経年劣化であるとみなされることがあります。経年劣化とみなされてしまった場合には、火災保険は適用されず、修理費用は自己負担となります。

このような事態を防ぐためにも、災害に見舞われた際には、すぐに修理を検討するとよいでしょう。
時間が経つにつれて、経年劣化とみなされる可能性も高まります。

火災保険の申請の流れ

ここまで、屋根修理における火災保険の申請の条件等を解説しました。
次は、実際に申請する際の流れを確認しましょう。

前述したように、火災保険の申請は自分でしなければなりません。
しかし、流れを把握しておけば難しいことはないので、ご安心ください。

  1. 1保険会社に問い合わせて申請書類を入手する
  2. 2修理業者から保険金の請求に必要な書類をもらい、提出する
  3. 3保険会社による現場調査・審査
  4. 4申請の受理と保険金の支払い

大きく分けて、以上の①〜④の流れで進めていきます。
それぞれ解説します。

①保険会社に問い合わせて申請書類を入手する

最初にやるべきことは、契約している保険会社と連絡を取ることです。
問い合わせて、必要書類を送付してもらいましょう。

「保険金請求書」や「事故状況説明書」が保険会社から送られてきます。
ただし、事故状況説明書の提出を不要としている保険会社もあります。
その場合、保険金請求書のみ提出しましょう。

問い合わせの際に、「◯年△月×日の台風で屋根を損傷した」などと伝えると、その後のやり取りをスムーズに進められます。できる限り迅速に連絡すべきですが、被害にあってから日が経っていても、正確に答えられるようメモしておくとよいでしょう。

修理業者から保険金の請求に必要な書類をもらい、提出する

こちらは①と並行して進めるようにすると、円滑に火災保険の申請を進められます。

保険会社から必要書類の送付を依頼しつつ、屋根修理の工事業者への現地調査依頼と、見積もり依頼を行いましょう。
見積もりに関しては、基本的に複数社に依頼してください。
いわゆる「相見積もり」を取るのがおすすめです。

屋根修理にかかる費用はそれぞれの業者によって異なりますし、火災保険申請の実績の有無、担当者の雰囲気など、さまざまな要素を比較して選ぶとよいでしょう。

また、事前に火災保険の申請を考えていることを伝えると、それを前提に現地調査や見積もりの作成を行ってくれるので、必ず伝えるようにしましょう。

また、火災保険の申請時に見積書と共に必要になるのが、被災した箇所の写真です。必ず受け取りましょう。
申請時に必要な書類は「保険金請求書」「事故状況説明書」「工事の見積書」「被災箇所の写真」の4点です。
全てそろったら、保険会社に送付してください。

保険会社による現場調査・審査

申請後、保険会社から保険鑑定人が派遣されることがあります。
派遣の目的は、申請の内容に誤りがないか確認するためです。

世の中には保険金詐欺を働くものもいるため、その防止のために派遣されるので、できる限り協力しましょう。
鑑定結果に問題がなければ、保険金の支給とその金額が決定されます。(保険法 第18条)

④申請の受理と保険金の支払い

③までを問題なく進めることができたなら、実際に保険金が支払われることになります。
原則、 保険金の支払いは、請求手続きが完了した日から起算して30日以内に支払われます。

ただし、大規模な災害が起きた際には、火災保険の申請や支払い手続きが集中します。
そのため、30日間以上に時間がかかることもあるので、注意しておきましょう。(保険法 第21条(保険給付の履行期))

まとめ

基本的に、災害による損傷が起こった場合、屋根の修理に火災保険を利用できます。
ただし、保険を利用するにはいくつか条件があるため、申請の際には、ご自宅が条件を満たしているのか確認しましょう。
とはいえ、心配になったなら保険会社や修理業者、各方面に問い合わせ、早めの行動を心がけることも重要です。

火災保険の申請をするにあたって、修理業者は信頼できる業者を選ぶと、安心して任せられます。
必ず複数の業者に相談、「あいみつ」を取るようにしてください。
火災保険申請の対応実績があると安心できるので、問い合わせ段階で「火災保険を利用する予定」である旨を伝えるようにしてください。

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